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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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スペシャルドラマのオーディション

 

 スポンサーと出演する主な俳優がそろっていた。玲より先にオーディションを受けた俳優たち四名は控室にいる。

 マジックミラーのこちら側の部屋で渡利が説明する。


 ‟これから黄昏時に落ちる星スペシャルドラマの主役レイシャーン役の最後の候補者葛城玲君の演技をみていただきます。皆様ご存じと思いますが敢えて説明させていただきます。葛城君は少し前スキャンダルのために俳優として活動休止を余儀なくされ本人に罪はなかったとはいえマイナスイメージがついてしまいました。葛城君を起用することに二の足を踏むスポンサーの方がいらっしゃるのもわかっています。ただ私は葛城君にもチャンスを上げたいと思います。演技力的にもイメージ的にも彼がレイシャーン役の有力候補であることは間違いありません。今日のオーディションには多くの方々の推薦により何人か優秀な俳優たちにも参加していただきました。葛城君にもこれから彼らと同様に二つの場面を演じてもらいます。どうか演技を公正に評価してください”


 一つ目はレイシャーンが王妃に真実を問いただす場面。先のドラマと重複するシーンだが、この場面でレイシャーンは自分が罪を被る決心をする。

 二つ目は仮死状態から目覚めたレイシャーンがミシルカと対峙する場面。スペシャルドラマの前半の山場でレイシャーンが真実を明らかにする決意をする場面である。


 玲は時間が来るまで目を閉じて平静を保とうとしていた。


 “緊張してる?”


 とみつきが声をかけてくる。後ろには王妃役の名取もいる。


 “うん、ちょっとね。でも大丈夫だよ。この場面でレイシャーンの心の中の動きをなぞっていたところ”


 “そうだね。玲の心のままに演じれば問題ないよ”


 “君の実力を見せつけてやりましょ”


 名取も二ッと笑って親指を立てる。


 “では、葛城さん、始めてください”


 合図とともに玲は目を開いて、自分の立ち位置に移動し名取を見据える。


 やはり不思議な感覚が玲を包む。あの時のレイシャーンの感情が心の中に流れ込んでくる気がする。

 これって、演技してることになるのかな。自分を演じて役を取ったとして俳優としてどうなんだろう…


 一瞬複雑な気持ちになったが、そんな雑念を振り払い役に入り込んでいった。


 ‟義母上”


 声を発したときに目に映るのはもう名取ではなくロンズデイン王国王妃エレノリアだった。




 二つのシーンを合わせて休憩を入れても三十分にも満たなかった。それがすべて終了してから部屋から出てきた面々は様々な表情をしていた。ある者は興奮を抑えきれないように隣を歩く相手に感想をまくし立て、またあるスポンサー会社からきた女性は涙を拭きながら電話をかけている。彼らとともに部屋から出てきた佐伯鋼は確信を持った目で渡利に挨拶し、しっかりと握手をして帰って行った。



 それほど間を開けずドラマの続編の撮影が急ピッチで始まった。その段階では葛城玲の出演は伏されており、いろいろ憶測が飛び交ったが制作側は沈黙を通した。


 そして続編スペシャルドラマの放送直前に渡利紘一の記者会見およびキャストの発表がおこなわれた。この会見には、スキャンダル関係の質問を避ける意味もあって玲は参加しなかった。

 キャストの発表で驚きと共に多くの質問が飛んだが渡利は多くを語らず、これがベストの配役だと言い切った。中でも大きな変更は楷ともやがレイシャーンを降りて代わりに葛城玲の起用、その楷ともやがレイシャーンの部下であるダン.グレイドを演るのだ。それについての質問に対してともやは

 ‟スケジュールの都合上今回レイシャーン役はできませんでしたがどうしてもドラマに参加したくてダン役をやらせていただくことになりとても興奮しています。最高のダンをお見せできるように精一杯頑張ります“

 と、主役から脇役に変わったことになんのわだかまりもないように笑顔で応えた。代わりに雪永奏一郎が外れたことに関してはスケジュールの都合上という説明で終わった。


 『黄昏時に落ちる星ー甦星』はその年の暮れの目玉のスペシャルドラマとして放送される。



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