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黄昏時に落ちる星  作者: 有間ジロ―
13/99

ドラマ黄昏時に落ちる星10 ドラマ制作4

 

 家に戻り、玲は台本を開く。

 物語はそれほど複雑ではない。レイシャーンとミシルカはロンズディン王国の王様の子供たちだ。二人は仲良く育ってきたのだが、成人したのを機会におとなしいミシルカよりも自分のほうが王にふさわしいと思いミシルカを陥れるための行動に出たのだ。それが単純な欲からなのか、国を思っての事か、身分差のために虐げられてきた母と自分のための復讐なのかは台本には具体的に書かれてはいない。セリフだけを読んでも解釈はいろいろできる。ただ表面上ミシルカとレイシャーンはほぼ終盤まで仲が良く一応ミステリーっぽく首謀者は視聴者にはわからないことになっているのだ。はっきりしていることはレイシャーンは捕まった時、自分が王位につくためにいろいろと画策したことを認め処刑される。


 しっくりこない。

 違和感。


 心の中で誰かが呟く。


 王位なんて望んでいなかった。ただ……でさえあれば。


 あ、ぼーっとしてた。レイシャーンの心情なんて考えてるばあいじゃなかった。


 セリフは少ないとはいえ、玲にも当てられた役がある。ナンドラ王国のソーラ王子だ。ロンズディン王国と仲の悪い大国ギルアドニアの隣にある小国の王子。ほとんどギルアドニアの属国のような立場でソーラ王子自身もギルアドニアの第二王子ドミトリの言いなりだ。おどおどして真実を言えない。

 なんか親近感わくな、と自嘲する。

 そういえばソーラ王子の出番と刺客をやるシーンが近い。

 あ、でもドラマだし撮影は別々か。


 ~~~


 ‟いいねー葛城君。ソーラ王子のおどおどした感じよく出てるよ”


 ‟あ、はい、ありがとうございます”


 助監督に褒められて玲はぺこりと頭を下げる。


 ‟地でやってんじゃないの?いつもやってることだから”


 誰かが小さくつぶやくとクスクスという笑い声が周りから聞こえてきた。普段からの玲と奏一郎の関係を揶揄してるんだろう。玲はカッと顔が赤くなるのがわかったが、何も言わずに俯いた。その時、バンっと大きな音がして誰かがガタンと椅子から立ち上がる音がした。

 皆が一斉にそちらを見るとみつきが立ち上がっていた。台本を壁にたたきつけた音だろう。


 ‟すみません、蚊がいたんです。大きな音出しちゃってごめんなさい。なんか刺されたみたいですごく痒いんでちょっと薬つけてきていいですか”


 口調は軽いが目は笑っていない。一瞬場がしん、となり気まずい空気に助監督が慌てて


 ‟じゃ、じゃあ丁度いいから休憩にしようか”


 と言ったので、みんなさわさわと散って行った。

 玲も慌ててトイレに行こうとした時


 ‟ねえ、なんでそうなの?”


 と声が追いかけてくる。ビクッとして振り向くと、みつきが鬼のような形相で睨んでいる。


 ‟え…なんでって”


 ‟あんなふうに言われて悔しくないの?あんなこと言うやつにもムカつくけど、バカにされてるのにへらへらしてるあんたにはもっとイラつく”


 ‟みつきさん、やめろよ”


 楷が止めようとするがみつきは黙らない。


 ‟あの雪村?ってやつにいいように使われて自分だって撮影あるのに無理して、荷物持ちやら運転手やら。何でそこまでするの?みんな笑ってるのはそういう事だよ”


 玲は俯く。いたたまれない思いをしながらも、みつきさん、奏さんの名前は雪永…と突っ込みを入れたくなる。


 ‟葛城君、ごめんね。みつきさん、正義感強いからああいうのだまってみてられないんだよ”


 ‟…から”


 ‟え?”


 ‟俺は奏さんに償わなきゃいけないから。あいつにも…俺の所為であんなことになって、でなきゃ今頃奏さんはもっと有名になって活躍しててもいいはずなんです!”


 ‟あんなこと?”


 ‟すみません、あなたには関係ないことなんでほっといてください”


 いつになく強い口調で言い放つと玲はそのまま部屋を出て行った。

 みつきとともやはあっけにとられてその場に立ち尽くした。



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