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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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閑話 特別レッスン

終盤のたたき台は出来ているのですが、細かいところがまだすっきりせず苦戦中です。佐伯の出番が少ないな、と少し登場させてみました。

 

 ドラマの放送が終わった頃から玲は急に忙しくなった。玲の人気の将来性を見たのか小さいながらもいろんな役のオファーが入ったり、事務所の社長の小西が積極的にオーディションに送り出すようになったからだ。そして玲も今までの消極的な態度を改め素直にいう事を聞くようになっていた。


 そんなある日玲は小さな舞台のオーディションの後みつきとともやに連れられてとある劇団の稽古場のに来ていた。小さな劇場程の大きさで椅子やテーブルが置いてあり後は何もないスペースだけだ。


 “ここは?”


 “今ここの劇団である稽古してるんだけど、ちょっとコネを使ってまぜてもらえることになったんだ”


 “え?そういうのっていいんですか?極秘じゃないんですか?”


 ‟脚本とか内容とか関係なくて、特別な動きの指導をしてくれるんだよ、まぁ観ればわかるよ“


 みつきがウインクをして稽古場に入って行った。玲とともやも後に続きそこにいる十五名ほどの劇団員達の動きを見る。

 皆大きな動きはしていない。立ったり座ったりお辞儀をしたり。それを一人の指導者っぽい人が姿勢や手の動きを直したりしている。


 “あ、これって”


 玲がうっかり大きな声を出して慌てて口を塞ぐ。よく見ると彼らの動きは中世の王侯貴族や騎士のような独特のものだ。ちょっとした間の置き方、腕の角度などで雰囲気が全く違ってみえる。


 ‟前にテレビで見たことあります。女性だけの歌劇団で男性、特に王子様の役をやる人が動き方について話をしてるの“


 “面白いでしょ?こういうの、舞台だと良く使うし。今度の玲のオーディションも時代物でしょ?勉強になると思うよ”


 そうみつきが言うと


 ‟演技は素人のくせに何ってんだ“


 そこにいきなり別の声が割って入った。


 ‟‟佐伯さん”“


 玲とともやが口をそろえる。長身の男が後ろに立っていた。相変わらず高級そうなスーツを着こなしている。


 ‟だいたい俺のコネで今日ここに入れるようにしやったんだろうが“


 そう言う佐伯を玲がぽかんとして見ている。


 あれ?なんかキャラが違う?


 ‟ほら、猫被り忘れてるよ。玲、こっちが地だから“


 みつきが言う。


 ”え?あ、そうなんですか?”


 いつも丁寧でスマートな物腰の佐伯とは完全に別人だ。邪気のないつぶらな瞳で見上げてくる玲を見て気まずそうに眼をそらす。


 ”ちっ!”


 佐伯が舌打ちして髪をかき上げた。別人のようだがどちらにしてもいい男であることに変わりわない。むしろこっちの方が色気があるような…


 どうやら、佐伯はこの劇団の大口スポンサーで今日のレッスンに参加できるように口をきいてくれたらしい。


 劇団員に混ぜてもらって指導を受ける。


 “ふう、難しいなぁ。黄昏時でも少し指導されたけど、奥が深い”


 玲は色々指摘されて固くこわばった肩を回しながらため息をついた。みつきもともやも指導などいらない位自然にそうした動作をこなしている。どうして自分だけ上手くできないのか、と玲はげんなりする。


 “そう、同じ男でも王子様と騎士とでは立ち方からして違う。お辞儀なんかも女性はもっと細かい動きに気を配らないといけないんだよ”


 そう言うとみつきは優雅なカーテシーをしてみせる。その姿に周りにいる劇団員も見惚れている。


 “えーえーみつきさん、なんでそんなにきれいに出来るんですか!”


 “前に社交ダンスのレッスンで女性役をやらされたことがあるんだよ”


 似合いすぎてる。美しすぎる!ドレス着せてみたい!


 ‟玲、お前の場合は意識から変えないとだめだな。小者くさい。もっと自信を持って胸を張ってゆっくり動け“


 なぜか、佐伯が王子様のように優雅に軽く頭を下げて玲に手を伸ばす。言葉使いはすっかり崩れたが。


 “なんで佐伯さんがそんなに上手なんですか”


 俺だけ…と玲がぶすっと口をとがらせる。


 ”この人は地がもう王様だから“


 と、ともやが苦笑する。


 ‟でも、玲はこういう動きもすごく似合うと思う。気取らないのとガサツなのは違うんだけど玲はもともと品のある雰囲気を持ってるからね“


 その後、三人に指導+ダメ出しを受けつつ特訓を続けた。


 なんだかんだと有意義な時間を過ごして、その後は夕食なだれ込んだ。そうそうたるメンバーに囲まれながら玲はこの上なく気取らない楽しい時間を過ごしたのだった。




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