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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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SPドラマ黄昏時に落ちる星~甦星9 夜襲

 その時、急に外が騒がしくなり、近衛騎士の一人が部屋に駆け込んできた。


 ‟夜襲です!西の城門から火の手が上がりました”


 その場にいる者達に衝撃が走る。ただ一人、ラストリル宰相だけが口角を上げた。


 ‟何?一体どうして”


 ‟火矢がかけられたようです”


 ‟敵の襲撃です!お逃げください!”


 ‟敵とは?”


 ‟恐らくギルドニア軍です”


 ‟数は?”


 ‟一体どこから”


 ‟市中に侵入していたようです。数は多くはありませんが既に城内に侵入を始めております”


 こうして問答していても仕方がない。


 ‟陛下、早くお逃げください、近衛隊長!”


 レイシャーンが声を上げる。近衛騎士達は一斉に国王を取り囲み避難させるべく移動を始めた。部屋の外が騒がしくなり、金属がぶつかり合う音が次第に近づいてくる。

 慌てふためく大臣たちの前に神官長が進み出る。


 ‟皆様方、どうか落ち着いてください。このような事態は予想しておりました。マセラニー将軍は軍を待機させております。どうか落ち着いて避難を”


 しかし恐慌状態に陥った大臣たちは我先にと押し合いながら出口に向かって殺到する。そこから敵兵が切り込んできた。国王はすでに部屋の外に出ていたが大半のものはまだ部屋に残っており悲鳴が上がる。レイシャーンとミシルカも武器を手に襲い掛かってくる者たちの攻撃を防ぐ。この騒ぎにまぎれて宰相が逃げようとするのが目に入るが近づけない。

 その時、


 ‟母上!”


 というミシルカの叫びに顔を向けると敵の一人がまさに王妃に切りかかろうとしていた。レイシャーンからもミシルカからも距離がある。侍女が自らの体を盾にして王妃をかばうが小柄な彼女では到底防ぎきれない。


 間に合わない!

 ガツ!という鈍い音がする。


 ‟ぐ!…”


 振り下ろされた剣の下にはラストリルがいた。彼の肩から背中にかけて切り裂かれ血が流れ出てくる。


 ‟ラストリル宰相!”


 大きく目を見開いた王妃と崩れ落ちる宰相。一瞬の隙を逃さずレイシャーンが回り込んで襲撃者を切り伏せる。

 そこへロンズデインの軍兵たちが駆けつけその場はようやく鎮圧された。


 ~~~~


 ギルアドニアは軍を派遣する前にあわよくば少数の夜襲でロンズディン王を打ち取れば楽にロンズディンを手に入れられると思ったのだろうがマセラニー将軍は既に対ギルアドニアの準備をしていた。ギルアドニア兵が思いのほか巧妙にロンズディンに入り込んでいたために夜襲は王宮への侵入を許してしまったが、それでも被害は少なく済んだ。だがこの後ギルアドニアと正面からぶつかることは避けられない。


 宰相は重症ではあったが応急処置をされそのまま投獄された。間もなく刑に処される。そのほかにも宰相の計略に加担した者はすでに処罰された。


 ~~~


 ‟宰相はやはり生粋の血統主義者だったというわけですか”


 と副将軍に復帰したモイランとマセラニー将軍が神官長に尋ねた。


 ‟それだと、私利私欲のためでないからやり切れませんね”


 ‟うーん、まあ、それだけではなかったようですよ”


 ドートリアニシュ神官長はためらいがちに自分が宰相から聞いた話を始めた。


 ‟というと?”


 ‟もちろん、彼は血筋を重んじています。しかし今回このような大きな企てを立てたのは王妃様のためようです”


 ‟王妃様?”


 ‟はい、王妃様が嫁いでいらしたとき、彼は…俗な言い方をすれば一目ぼれをしたようです。もちろんその時点でどうこうするような気持ちはなく立場をわきまえていたようです。それに陛下ご夫妻は仲睦まじかったですからね。しかし、それがレイシャーン様が王宮に来た時に陛下が言われた言葉で大きく揺らいでしまった。将軍は覚えておられますか?陛下がレイシャーン様に言われたお言葉を”


 ‟ああ、確か…アイラン様を愛していた。お前もそのままのお前で余の傍にいてくれればよい、というようなことを”


 ‟あのお言葉に王妃様は陰ながらひどく傷つかれたのです。そして同時に周りの大臣たちはレイシャーン様の存在に恐れを抱いたのです。その筆頭が宰相でした。ただ宰相は血筋を重んじたというだけでなく王妃様を傷つけた陛下とその原因となったアイラン様と息子のレイシャーンを憎むようになったのだそうです”


 ‟なるほど、事の是非はともあれそこまでは理解できなくもありませんが、しかしその王妃様を罪に引き入れるなど考えられませぬが”


 ‟そこが彼の愚かなところです。王妃様の弱みを握り自分から離れられないくなるように仕向けたかったのだとか。ミシルカ様が予想以上にレイシャーン様の死に打撃を受けて使い物にならなくなったと見るや、今度はギルアドニアを引き込みロンズディンを侵略した暁には自分が実権を握り王妃とともにこの国を手に入れられると夢を見たのでしょう。この辺りからもう妄想になっていたのではないかと私は思うのですがね”


 神官長は貴族用の牢の寝台に横たわりながら憑き物が落ちたように諦観を見せながら自分の想いを語る宰相を思い出しながらため息をついた。


 ‟あれほど切れ者と言われた宰相閣下が…”


 と、将軍たちも黙り込んでしまった。


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