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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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ドラマ黄昏時に落ちる星 EP24 噂2



 ミシルカは最低限の執務はこなしていたが子供たちに言われたことがよほど堪えたようで、政務が終わると自室に引きこもりがちになった。ミシルカは見かけによらず気が強くしっかりしているがその人生において他人から非難されたことがないのだ。王族であり、容姿も優れ本人も常に努力をしてそれが評価されてきた。その為こん回の状況にはかなり参っていた。要するに打たれ弱いのである。

 そんな彼の唯一の気晴らしになっているのが遠乗りだ。軽く馬を走らせていると気がまぎれる。最近は毎日のように一人で出かけていた。今日も厩へ行くと馬番の老人がミシルカの馬の準備をしていた。声をかけようとした時、話し声が聞こえてきた。


 ‟お前、めったなことを言うものじゃあない。確かに近頃いろいろ話が広まっているが、相手は王子様だ。どんな方でも儂らのようなものがどうのこうの言ってよいお方ではない。え?遠乗りの行き先?儂が知るものか。何をニヤニヤしとんじゃ。どこで誰と会っていようと何をされていようと詮索などできるか。そんな下世話なことを言うもんじゃない。だがな、ここだけの話ミシルカ様とて若い男だ、情を発散されたいこともあるだろうさ。いや、あのお美しさだ、相手は男かもしれんが、気分が晴れるなら儂はどちらでも良いと思うがな。お前、そんなことよそで触れ回るなよ”


 それを聞いていたミシルカは蒼白になり、体が震えだした。


 一体何の話をしているのだ?誰と話しているのだ?


 あまりの言われように、出て行って問いただすべきだと思ったが手足が冷たくこわばり喉に何かつかえたように苦しくなり動くことが出来なかった。それに動けたとしてもどんな邪推をされているのかを知るのも怖かった。


 それからミシルカは一層引きこもるようになった。王宮内で人の話し声がすればそれは全て自分の悪口を言っているような気がするのだ。レイシャーンは部屋に入れてもらえたが会話も弾まないし、ミシルカの口から出る言葉は卑屈なものばかりだった。食欲もなくあまり眠れてもいない。


 ‟もう、何がどうなっているのかわからない”


 と時には涙を浮かべるようになり彼はどんどん憔悴していった。



 ~~~



 ‟レイシャーン様”


 王宮の渡り廊下で呼び止められてレイシャーンが振り返るとそこにはラストリル宰相が立っていた。丁寧に礼をした後


 ‟例の噂の出所など、何かわかりましたか?”


 と尋ねてきた。


 ‟いえ、残念ながら。いろいろ聞き込みをしているのですが肝心の出所ははっきりせず”


 レイシャーンも礼を返しながら答えた。


 ミシルカ様はすっかり塞ぎこんでしまわれておいたわしい、と首を振り振り言った後、


 ‟レイシャーン様、一体誰が、何のために、という風に考えてみてはどうでしょうか”


 と、宰相はレイシャーンを見据える。


 ‟この噂を流してミシルカ様を貶めることで得をする人間は誰かと考えるべきでしょうね”


 ‟ミシルカを貶めて得をする人間…”


 宰相の言葉を繰り返すレイシャーンの表情を探るように続ける。


 ‟そうすれば、自ずと答えは見えてくるのではないでしょうか”


 レイシャーンは宰相をひたと見返す。


 ‟…そう単純なものでしょうか…?”


 ‟人というのは意外と単純なものだと思いますよ。欲望に忠実で、欲しいものを手に入れるために他人を蹴落とす。その手段は複雑であることの方が珍しい”


 ‟…勉強になります、宰相閣下。では職務に戻りますので”


 レイシャーンは慇懃無礼に礼をして踵を返す。

 その後ろ姿に宰相は


 ‟それにしても噂というのは厄介なものですね。一度広まってしまうと取り消すのは本当に難しい。でも噂には噂を、という方法もある”


 と意味ありげにつぶやいたが、それはレイシャーンに聞こえたのかどうか。



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