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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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SPドラマ黄昏時に落ちる星~甦星8 審判

 

 レイシャーンは陽が落ちた頃ひそかに王宮に戻り、身支度を整えた。

 鏡に映るレイシャーンを見てミシルカは嬉しそうに微笑む。


 ”良く似合ってる“


 レイシャーンは恥ずかしそうに苦笑した後、真顔になる。


 ”お前は、本当にいいのか?”


 ミシルカはもちろん、と言ってレイシャーンの前に立つ。


 ‟お前こそそんな顔するな、覚悟を決めたんだろう“


 まだ迷いが残っている様子のレイシャーンを抱きしめる。


 ‟大丈夫だ。どんなことがあっても今度こそ離れないから“


 二人は国王夫妻に面会した。神官長はあらかじめ二人に事のあらましを説明していたためロンズディン王は驚きながらもレイシャーンの無事を喜んでくれ見殺しにしたことを詫びてくれた。ミシルカはまだ不満そうではあったが何も言わなかった。レイシャーンが王妃の方を見ると彼女は縋るような目でレイシャーンを見る。

 その目はレイシャーンに問いかけている。お前はミシルカを見捨てるのか、と。

 一瞬レイシャーンはひるむ。だが隣にいるミシルカが彼の手をぎゅっと握ると息を大きく吸い込み、そして吐く。そしてエレノリア王妃をしっかりと見据えた。


 ‟私は身の潔白を証明するためにここに来ました。私は必要であるなら力を手に入れます。そうでなければミシルカも民も守れない。この後ミシルカにも裁きが下ることになるでしょう。それでも私は彼を見捨てはしない。ミシルカと共にあるためにこの場に戻ってきました“


 そんな、とエレノリアは小さく悲鳴を上げミシルカを見る。


 ”母上、私は覚悟はできています。私も正々堂々とレイシャーンと共に生きてくために正当な裁きを受けます。ですからあなたも“


 覚悟を決めてください。

 最後まで聞く前にエレノリアは膝から崩れ落ちた。ミシルカに支えられ、王妃はようやく自分の罪を全て王に告白した。ロンズディン王はしばらく言葉を失ったがレイシャーンに裏切られたと思ったときほど動揺は見せず、悲しそうに王妃を見た。彼女がしたことはおろかだったがそこまで彼女が苦しんでいたことに気が付かなかったことを詫びた。そしてその原因の一端が自分にあることも認めた。


 ~~~


 ロンズディン王は勅命でラストリル宰相はじめ主だった大臣達、そしてマセラニー将軍始め軍の要職に就く者達を招集された。場所はレイシャーンが毒を飲んだ広間だった。彼らには何も知らされておらず場はざわついていたが国王夫妻が入室したことにより皆口を閉じて礼を取った。


 王と王妃、ラストリル宰相がいる場で皆の前に立ったのは神官長だった。神殿や祭事ではなくこういう場でドートリアニシュ神官長が表に出るなど今までになかったことでその場にいる人々はいぶかしげな顔をし、ラストリル宰相は眉を顰める。それに構わず神官長は話し始めた。


 ‟それではこれから、半年ほど前に広まった不審な噂と陛下の暗殺未遂、そしてレイシャーン様にかかった疑惑について真相を明らかにしたいと思います”


 その場は騒然となった。


 ‟ドートリアニシュ神官長、それらの件についてはすべて解決済みのはずですが”


 “そうですとも、残念なことではありましたがレイシャーン様が処刑されそれで終わったのではないですか”


 口々に声を上げる。


 宰相も


 “ドートリアニシュ神官長、これは一体どういうことですか? すでに済んだ問題を蒸し返すなど。大体あなたにこういうことを審議する権限はないはずですが”


 しかし、そこでロンズディン王が


 “この件についてはまだ終わってはおらぬ、余がドートリアニシュ神官長に命じて真相を探らせておったのだ”


 と、場を沈めた。


 神官長は事のあらましを全て話した後、こう締めくくった。


 ‟これらすべての証拠がラストリル宰相を黒幕だと示しているのです‟


 普段なら用心深い宰相はレイシャーンが死んだものと思い油断したのか、あちこちに証人や証拠を隠滅せずに残していた。

 蒼白になりながらも、彼はそれでも自分のしたことを罪とは認めようとしなかった。


 ‟私は正当な後継者であるミシルカ様を確実に次期王にするためにその障害になりかねないレイシャーンを排除したまでの事。私は間違っていない。逆賊の様な言われ方には納得できかねる“


 と主張した。この段階では古株の大臣たちはまだ宰相に同意していた。

 しかしとうとうエレノア王妃が立ち上がった。

 彼女を唆し王に毒を盛るよう企てたことを王妃自らが証言すると反論することはできなくなった。また不審死をとげた馬番を殺した者は簡単に見つかりそれを指示した者が宰相の配下の者であることも分かった。


 ‟ここまでは血筋を重んじるあまりの行き過ぎた行動だと言えなくもない。しかしそこまでしてミシルカ様を王位につけようとしたのにもかかわらずレイシャーン様の死後、腑抜けになってしまったミシルカ様に見切りをつけ、ギルアドニアを引き入れロンズデイン王家を滅ぼそうと企んだ事は到底許されることではありませぬ“


 ギルアドニアの侵略後宰相が権力を握るつもりでいたこともギルアドニアとの書簡で見つかった。さすがに宰相側についていた貴族や大臣たちも俄かに慌て始めた。


 ‟ふ、今更真相が明らかになってももうレイシャーンは処刑された。またギルアドニアは侵攻の準備をしている。すべては手遅れだ。私ならギルアドニアと交渉ができる“


 と近衛に押さえつけられながら苦し紛れに開き直った宰相だった。


 その時広間の扉が開きレイシャーンがミシルカとともに入ってくる。後ろにはとムンバートリ元副将軍が従っている。その場にいる者は驚愕に目を見開いた。

 レイシャーンは王族の正装をしていた。今まで公の場であっても常に軍服を着ていたレイシャーンだったが王子として入室した彼は今までには見られなかった堂々とした態度で王の前に歩み寄り礼をした。

 レイシャーンが生きていたことだけでなくその変貌ぶりに人々は唖然とした。


 “…これは、ドートリアニシュ神官長、すべてあなたの企んだ事か”


 “企んだなど。そのような言われ方は心外ですな。私はただ無実のレイシャーン様があなたの罠に落ちていくのをみすみす見殺しにはできなかっただけです”


 ロンズディン王は重々しく口を開いた。


 ‟…一連の事件の王妃エレノリアの関与は重く捉えねばならない。王妃は幽閉、ミシルカは王位継承権はく奪の上無期限の謹慎。その身はドートリアニシュ神官長の預かりとする。そしてレイシャーンを王太子にすることをここに伝える“


 最初に跪いたのはミシルカだった。続いてその場にいる者は一斉に跪いて首を垂れた。王妃は黙って目を閉じた。

 レイシャーンも王の前に進み出で跪く。


 ‟レイシャーンよ、王太子として最初の役目だ。迫りくるギルアドニアを迎え撃て“


 ”御意“



 宰相が引き立てられる。ドートリアニシュ神官長を振り向いて


 “このタヌキが”


 と毒づくとすかさず切り返す。


 ”あなた様もなかなかのキツネでしたよ“




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