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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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ドラマ黄昏時に落ちる星 EP20 黄昏時の空

またドラマに戻ってきました。

 

 レイシャーンがカーメイのゾリーク王太子と出会ってから二年がたった。ゾリーク王太子はレイシャーンをたいそう気に入りいろいろ理由をつけては自国に招いた。このまま上手く両国の関係を深めていけばロンズデインはカーメイと同盟を結ぶことも可能になるという事でロンズデイン王も積極的にレイシャーンをカーメイに送り出していた。今回も行き来する商隊増加に伴い両国の国境にある関所の増築及び修復工事について話し合うための使者の一人にレイシャーンに指名したのだった。一行は今日帰ってくる予定である。


 見晴らしの良い丘の上にミシルカが立っている。緑の木々にかこまれた白い王城は美しく、ここからそれを眺めるのが好きなミシルカであったが今は反対側の方角を見つめている。王城へと続く道に待ち人の一行が現れるのを待っているのだ。もう日が落ち始め夕やみが迫っている。


 ‟もう着いてもいい頃なのに…何かあったのか?”


 その瞳が不安げに揺らいだ時、


 ‟ルカ!”


 後ろから抱きつかれミシルカはよろめいた。振り向くとそこには薄汚れた顔に満面の笑みを浮かべたレイシャーンがいた。


 ‟リーシャ、いつの間に?ここからずっと眺めていたが一行は見えなかったが”


 はは!と笑ってレイシャーンはミシルカの髪に顔を埋め思い切り息を吸い込み


 “あールカの匂いだ”


 と満足げに言ってからミシルカの体を自分のほうに向かせる。


 ‟王都に入る手前の森で倒木が道を塞いでたんだ。それを寄せていたら予定より遅くなってしまったから作業が終わった後一人で馬を飛ばしてきた。叔母上たちもあと半刻もしたら戻るだろう”


 ‟半刻…隊長がそんなことをして、あとでお叱りを受けるのでは”


 ‟構うものか、叔母上がいるから何かあっても問題ないさ。あそこから王城までは平たんな道だし。それよりルカに早く会いたかった”


 ‟その伯母上様がお怒りになるだろうに…”


 副将軍であるモイランはレイシャーンの叔母であり幼少期の育ての親でもあるため未だに保護者感が抜けないし、レイシャーンも子供っぽく振舞ってしまう。

 ミシルカは呆れながらもうれしさを隠しきれずにほほ笑む。


 ‟それはいつものことだ。お叱りなら後でいくらでも喜んで受ける。それよりルカに土産を持ってきたんだ。これを早く見せたくて”


 と言って握りしめていた布袋から小さな青い石のついた首飾りを取り出しミシルカの前に差し出した。ミシルカは目を見張り


 ‟これは…なんと美しい…青鉱石か?”


 ‟いや、それほど高価なものではないんだが珍しい石らしい。カーメイ国の市を歩いていた時に見つけた。なんでも、ギルドニア国よりももっと南西にある鉱山でしか取れないらしい。この青さが光の加減で色が変わるんだ”


 ミシルカは首飾りを持ち上げて夕日にかざす。


 ‟ああ…”


 と感嘆の声を漏らす。


 ‟本当はその国の夕闇の薄明かりが一番美しいんだそうだが。それにこれはお守りとしても良い石らしいぞ”


 ‟ふふ、うれしい。でもお守りならリーシャがこの石を持っていた方がよいのに”


 “ふふん、俺が持ってないと思うのか?ちゃんと二つ買ってきた” 


 レイシャーンはそういうと自分の襟元に手を入れ鎖を引っ張り出した。そこには同じ石がついている。

 ミシルカは顔をほころばせて


 ‟そう、それなら大事にする。片時も離さずに身に着けておく”


 と、自分で首にかけようとするところをレイシャーンが受け取ってかけてやる。絹のようなやわらかい髪を整えてやりながら


 ‟実はこの石が珍しいものだと知らなかった店屋の主人が最初に言った値で二つは困ると売り渋ったんだ。だが一緒だったゾリーク殿下のあの威圧感のおかげでほぼ強引に売ってもらうことが出来たんだ”


 ‟王太子殿下が…相変わらず奔放に出歩かれてるのか”


 大国の王太子の傲慢な顔を思い出しながらミシルカはあきれ顔で言う。些細な用事でレイシャーンを呼びつけるあの男の事は正直言って気に食わないが、たまには気が利いたことをするらしい。


 ‟カーメイは国王も自由闊達なお方だから王太子殿下にもある程度好きなさせておられるのだ”


 ‟だから、お二人ともリーシャと気が合うのだろう”


 二人でクスクス笑っているところに


 ‟隊長!”


 と副隊長のダン.グレイドが走ってくる。息を切らせながらミシルカに礼をとり、


 ‟すぐ王城にお戻りください。もう隊は到着しています。これから陛下への報告があるというのにあなたがいないのでは副将軍がひどく怒っておられます”


 “わかったわかった”


 とレイシャーンは首をすくめダンとともに歩きかけたが、振り向いて


 ‟ルカ、もう暗くなる。足元が見えなくなるぞ。お前も一緒に行こう”


 と手を伸ばす。

 ミシルカは頷いてその手を取るとレイシャーンにならんで王城に向かっていった。




 城に入るとミシルカと別れ、レイシャーンは顔と手の汚れを洗うと急いで王のいる謁見の間に入って行った。そこには既にマセラニー将軍と、レイシャーンの叔母であるムンバートリ副将軍、そしてグレイド副隊長がいた。レイシャーンが片膝をつき王に礼をすると、


 ‟今頃来おったか。どこで道草を食ってきた?副将軍たちはとっくに到着しているというのに”


 と肩眉を上げる。レイシャーンは神妙な顔をして


 ‟申し訳ありません。途中倒木撤去作業をしたために大変見苦しい姿になりましてとてもそのまま陛下の前に参るわけにはいかず、身支度に少し時間をとられました”


 ‟ふん、その割にはたいした身支度はしていないようだが”


 ‟…その、実は猫に餌をやっておりました。私にしかなつかぬゆえ不在の間あまり餌を食わず腹をすかしておるようでしたので”


 ‟ほう、猫、な。その猫に光る石でも土産に買うてきたのか”


 ‟…珍味が好きな猫でして”


 そこで叔母であるムンバートリ副将軍がこめかみに青筋を立て


 ‟ムンバートリ隊長!いい加減にせぬか!”


 と怒鳴りつける。グレイド副隊長がこらえきれずに噴き出し慌てて口を押さえる。


 ‟よいではありませぬか、陛下。レイシャーンが陛下よりミシルカを優先するのはいつもの事”


 と、涼し気な声がし、奥の部屋からエレノリア王妃が笑いながら入ってきた。


 “エレノリア、なぜ入ってきた。まだこれらの報告は終わっておらぬぞ”


 ‟あなた方のお話が聞こえてきたからです。戯れの会話にしか聞こえてこなかってゆえもう大事な話は終わったのかと”


 といたずらっぽくレイシャーンに笑いかける。


 “義母上”


 とレイシャーンは王妃に深々と頭を下げる。

 王はゴホン、と咳払いし


 “まあ良いわ、確かに報告はムンバートリ副将軍より聞いた。ところでレイシャーン、カーメイの王太子は相変わらずであったようだな”


 ‟はい、この度も公式な会議のあと、あちこちにお供させていただきました”


 ‟カーメイの王も王太子もお前をいたく気に入っておる。ことあるごとにお前を婿でも嫁でもいいから欲しいと言ってくるぞ”


 ‟お戯れでございますよ”


 と、レイシャーンは話を切り上げようとする。この流れは不味い。将軍も助け舟を出し話題を変える。しばらく報告の続きをしてから四人はもう一度礼をして立ち上がり退室した。



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