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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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ドラマ黄昏時に落ちる星 EP19 祭りの後

 

 ロンズディン王の生誕祭は始めの二日はいろいろあったもののその後の予定は滞りなく進み何とか締めくくられた。ルードヴィックは初日だけ王と共に賓客の前に顔を出したがその後は体調が悪くずっと自室で安静にしていた。本人の希望で客たちには風邪をこじらせたという事にしていた。全ての客が帰った後、ミシルカとレイシャーンが生誕祭のあらましを報告に行くとルードヴィックは背中にいくつも枕をあて寄りかかって上体を起こした姿勢で二人を迎えた。傍らには王妃が付き添っていた。


 ‟さすが、だね、レイシャーン。大男の剣闘士と戦って勝っただけでなく命まで救うとは。私も鼻が高いよ。試合の様子はアナからも聞いているよ。お前が奴隷である剣闘士を庇ったことに皆感激していたようじゃないか。そうだったね、アナ”


 二人の報告を聞いた後、弱々しく言葉をとぎらせながらもルードヴィックは微笑む。寝室の隅にはアナが控えていた。ルードヴィックはアナを誕生会の催し物が行われる場所に行かせては観てきた事を話させているらしい。自分が動けない分アナを使うのは、物好きなルードヴィックらしいが身分にうるさい侍女や侍従長が良く許したな、と内心驚く。


 ‟はい、レイシャーン様の試合の様子はすごかったです。かっこよくて、あんなに大きな男を倒すなんて。それによその国の王子様が殺そうとしたところを止めたから皆もすごいって褒めて…”


 ‟アナ、少し控えろ”


 頬を染めて興奮して話すアナにレイシャーンは気恥しくなってしまった。それに育ちの所為できちんとした話し方ができないアナに侍女や王妃が眉を寄せている。


 ‟兄上、それよりそろそろお休みになったほうが…”


 横になるのを手伝おうと手を伸ばした時レイシャーンの手首がいきなりルードヴィックに掴まれレイシャーンはビクッと体をこわばらせた。枯れ枝のように細い指は、しかし病人の物とは思えない程熱く、強かった。手首が痛い。


 ‟私も…一度で、いいから剣を、振るってみたかった、な。お前の、よう、に…皆の賞賛を受けて”


 兄の顔を見ると見つめ返された。それは今まで見たこともない程強い眼差しだった。ぎりぎりと手首を握りしめられて、振り払うこともできずレイシャーンは今までに感じたことない感覚に包まれた。


 怖い

 どうして?


 そしていきなり手首が解放された。


 ‟ルードヴィック!”


 ‟兄上!”


 ルードヴィックは力尽きたようにぐったりと枕に頭を沈めた。。医師たちが駆け寄ってきた。

 慌てるミシルカとレイシャーンは外に出される。


 ‟兄上…”


 目の前で扉が閉まり、しばらくうろたえていた二人だったがルードヴィックは疲れて眠っただけだと侍女が教えてくれたので部屋の前を離れた。


 ‟手、大丈夫か?”


 ミシルカがレイシャーンの手首にそっと触れ、眉をしかめる。そこには指の跡がついていた。あの弱々しい兄のどこにそんな力があったのかと思うほどはっきりとした後だった。手が震えている。痛みのためではなく、恐怖で。


 あの目、まるで、憎まれているよう…?


 言いようのない不安がレイシャーンの心の中を駆け巡った。




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