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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
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ドラマ黄昏時に落ちる星 EP17 夜襲

 


 その晩、夕食の後レイシャーンとミシルカが裏庭を散歩していた。心身ともに興奮していたので涼しい風と夜の静けさが心地いい。ひとしきり今日の剣技大会の話をした後


 ‟ああ、さすがに疲れたな…”


 とレイシャーンが大きくため息ついた。


 ‟リーシャは大活躍だったな。腕は痛まないか?私もリーシャほどでもないが、久しぶりに体を使って疲れた”


 とミシルカが微笑む。裏庭には足元にしか明かりがともされておらず星がよく見える。庭は塀に囲まれている上背の高い木々も多いので星を見るためには真上を見上げなければならない。そのついでにレイシャーンは大きく伸びをした。

 その時、シュッと音がしてレイシャーンの脇を何かがかすめた。


 ‟ふせろ!”


 とっさに叫んでレイシャーンはミシルカをかばって屈みこむ。小刀が地面に落ちた。塀を超えて次々と覆面をした者たちが飛び降りてきた。


 ‟刀をよこせ!”


 続けて飛んでくる小刀を交わしながらレイシャーンが叫ぶと少し離れていた侍従が刀を持って走り寄ってくる。受け取るなり鞘から抜き取るとミシルカを背にかばいながら刀を構える。目で確認できるだけで五人。それ以上はわからない。


 ‟ルカ、下がっていろ”


 と、と振り向かずに声をかけるが返事がない。


 ‟ミシルカ様!”


 侍従の叫びに振り向くとミシルカが肩を押さえて屈みこんでいた。その手は血で真っ赤になっている。


 ‟ルカ!”


 一瞬でレイシャーンの頭が沸騰した。


 ‟おのれ”


 レイシャーンが敵に突っ込んでいった。一太刀で一人目を切り伏せ、返した刀で続けざまに二人目を肩から斜めに切り裂いた。

 三人目を近くの大木まで追い詰めるとその胸部に深々と刃先を沈める。


 ‟ぎゃあ!”


 と叫び声がしたがそれもすぐに止んだ。

 反撃する間も与えずに三人をあっという間に倒してしまった。周りを囲む刺客達もじりじりと後ずさる。


 ‟レ、レイシャーン様…”


 侍従が信じられないもの見るように震えている。刺客に襲われている恐怖だけでなく、あっという間に三人の命を絶ったレイシャーンに驚愕しているのだ。


 ‟ミシルカに短刀を放ったのはお前か”


 次に切り結んだ相手は刺客はかなりの手練れだったが大木に追い詰めると刀を奪いそれで肩を樹の幹に縫い留めた。

 ぐあぁ!という叫び声が。レイシャーンは刀でさらに深くえぐりながら問い詰めるが刺客は応えない。


 ‟応えろ!”


 レイシャーンは自分の刀を振り上げた。


 ‟リーシャ!やめろ!”


 とミシルカも叫ぶ。

 その時。


 ‟落ち着け。殺してしまっては黒幕がわからぬぞ”


 という声がしてレイシャーンの腕が掴まれる。こんなに近くに来ているのにその存在に気が付かなかった。ハッとして腕を掴んでいる相手を見やるとそれはカーメイの王太子だった。


 ‟ゾリーク殿下、どうして”


 ようやく他人の声が聞こえる程冷静さを取り戻したレイシャーンが問う。


 ‟やれやれ、奴隷の命乞いをするためにドミトリごときにひざを折ったお前があっという間に三人を切り殺して…なんというざまだ”


 ‟…”


 ‟とにかく刀を下ろせ。全員殺してしまっては裏で誰が糸を引いているのか吐かせることはできんぞ”


 ‟リーシャ”


 ミシルカが立ち上がりレイシャーンの肩に手を置く。

 だがその一瞬の隙をついて刺客は自分の肩に刺さっている刀を引き抜くとその勢いのまま自分の胸を貫いて崩れ落ちた。


 冷静になっレイシャーンが周りを見ると呆然としていたミシルカ達、そして庭の奥の方にも数人倒れているのが目に入った。気づかないうちにゾリーク王太子が倒したのだろうが彼らには息があるようだ。そうしているうちに騒ぎを聞きつけた護衛たちが駆けつけてきた。



  ~~~



 ミシルカの手当てを終え、レイシャーンも着替えを済ませた後改めて客間の一つでゾリーク王太子と対面した。


 ‟やっぱり、先日城下にいたのはあなた様だったのですね、ゾリーク王太子殿下”


 ようやく落ち着きを取り戻したレイシャーンがゾリークに礼をする。


 ‟ああ、今日は済まなかったな。あの場で名乗り出ればよかったのだが、俺もこれでも一応王太子として父の名代で訪問している身だからな。あまり行儀の悪い行いをしていることを大っぴらにしたくなかったのだ。それと…”


 強い光をたたえた目がレイシャーンを見据える。


 ‟それと、お前の剣技をもう一度じっくり見てみたかった”


 ‟…”


 ‟だが、もし今夜の刺客たちがその一件に関係しているのであれば、申し訳ない事をした”


 と、素直に謝られてレイシャーンはどう反応していいかわからなかった。


 ‟しかし、自分の身が危うくなってもあれほど冷静に戦っていたお前が、ミシルカ殿のためにあそこまで我をなくすとは。危ういな”


 揶揄するように言われて今度こそレイシャーンは言葉もなかった。すべてその通りだったからだ。


 ‟ゾリーク殿下、助けていただき心からお礼を申し上げます。しかしあなた様はどうしてこの場に?”


 と、ミシルカが問いかける。


 ‟実はレイシャーン殿にばったり会わないかとフラフラしていたら怪しい者たちを見かけたのです。あとをつけてきたのですが見失ってしまいました。そして塀の外に来た時に中から声がしたのだが入り口がわからず…”


 ‟わからず…?”


 ‟木によじ登って塀を乗り越えたので時間がかかってしまいました。この年で木登りするとは思わなかった。体が重くなっていて結構大変でした。もう少し早く来ていればミシルカ殿にけがをさせることもなかったかもしれないと思うと…申し訳ありません”


 ‟…もったいないことでございます”


 なかなかやんちゃな王太子のようだ。それにしてもミシルカに対する言葉遣いとレイシャーンに対するそれが随分違うのが気になるところだが、大国の王太子にそれを指摘するわけにもいかない。


 ‟さて、この件と先日の件は関係ないかもしれないが、とりあえず出来ることから片付けをするか”


 レイシャーンの方を見てそう言ってゾリークはこの場に関係者を集めることを求めた。



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