ドラマ黄昏時に落ちる星20 玲の変化7
‟葛城さん、この間からご迷惑をおかけしてばかりで本当に申し訳ありません”
小川ミナは深々と頭を下げる。
‟いや、そんな大丈夫。この前から災難だったね。奏さんも撮影で疲れてるからかちょっと最近イライラしてるみたいで”
そう、最近の奏一郎は確かにおかしい。いつになくイラついている。それに俺もなんだか違う。今までは奏一郎を怒らせるようなことは極力避けてきたのに。負い目があるからだ。三年前のあの日、次音の絶望したような顔と奏一郎の叫びが玲の胸を突き刺した。
『玲、玲の所為だ!玲がいなかったらこんなことにはならなかったんだ』
八つ当たりだと周りからは慰められたが、それで気が楽になるわけもなく。それ以来自分でも嫌になるくらい卑屈になっているのはわかっていた。奏一郎に使いっ走りみたいに扱われて陰で笑われたり呆れられてるのも知っていた。それなのに、最近奏一郎を怒らせるようなことばかりしている。
だけど、なんだか気分はすっきりしてる
‟葛城さん?”
黙り込んでしまった玲に、ミナが怪訝な顔で声をかける。
‟あ、ごめん。そうなんだ、奏さん疲れてるから。撮影が終わればケロッとしてるから大丈夫ですよ”
‟はい。葛城さんは本当に優しいんですね。そ、それでもしよければ今度何かお礼をさせてください”
ミナが赤くなってつぶやく。
‟いいよいいよ。お礼何て”
‟でも、それじゃ私の気が済みません”
‟あれー小川さん、お礼は私にはしてくれないのかな?すごくいい解決案を出したと思うんだすけどねぇ”
そこにいきなり佐伯が割り込んできた。
‟佐伯社長!本当に助かりました”
玲は本気で頭を下げた。ミナも慌てて頭を下げる。
‟ま、それはいいとして葛城君、話があるですけどちょっといいですか?”
チラッとミナの方を見るとミナは
‟じゃあ、私は失礼します”
とあたふたと部屋を出て行った。
‟ふう、あぶないあぶない”
‟え?”
‟ん、なんでもないです。で、話というのはね…”
~~~
信じられない。CMのオファーが来るなんて。しかも南条みつきと共演。
‟いや、俺なんかにはちょっと無理…”
‟これ、悪いけど、君に選択の余地はないよ。断ったら君だけじゃなくて僕も社会的に抹消される”
小池が半眼で睨んでくる。
‟え…そんなおおげさな”
‟相手からのオファーだからね。わかる?”
‟…はい”
この前、奏一郎の衣装の騒動の後、佐伯から話があると言われたのはこのことだった。その時は内容などは知らされず、後で事務所に話が行くと思うからと言われただけだったのだが。
もうすぐドラマの放送も始まる。玲の周りが騒がしくなりそうな予感がした。




