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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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ドラマ黄昏時に落ちる星 EP29 暴かれた真実


 王城につくとレイシャーンは侍女や守衛たちが大勢迎え出る中自分でミシルカを抱えたまま部屋に向かう。汚れた衣服を脱がし清潔で肌触りの良い寝衣に着替えさせ温めた石を布にくるんだものをいくつもミシルカの体の傍に置くとミシルカの手を両手で握りしめて額を当て祈るように目をつむった。


 ずいぶん長いことそうしていた。本来ならば事のあらましを国王と王妃並びに宰相に真っ先に報告するべきなのだが城内が慌ただしく、またミシルカの意識がはっきりしないのでレイシャーンが傍についていることを誰もとめようとはしなかった。


 ようやくミシルカの頬に赤みが戻り、手も暖かくなってきた頃 ルカ、と小さく耳元で声をかけるとミシルカの長いまつげが震えた。ゆっくりと重そうに眼を開け訝し気に瞳を動かす。状況がわかっていないようだ。しかし動かした視線の先にレイシャーンを認めると安堵の色が浮かんだ。


 ‟リーシャ…”


 その瞳に胸が熱くなった。


 あの時、橋から落ちていく一瞬、共に死んでもいいと思った。固く閉じられた目を見た時もう二度と開くことがないのかもしれないと思い恐怖と絶望が襲ってきた。この瞳が見られないのならもう自分の目も開かなくていいと思った。


 ‟リーシャ、なぜ泣いている?”


 ‟ん、何でもない、ルカが目覚めないのかと思って心配してたんだ。もう大丈夫”


 ‟あ…私はあの時…?お前が助けに来てくれたのか”


 何が起きたのか思い出そうと身じろぎするミシルカをそっと抑える。


 ‟今は考えなくていい。ゆっくり休まないと”


 うんと、素直にうなづくミシルカの頭をなでながら、レイシャーンの表情はは硬くなる。不安が過ぎ去ると今度は疑惑が頭をよぎる。黙りこくったレイシャーンに


 ‟どうした?”


 とミシルカが声をかける。


 ‟いや、お前が目覚めたのだから陛下と義母上に報告に行かなくては、と思ってな。面倒だな、と思って”


 とわざとらしくため息をついてみせる。


 ‟またそのようなことを”


 と、ミシルカはクスリと笑いまた目を閉じる。まだ、頭がはっきりしないのだろう。レイシャーンはミシルカの額に口づけを落とし


 すっと立ち上がった。部屋を出る前にもう一度ミシルカのほうを振り返った。

 

 ほころぶような笑顔をもう一度見ることはかなわないかもしれない。少しの間未練がましくミシルカの寝顔を見つめていたが意を決してに部屋を出た。


 一歩部屋から出ると微笑みは消えレイシャーンは閉じた扉を背にし目を伏せて何か考え込んでいた。


 断罪されるのは自分か、相手か。


 次に目を開け歩き出した時にはその表情は硬く緊張が強く表れていた。




 レイシャーンが向かったのは王妃の部屋だった。


 ‟義母上(ははうえ)、入ってもよろしいですか”と声をかけ、


 ‟入りなさい”


 という応え(いらえ)に扉を開ける。


 王妃は椅子に座っていた。かすかに微笑みを浮かべ


 ‟レイシャーン、無事であったか。ミシルカの容態は?”


 ‟幸い大きなケガはなく、川に落ちた後気を失っておりましたが今しがた目を覚ましました”


 ‟そうか、それはよかった。其方(そなた)のおかげじゃ。よくミシルカを助けてくれた。後で私も顔を見に行きましょう”


 その言葉に軽くうなずきレイシャーンは間を開けずに王妃に問う。


 ‟放たれた刺客についてなのですが、義母上、お聞きしたい。なぜ義母上は刺客の事を存じておられたのですか?”


 とたんに王妃の表情がこわばる。


 ‟本来今回の視察は私が行く予定であったもの。刺客はもともと私を狙っていたのではないですか。カーメイ国境近くの土砂崩れは予定外の事で視察にはグレイド副団長に代わりに行くように頼んであったのです。グレイドではなくミシカが視察に赴いたことは誰も知らなかったのでしょう。時間的に義母上が早馬で伝令をよこしたのはミシカが出発してそれほど時間は立っていなかったはず。一体どこからの情報だったのです?”


 王妃は真っ青になりハンカチを握りしめた手は震えている。


 ‟刺客を放った人物をご存じなのですか?それとも、もしやあなたなが?”


 レイシャーンが一歩近づく。


 ‟あなたが刺客を放ったのですか?”


 レイシャーンの口調は穏やかだが瞳には不穏な色が宿る。王妃は何も答えられない。


 ‟ミシルカが視察に出ていたのは誤算だった。だから、あなたは慌てて一番近い距離にいて動きやすい私に早馬を送った。よほど慌てていたのか、それとも些細なことには構っていられなかったのか、おそらくその両方でしょう。しかし、これであなたが私ことを邪魔に思っていることがはっきりしました。そしてあなたの後ろにいる何者かとともに私に敵対していることを確信しました。ミシルカを王位につけるためですね”


 すると、王妃は椅子から降り、レイシャーンの足元に体を投げ出して、


 ‟レイシャーン!後生だから、ミシルカの命だけは助けておくれ。あの子は何も知らないのです”


 レイシャーンの声は氷のように冷たくなる。


 ‟私とてあなたやミシルカを傷つけるのは本意ではありません。私が王座に就いた暁にはミシルカももちろん手元に置いておきたいと思っております。しかし、あなたが余計なことをしてこの身に危険が及ぶとなると話は別なのですよ”


 自分の足元に跪く王妃を見下ろす。


 ‟義母上、私の周りを嗅ぎまわっているのは誰です。あなた一人の計画ではないはずだ”


 ‟私ですよ、レイシャーン様”


 王妃が座る椅子の後ろのついたての陰から数名の大臣と近衛騎士を従えたラストリアル宰相が現れる。なぜかミナの姿もある。


 ‟ラストリル宰相”


 レイシャーンの表情に驚きは見られない。


 ‟お前か“


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