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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
22/99

ドラマ黄昏時に落ちる星19 玲の変化7

 

 やってしまった


 小川ミナはある人物の衣装の前で立ちすくんでいた。

 よりによって雪永さんの衣装にコーヒーをかけてしまうなんて。しかも今日これから使う撮影の。

 どうしよう。先ず衣装さんに報告して…それから

 なんとか冷静になろうとしたが口は乾き心臓はどくどくいって吐き気までしてきた。


 ‟小川さん?”


 呼ばれて振り向くとそこには大きなバッグを持った葛城玲がやはり青い顔をしてコーヒーがかかった衣装を見据えていた。


 ‟…これ…”


 ‟す、すみません!私そそっかしくて何もないところでつまずいちゃってコーヒーを”


 その時、おはようございまーす!と奏一郎の挨拶が聞こえてきた。ビクッとするミナ。玲はとっさにミナからコーヒーカップを取り上げた。


 ‟どうした、玲?”


 そこに奏一郎が衣装さんと一緒に入ってくる。


 ‟何だよこれ!”


 ‟奏さん、すみません俺つまずいちゃって”


 とっさに玲は頭を下げた。ミナは一瞬え?と目を見開く。あの、と声を出そうとした時頭を下げた玲が上目遣いにミナを見て小さく首を振った。


 ‟あー困りましたねぇ。これダン副団長の隊服だから他とちょっと違うんですよねぇ。替えはすぐは”


 撮影も押してますしね、と他のスタッフも付け加える。


 ‟玲、お前わざとか”


 ‟え?”


 玲が驚いて顔を上げると奏一郎が恐ろしいほど睨んでいた。


 ‟わざとコーヒーかけたのかって聞いてんだよ!最近のお前、何かにつけて俺にたてついてくるよな。こんないいドラマに出て役貰ってもう俺の言いなりになるのはうんざりってことか?”


 ‟そんな、奏さん、俺そんなこと考えてない…”


 ‟違うんです雪永さん、私なんです”


 ‟あ?”


 ミナが声を上げると奏一郎がそっちを見る。


 ‟またあんたか。いい加減やめてくんない?使えない人間が撮影場所にいるのって迷惑にしかなんないんだよね”


 ‟奏さん!”


 ‟なんだ?玲、お前こいつに気でもあるのか?この前から庇って。無駄だぞ。こんなのの機嫌とったって何の得にもならないぞ”


 ‟奏さんこそいい加減にしてください。スタッフにそんな態度取るなんて奏さんの品性を疑われますよ”


 ‟何?”


 玲が言い返してきたのに驚くと同時に奏一郎の頭に血が上った。


 ‟ちょ、ちょっと待ってください。先ずは衣装の事考えましょうよ”


 玲につかみかかりそうになる奏一郎と、泣き出すミナ。その場がカオスになった時。


 ‟おはようございます、でいいんでしたっけ”


 張り詰めた場にそぐわない穏やかな、でもよく通る声が響いた。一斉に振り向くとそこには秘書らしき男を従えて佐伯剛がにこにこして立っていた。


 ‟今日はダン副団長の独白シーンを撮るって聞いていたのでお邪魔かと思ったんですが来てしまったんですよ。もちろん差し入れも持ってきたのでお昼は楽しみにしていてください”


 ‟え?俺?”


 いきなり自分のことを言われて奏一郎はびっくりした。


 ‟それにしても何があったんですか?声が部屋の外まで響いてますよ”


 ‟実は今日の撮影の衣装にコーヒーをかけてしまって”


 衣装さんが説明する。それを聞いて佐伯は少しの間じっと衣装を見つめた後


 ‟ダンがレイシャーンが捕縛されたニュースを聞いて苦悩するシーンですよね。これ、隊服じゃないくていいんじゃないですか?”


 ‟え?”


 衣装さんも奏一郎も怪訝な顔をする。


 ‟だって、彼は実家に帰っていてレイシャーンが捕縛されたときは王城にいなくて知らせを聞いて慌てて王城に来たんでしょう?もちろん冷静に考えればきちんと隊服を着て王城に来るべきでしょうけど状況を考えたら私服でも問題はないかと。それに独白のシーンって外ですよね”


 ‟なんで佐伯さんがそんな事ご存じなんですか?”


 衣装さんが問いかける。


 ‟実は私原作者の方とお会いしたことがあってお話を聞く機会があったんですよ。ダンは私の好きなキャラなのでどういう行動をとったのか詳しく聞いたことがあるんです。あ、もちろん原作も読んでますし”


 ‟へ―そうだったんですか。でも、そうなるとダンは私服でも構わないという事?だとしたら…”


 衣装さんがぶつぶつ独り言を言う。頭の中で服の算段をしているのだろう。奏一郎もあの佐伯社長がダンのファンだというのに気をよくして(佐伯はそうは言っていないのだが)、機嫌を直して目をキラキラさせている。


 ‟そうですよね?渡利監督”


 佐伯がそう言って後ろを振り向くとそこには渡利もにこにこして立っていた。


 ‟そうだね。その辺りのダンの行動を考えると隊服である必要はないね。私服で問題はないね。いいところに気が付きましたね、佐伯社長”


 ‟いえいえ、お役に立てて何よりです”


 そう言うと佐伯は玲の方を見て片目をつぶった。玲も慌てて頭を下げた。

 奏一郎が衣装を合わせに部屋を出ていくと、渡利は小さな声で佐伯に話しかける。


 ‟助かりましたよ、さすが社長.でもあなたがダンに興味をお持ちとは知りませんでしたよ”


 ‟俺がダンにもその役者にも興味があるわけないだろう。俺はあの場にいたんだ。忘れるわけがない。ダン自身にもレイシャーンの協力者であるという疑いをかけられたから隊服を着ているわけがない。追っ手から逃れてカーメイに密書を持って来たときには平民の服を着ていた”


 ‟衣装合わせの時楷君にそこまで確認しなかったのは私の落ち度です”


 “ま、ドラマではどちらでも支障はないからな”



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