見方を変えれば、正妻と公認の愛人では?
秘密の女子校で、1週間の滞在。
けれど、そこには世界を滅ぼす存在の召喚儀式があって……。
「異能者が普通にいる世界へ転生したら死亡フラグだらけの件」の3巻目は、誰もが疑わしい!?
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9J8CQV9
相良音々《ねね》は、スマホを耳に当てたまま、答える。
「2人で、こっちに戻るのね? じゃ、それまでは私たちで対応するから」
スマホの画面を触って、ふうっと息を吐いた。
ロッジ竜宮の3人部屋で、西園寺睦実に話しかける。
「睦実ちゃん? 氷室くん、風鳴学院の久世さんと一緒に、こっちへ戻るって! 明日の昼ぐらいだと思う」
「うん……。ボクにも聞こえた」
気だるげに、自分のベッドから起き上がる睦実。
東京国武高等学校の部屋は、氷室駿矢がいない分だけ広く感じる。
彼の寝床だったソファーに座っている音々は、睦実のほうを向いたままで独白する。
「殺されたダイバーの第一発見者で、周りに人もいない。凶器も刀……。その状況なら、警察は大喜びで犯人にするでしょう。よく、久世さんを引き取れたわね?」
他に怪しい人間がいないか、捕まえられなければ、ひとまず犯人にしておく役だ。
次の犠牲者が出なければ、状況証拠としてもバッチリ!
ダルそうな睦実が、長い付き合いとして推理。
「考えなしに警察署へ突っ込んだ駿矢が、『お前も留置所にぶち込まれたくなければ、早く帰れ!』と脅されている時に、あの女が突撃したんでしょ」
実際、その通りだった。
妙に具体的な説明に、音々が質問する。
「あの女?」
「駿矢の許嫁になった、天賀原香奈葉だよ」
「え? 氷室くん、許嫁がいるんだ!? っていうか、天賀原家! それで、まだ諦めないの!?」
水を得た魚のように、音々はイキイキ。
女子高生の大好物である、恋バナの時間だ!
「ボクも、御神刀を持っているからね……。香奈葉は天賀原家で忙しいと言うか、体面があるから。向こうにしてみれば、『駿矢が落ち着くまで任せる』の良いところ取りだと思う。他の女子が知らない間に寄ってくるより、一応は同格のボクに任せたほうがコスパもタイパもいいし」
「ふ、ふーん?」
いきなり政治のような話で、肩透かしの音々。
そこで、気づく。
「ん? 天賀原さんも、御神刀を持っているの!?」
「そうだよ? 香奈葉は滅ぼすことに特化しているから、駿矢が突撃した警察署が灰になっていないと――」
ピロン♪
スマホを持った睦実は、指を滑らせていく。
視線も、スライドしていく表示を追う。
「警察署の正面玄関と取調室のドアぐらいで、済ませたんだ? 今回は、ずいぶんと大人しかったね? 署長の物分かりが良かったか」
思わぬ形で、真相が分かった。
音々は、面白い声を上げる。
「ひえっ!?」
それに構わず、睦実が説明する。
「ボクと香奈葉は、SNSでグループを作っているんだよ……。2人だけのクローズのね? 実質、こういう連絡のため」
ため息をついた睦実は、ベッドから降りた。
固まったままの音々に、忠告する。
「言っておくけど! 駿矢の幼馴染で、香奈葉と腐れ縁のボクだから許されている部分が大きいから……。相良先輩が悪く言えば、命や社会的な立場の保証をしないよ? あいつら、どこで聞いているか分からないし」
「う、うん……。覚えておく……」
言いながら準備した睦実は、ぼやく。
「香奈葉も香奈葉で、本音を言える友人がいないらしくてさ? ボクに愚痴を言うのは、やめて欲しいんだけど」
それを聞いた音々は、心の中で思う。
(見方を変えれば、正妻と公認の愛人では?)
しかし、茶化せば命にかかわると脅されていたことで、口にせず。
睦実は、真剣な表情に。
「風鳴の生徒と話さない? あっちは混乱していると思う」
ソファーから立ち上がった音々が、頷く。
「そうだね! 早く、知らせてあげよう!」
◇
ロッジ竜宮の外で、風鳴学院の女子と会った。
相良音々は、疑問に思う。
「あれ? もう1人の男子は?」
「……梶くんは、帰りました」
聞けば、久世果歩が連行されたことで、耐えられなくなったそうだ。
片腕を押さえた女子は、「高荒まどか」と名乗った。
高校2年。
人魚がいるはずの沼を眺めつつ、本音を吐き出す。
「気持ちは分かりますけどね!? 私も、久世先輩を待つ義務感がなければ、今すぐ逃げたいですよ!」
気まずい顔で、音々が告げる。
「こっちに入った情報だけど――」
その久世果歩が、うちの氷室駿矢と一緒に戻ってくる。
聞いた「まどか」は、脱力した。
「そうですか……。良かった」
勘違いしないよう、西園寺睦実が付け加える。
「このままでは、被疑者として検挙されるよ? そこは注意して」
「……はい」
気を遣った音々が、提案する。
「女子1人は危険だよ? 私たちの部屋に来る? 氷室くんは、そっちの男子がいた部屋に移ってもらう形で」
少し悩んだ「まどか」は、首を横に振った。
「お気持ちだけで……。明日の昼すぎには、久世先輩が戻ってきますから」
最初よりは、元気そうだ。
そう思った睦実は、沼の周りを見た。
(ずいぶん、サッパリしたね?)
彼女の視線を追ったのか、「まどか」が教える。
「水中洞窟のダイバーについては、レスキューと警察が救助をやめました。表向きの理由は、『経過した時間から生存している可能性が低い』ですけど」
「防人がぶっ殺しているとなれば、怖くていられないんでしょ? ゆっくりできると思えば、どうでもいいよ! こっちは、金払っているんだし」
超常的なパワーと武器を持つ、防人。
彼らに対抗できるのは、同じ防人だけ。
機材を積み込んでいた警官、レスキューの一部が、非難がましい視線を送ってきた。
けれど、睦実は気にせず。
撤収命令が出ているようで、救助に来た連中は車で帰っていく。
「警察もか……。どっちみち、久世先輩を犯人にするシナリオってことだ!」
睦実の独白に、「まどか」は息を吐いた。
過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31




