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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
15/99

ドラマ黄昏時に落ちる星12 ドラマ制作6

 


 ‟この後、殺陣の稽古?”


 稽古場でストレッチをしていると、みつきが声をかけてきた。今日の撮影は終了して みつきは帽子とサングラスを手にしている。忙しいみつきの事だ、これからモデルの撮影の仕事でもあるのだろう。

 ‟はい、刺客役の小林君達を待ってるとこです”


 ストレッチを中断して玲が頷く。


 ‟そ、がんばって”


 みつきがひらひらと手を振って部屋から出て行った。


 ‟あ、ありがとうございます。南条さんもお疲れ様です”


 その後ろ姿に玲が頭を下げた。


 最近みつきが穏やかだ。普通の顔で挨拶してくれるし、睨まれない。今みたいに少しだけど、話しかけてくれることもある。愛想がいいとまでは言えないが今までが今までだっただけにずいぶん関係は改善したと思う。確か、前の本読みでみつきが怒って台本を叩きつけた時頃からだ。


 皆の前で俺にキレちゃったっぽいから気恥しくなったのかな


 話し声がしたので振り向くと小林がほかのメンバー達と稽古場に入ってきた。


 ‟お疲れ様でーす。よろしくお願いします”


 と玲。入ってきたメンバーも口々に挨拶をしてストレッチを始める。


 いいな、楽しそう


 部屋を出たところから中を覗きながらみつきは思う。

 あんなふうに和気あいあいで出来たらいいのに。玲は皆にするように自分にリラックスした笑顔を見せてはくれない。まあ、今世での玲を受け入れられず、きつく当たった自分が悪いわけで、今更急に態度を変えることもできない。


 みつきが佇んていると


 ‟おーし、これからしごくぞー。覚悟しろよ”


 と言いながらアクションのトレーナーが来たのでみつきは少しの間トレーニングを眺めていた。表情が一変し、ひきしまる玲の横顔。

 普段の玲は奏一郎の顔色を窺って(そして多分みつきの顔色も)びくついているがアクションをしているときは顔つきが変わる。

 均整の取れたからだがしなやかに動く。本人は気づいてないのかもしれないが彼の動きは美しく人の目を引き付ける。切れのいいアクションも一朝一夕に身につくものではない。相当トレーニングをしているのだろう。何か動きがつかめないところがあるのか、トレーナーを相手に何度も同じところを繰り返し練習している。ドラマそのものはアクションシーンが多いわけではないが玲は兵士と刺客の役なのでいくつか見せ場がある。邪魔をしないようにふっと小さく息を吐きみつきは踵を返した。


 殺陣を見ているスタッフが


 ‟葛城君て体動かしてると別人みたいね”


 ほーっとため息をつく。


 ‟もともと顔もいいし、ああしてると目を引くよね。かっこいいなー”


 他のスタッフも同意するのが聞こえてきた。


 ‟みつき、急ぎましょう”


 とマネージャーの榊に急かされ廊下を歩きながら、玲が褒められてるのを聞いてうれしいような面白くないような気持になった。


 そうだよ、玲は本当はすごくかっこいいんだ。強くて優しい。


 ‟みつき、どうかしましたか?葛城君が何か?”


 少し顔を赤くしたみつきを見て、榊がいぶかしそうに訊いてくる。


 ‟なんでもない”


 佐伯が調べてきた玲と奏一郎の話を聞いて、納得したと同時にそれでも納得したくない自分がいる。


 玲は悪くない。そう言ってあげれば玲は変わるだろうか。いや、玲だって自分が何も悪いことをしていないのはわかってるはず。じゃあ、なんで? どうしたら玲が本来の自分を取り戻してくれるんだろう。



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