ドラマ第一部前半終了
前回のエピソードでドラマの第一部(前半)部分が終了になります。後半は少しずつ暗い雰囲気になってきます。
ドラマの第一部最終話「祭りの後」を見終わって玲は無意識に自分の手首を掴んでいた。まるでドラマの主人公になったような気分だった。言いようのない不安。手首の痛み。
‟葛城君、体調悪いの?顔色悪いよ”
隣で一緒に視聴していた楷ともやが心配そうに声をかけてきた。
‟あ、ちょっと、なんか、お腹の調子が…昼になんか変なもの食べたかな。大丈夫です”
作り笑いでごまかす。
‟それにしても最後のシーン、すごかったですね。楷さんの演技がすごかったです”
‟ふふ、ありがとう。そう言ってくれると嬉しいな”
‟それにあの、ルードヴィック役の人もすごいですよね。鬼気迫るような感じが怖いくらいでした”
‟ああ、あの俳優さんはね、あまりメディアには露出してないけど舞台中心の方で実力派だよ。実は見かけよりもずっと年齢も…”
王太子の出番は少ないし玲との絡みもないからよく知らない俳優だが、あの真に迫った表情が目に焼き付いて離れない。敬愛している人からの憎しみのこもったような目。
トモやの説明を聞きながら自分の胸内に広がる不安を役者の演技の所為にして玲は青ざめた顔で一つため息をついた。
そしてそんな玲を伺うようにともやが見ているのに気付かなかった。
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少し前に放送され始めた旅行会社のCMの反響は大きかった。今までとは雰囲気の違う南条みつきに人々は魅了され、そしてそれまでほとんど名前を知られていなかった葛城玲の名前もさかんにネット検索されるようになった。二人がドラマで共演していることも話題になり、ちょい役ながらも複数の役を演じている玲を探すのがはやっているらしい
‟これ、このコメントみて。「夜襲」のエピソードで玲君発見!身のこなし、すごすぎる、だって”
‟こっちは、修道士の格好してるの葛城君ですか?だって。修道士は演じてないよなー”
撮影現場でSNSをチェックしているスタッフと小林がスマホを見せ合いながら笑い合ってる。
‟玲、すっかり人気者だね”
みつきが玲に話しかけてきた。
‟はあ、なんだか自分の事じゃないみたいです。CMでみつきさんと共演したせいで話題になってるんだと思いますけど”
玲が頭に手をやりながら気恥しそうにこたえる。
‟いやいや、葛城君、自分の事過小評価しすぎ。CMもすごくよかったし、ドラマの役も頑張ってるし”
神官長役の立花も話に入ってくる。
‟そう言えば、玲にマネージャーが付くようになったって聞いたよ”
‟あ、それはそうですけどマネージャーさんは俺と小林君と掛け持ちです。奏さんに専任で一人付くようになったんで”
‟彼の知名度も上がってきてるもんね。これで葛城君も晴れて自由の身だ”
茶化すように言われて返答に困るがこれは事実である。ドラマの評判が良い所為か奏一郎も忙しくなってきた。今まで他の俳優と掛け持ちでやっていたマネージャーが奏一郎に専任で付くようになってから玲は奏一郎の雑用から解放された。マネージャーが奏一郎が玲を連れ歩くことを良しとしないのだ。実はこれは社長の小西の計らいで、玲を解放してくれるために仕組んだ事なのだがそのことは玲は知らない。




