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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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葛城玲の告白

 


 翌日、玲は警察に行き自分の知っていることを全て話した。南条隆仁と会ったこと、榊との会話。クラブであったタトゥーのある人物と鼻ピアスの人物の顔。玲の証言に基づいて捜査は行われ、事実は比較的早く確認された。玲の疑惑はすぐに解消され、それは新聞や雑誌で取り上げられた。玲が誰かに陥れられた、という事実は世間の興味を引きどんでん返しの真実にマスコミは違う理由で玲を追いかけまわした。南条や榊の関与に関しては確証がまだ得られないままでその情報は伏せられていたが捜査は行われている。玲は沈黙を守った。


 少し時間を置いて事務所の意向で玲はTSL雑誌の高岡の独占インタビューに応じた。高岡は渡利や小西と懇意らしく玲がスキャンダルにまみれていた時も事実確認できないことに関しては記事にしないときっぱり言い切り、会社の上司から睨まれていたらしい。今回も玲の気持ちに配慮しホテルの一室でカメラマンの戸田のみが同室した静かな状態でインタビューを行ってくれた。


 森本と共にインタビューの現場に現れた玲は、落ち着いた態度で高岡に挨拶をする。戸田はやつれてしまった玲を見て、‟僕の腕の見せ所だ”と言って片目をつぶり、うまく撮ってくれることを約束した。

 高岡は始終丁寧な態度で玲に接し時に言いづらそうに言葉を選ぶ玲を辛抱強く待ってくれた。高岡のの質問に答えたあと、玲は最後に自信の心情をファンに向けて伝えた。


「まず私はこの場を借りてお詫びをしたいと思います。

 私は過ちを犯しました。目の前にある障害を恐れて真実を明らかにすることなく逃げ出してしまったのです。保身のためだけではなく、大切な人や周りの人を守ろうと良かれと思ってした選択でしたが結局皆を傷つけて不幸にしてしまったのです。でも私を支えてくれる人たちが、私にやり直す勇気をくれました。おかげで、自分が犯した間違いを正すことができました。私が沈黙したことでファンの方々を始め皆様を混乱させてしまい本当に申し訳なく思っています。

 私、葛城玲は違法薬物の所持と使用の嫌疑をかけられました。しかし誓ってそのような事実はありません。


 二つ目は、私の正直な気持ちです。今回私は自業自得とはいえたくさんの方々から非難をうけました。その中には少なからず私の存在自体を否定するものや誤解からくるものもありました。でも誰に、なぜ責められているのかわからなくても問うこともできず、弁明をする相手もわからず一人暗闇の中にいるような感じがして怯えていました。情けない姿をお見せして申し訳ありませんでした。俳優として仕事をさせていただいているのですからこれは甘んじて受け入れないければいけない事なのかもしれません。ただ私は葛城玲としてこの顔をテレビに晒しています。俳優として恰好はつけているけれど、それでもむき出しの顔です。投げられた石が当たれば痛みを感じ、唾を吐きかけられれば傷つきます。それだけは理解して頂きたいと思います。」


 要約するとこんな内容の玲のインタビュー記事はネットにも載せられ、多くの反響があった。世間の評価にさらされるのは有名人ならば当たり前で泣き言や甘えたことを言うなという批判の一方で俳優であっても感情があり人権のある一人の人間なのだから傷ついたりするのは当然だという声もあった。事実確認されていない憶測を誇張して報道するメディアのあり方も問題視された。過ぎてしまえばまた同じことが繰り返されるのだろうが、とりあえずこうして玲の問題は次第に鎮火していった。


 自分のするべきことをした玲は気持ちを切り替え、すぐには芸能活動は再開できないので渡利に言われたレイシャーンの役作りに励みオーディションに備えた。セリフを覚え演じる。それは不思議な感覚だった。演じていながら、それはほぼ過去に経験したことなのだ。時に必要以上に感情が高ぶってしまう。記憶に引きずられ過ぎないようにコントロールしながらも玲は演じることに没頭していった。


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