SPドラマ黄昏時に落ちる星~甦星6 秘密裏の活動
レイシャーンの叔母である副将軍モイランは身内であることから協力者であると疑われ、投獄された。しかし証拠はなく本人は拷問を受けながらも自白もしなかったため、副将軍の任をとかれ沙汰待ちの謹慎を命じられていた。そのほかにも何名かの団員がレイシャーンの陰謀に関与したのではないかと疑いをかけられ拷問にかけられたり処分されたりした。
レイシャーンは今更ながらに自分の取った行動で周りに与えた影響に慄いた。
‟叔母上、私のために申し訳ありませんでした”
黙っていればたおやかともいえる叔母の顔に拷問の跡が見て取れ、レイシャーンは目を合わせることもできずに頭を下げる。モイランはレイシャーンの体を起こし、頭を軽く小突いた後ぎゅっと抱きしめ
“お前が生きていて良かった”
と、それだけ言った。将軍と副将軍だけかと思っていたが彼女の後ろには叔父も静かに付き添っていた。相変わらず寡黙で控えめな男である。
軍の要である将軍、副将軍が謹慎させられているために軍はまともに機能できる状態ではない。今は将軍の直属の部下が代理をしているが動揺を隠せない兵士たちをまとめるのは至難の業だ。今はまだ何事も起きてないがもしギルアドニアが動き出せば太刀打ちできないのは目に見えている。
だが今は焦りを押さえて今はレイシャーンの冤罪を晴らすことに専念しなければならない。
情報集めと証拠集めだ。
‟だが我らは今謹慎中の身だから表立って動くことは出来ないのだが“
マセラニー将軍が困った顔で言うとその場の皆が同意するようにドートリアニシュ神官長を見た。彼は安心させるように頷くと
‟そこは私にお任せください“
パン!と手を叩く。すると彼の後ろに三人の人間が現れ片膝をついて首を垂れた。
‟彼らは諜報活動に優れた者たちで私に忠誠を誓ってくれております。情報収集は彼らに任せましょう“
その言葉と共に五人はすっと姿を消した。
首謀者はラストリル宰相であることに全員の意見が一致したため、今の段階で王に真実を打ち明けるのは得策ではないということになり全て秘密裏に行われた。
レイシャーンをそのまま孤児院に身をひそめ下働きに身をやつして神官長たちと連絡を取り合うことにした。
情報はどんどん集まってきた。どうやら馬番は引退も間近だったことから報酬と引き換えに、自分の飲み仲間に噂を流していたようだ。グレイドがそれを目撃した夜、辞めたことになっていたが故郷の村には帰っておらず、城下を見回っていた兵士が街外れの路地裏で死んでいるのを発見した。
ミシルカの侍女も実家に帰る途中で事故にあって死んでいる。彼女は王妃が嫁いでくるときにモレスロントからついて来た侍女で王妃に強い忠誠心を持っており、いきなり実家に帰るなど不自然だったが、おそらく言いくるめられたのだろう。王妃自身が刺客騒ぎのあった日にレイシャーンに話したように侍女は自ら(ミシルカと王妃のためなら、と)王へ毒を盛る役を買ってでたと想像できる。彼女がモレスロントへ帰る途中に起こった事故は本当に事故だったのか、口封じだったのかは結局わからないままだ。代わりに彼女が毒を手に入れた商人を見つけた。この毒はロンズディンではほとんど知られていないがモレスロントでは比較的知られているもので、症状を見ればモレスロントの医師ならばもう少し簡単に見立てられただろう。
裏で糸を引いているのはラストリル宰相だという確たる証拠を集めるためにドートリアニシュ神官長は国内、国外に自分の手のものを送り辛抱強く情報を集めていった。
ある日、集まった情報を共有するためにみんなで集まった時マセラニーは
‟全く神官長には感服しますよ。あなたは神官よりも参謀むきではないですか“
と半分感嘆し、半分呆れた口調で言った。神官長の密偵たちは優秀だった。たまに報告に来た時に会うと町人姿だったり、浮浪者だったり、可愛らしいメイド姿だったりとそれぞれ別人のようになっているのだ。
‟いえいえ私はあくまでも神に仕える身。参謀などとてもとても…“
はははは、と笑ってごまかすその姿が胡散臭い。
‟やはり人を導くには誠実でないとね。将軍のように人望がある方は貴重ですよ“
それは事実だった。謹慎の身でも彼に協力してくれるものは軍内に大勢いた。情報が集まるのを待つ間マセラニー将軍は密かに対ギルアドニアの準備をしていた。彼の軍内での信頼できる者達を通じて戦の準備を始めている。
おとなしくしていたギルアドニアに最近急に動きが出てきた。ひそかに人を潜り込ませ調べると西国からギルアドニアへの大きめの商隊が増えている。ギルアドニア王宮への人の出入りも多いようだ。王権争いでごたごたしていたロンズディンへ手を出そうとしている可能性は大きい。
そして今この時レイシャーンはダン・グレイドに密命を与えた。カーメイへの援軍要請をレイシャーンの名前でしたためた密書を届けることである。レイシャーンは死んだことになっているのでこの書は決して奪われることは許されない。グレイドは表向きはケガをした父親を見舞う口実で休みを取り闇に紛れて旅立っていった。
現段階でロンズディンの実権を握っているのはラストリル宰相だ。王が気力をなくし政務が滞ってしまった今王宮内に自分を阻むものはないと油断したのか彼は頻繁に外部と書簡を交換していた。相手はギルドニアだ。それがドートリアニシュ神官長に筒抜けになっているとも知らずに。
“しかし、ギルアドニアがロンズディンに侵略したとして本当にラストリル宰相にロンズディンを任せる気でいるんでしょうかね?ギルアドニア国王は”
モイランが疑問を口にする。
“いや、それは。考えにくいな。ギルアドニア王は性格はあの第二皇子のドミトリ殿下にそっくりだがもっと頭がよく狡猾だと聞いている。ギルアドニアがロンズディンに侵略したとたんにお払い箱になるだろう”
“宰相はいったい何をどうしたいのでしょう。自分が王になろうとしているのか”
”それは本人に聞いてみないとわかりませんな“




