ドラマ黄昏時に落ちる星14 玲の変化2
‟それはもちろん俺もそろそろ葛城玲君とお近づきになりたいからな。裏方でサポートばっかりじゃいつまでたっても仲良くなれない”
後日、わざわざ福島くんだりまで玲に会いに行った目的を佐伯に問いただしたみつきに佐伯はしらとっして言った。
‟だからってあんなとこまで押しかけてくることないじゃん”
全く油断も隙もない。そういえば昔からこの男は自分の権力を利用して事あるごとにレイシャーンにちょっかいかけてた。
‟それはお互い様だろ”
しかもいつの間に名前呼びになってんだ、と佐伯がつっこむ。
‟みつきさんはほんとに仕事で近くまで行ったんですよね”
と、ともやがなだめるがみつきも引っ込まない。
‟そんなに近づきたいならいっそあんたがゾリーク王子役演ればよかったのに”
‟俺は忙しいの。確かに誰よりも俺らしく演じる自信はあるがな”
自信ありげにニヤリと笑う。仕事中など真面目な顔で見つめられるとその威圧感に圧倒されるが、こうやって表情を変えると大抵の者なら腰が砕けてしまうほど男臭い色香がにじむ。
この男は自分の魅力を熟知していてそれを利用してほしいものを手に入れる。相手はそれに気づかずに何でも差し出してしまうというわけだ。前世ではそこの大国の王太子という権力までくっついていた。つくづく気に食わない男だ。
みつきは自分の事を棚に上げて佐伯に切り返す。
‟いくら本人でもド素人大根男はおことわりだけどね”
イーっと顔をしかめるみつきに佐伯は片眉を上げて流すにとどめる。
‟まあ、俺もそこまで図々しくはないし暇なわけでも無いしな。ゾリーク役の俳優はちょっと年はいってるが実力あるし、彼に任せるよ”
‟だいたい、佐伯君の高圧オーラで撮影現場に居座られたら他のキャストが仕事にならないよ”
渡利も苦笑した。
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今日は制作発表の日である。玲の役は小さいのでキャストの紹介はないと思っていたのだが、渡利が
‟名前がついていてセリフがある役だから挨拶してもらうよ―”
と、前日になって行ってきたので慌てて準備してきた。
“へえ、玲も挨拶するんだ?”
と、スーツを着てきた玲を見て奏一郎は少し驚いたように言う。
‟昨日急に監督に言われて”
今日揃ったメンバーの中ではおそらく玲の役は一番小さい。そっと後ろの方に控えていたらそこに自分と同じように縮こまっている若い女の子がいた。目を合わせて軽く会釈をすると相手も同じようにおずおずと頭を下げた。
‟葛城玲と言います。よろしく”
‟侍女役の持永愛理です、よろしくお願いします”
‟え、何自己紹介し合ってんの?舞台に立った時の練習?ちょい役同士?”
傍に居た奏一郎が茶化してくる。二人は真っ赤になった。
‟私は望月亮介、厩番の爺さんの役です。よろしく”
その時横から声がして中年の男がにこにこしながら会話に入ってきた。
‟私の役もちょい役だよ。仲間に入れてくれるかい?”
これには奏一郎だけでなく、玲たちもぎょっとした。望月はバイプレイヤーとしてベテランの俳優だ。厩番の役も決して大きくは見えないが重要な役どころである。
‟いや、望月さんがちょい役なんてそんな…さっきのはちょっとふざけてただけです。な、玲”
‟そうですそうです”
と、玲も持永も首をぶんぶんと縦に振る。望月はにこにこと笑っているが何となく気まずい空気が流れた。
‟はーい。皆さん、こちらに来てください。渡利監督、南条さん、楷さんから順番に”
と、スタッフから声がかかる。
‟じゃ、玲、後でな”
これ幸いとばかり、奏一郎が離れて行った。
主役の南条みつき、楷ともやに続き、メインの俳優たちが挨拶をする。たくさんのカメラと、報道陣、フラッシュがたかれ目がちかちかしてきた。
俺、ほんとにここにいていいの?っていうかいる意味ある?
レギュラーの挨拶が終わった。残っているのは玲たちの様な単発のエピソードにしか出てこない配役たちだ。その中でも望月はやはり別格で渡利が
‟望月さんにやっていただく厩番はあちこちにいろんな種をばらまく重要な役です。いい人かどうかはわかりませんがね”
と、冗談めかして望月を紹介する。悪役もよくこなす知られた役者なので会場も笑いが広がった。
そして玲の番になった。
‟葛城玲君に演じてもらうソーラ王子は主役たち、とくにレイシャーンをトラブルに巻き込む小国の王子様です。本人は悪人ではないですけど、気が弱くて長いものに巻かれるタイプで”
渡利の紹介の後
‟葛城玲です。一生懸命やらせていただきます”
それだけ言って頭を下げる。
そこへ、楷ともやが寄ってきて玲の肩に手を置いて
‟じつは葛城君はソーラ王子以外にもちょこちょこ顔を出すんです。ぜひ探してみてください”
と付け加えた。そしてともやと渡利に挟まれた状態でパシャパシャと写真を撮られる。
予定よりも長い紹介になり、玲は面食らってしまい頭をもう一度下げた。




