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ローシンフォニー

死神は一人紅茶を片手に新聞を読んでいる


紅茶は態々ティーカップを使っている


何処からともなく“懐かしい顔”が入場する


「邪魔するぜ」


「椅子座っていい?」


「もちろん」


アモルファスが椅子の近くに突っ立っている


アラルはおずおずと椅子に座った


「僕も紅茶を貰おう」


居心地が悪いのだろう顔がひくついている


「今日はアールグレイだ」


アラルは紅茶の香りを嗅ぎチビチビ飲んだ


「キミはやっと紅茶の真価を理解したみたいだ」


「そう...みたいだね」


歯切れの悪い返答だった


「この時空テラスは閑静でつまらない」


唐突にアラルがそんなことを口にした


「そう、どうして?」


アラルは返答しない


「君は昔を覚えているかい?」


「当たり前だ」


「あれから僕の気持ちに変化はない」


アラルは震声でゆっくりと声にした


「僕がどう見える?」


死神は新聞を読む手を止めてアラルを見やった


アラルは最早人間の形を保ってていなかった


斑模様


体全体が沸騰しているみたいで不安定な形


不完全な無定形の神


アラル


死神はいつの間にか新聞を手放し椅子から立ち上がっていた


神域〔戦場〕


民家が燃え、黒く燃え焦げた物体があちこちに転がっている


「少し聞いてくれるかい?」


死神は口を噤み頷いた


「ここは僕の故郷、大国との戦争に巻き込まれた悲運の村」


「僕はこの村を救いたくて神になった

でも神になっても願いは叶わない、僕は自ら村を守ったが無意味だった

村はこのまま戦争に巻き込まれて遂には地図から消えるそうだ」


「僕は焦った、この世界の時間の法則は俗世とは違う

でも、いずれ起こる未来に焦らずにはいられなかった」


「だから僕はあちこちで露台破りを行い最強の神になった

でも、真の神になる為には神を皆殺しにしなければいけない」


アラルは両腕を広げる


「見ての通り僕は不定形になる寸前、保っているのも精一杯だ」


アラルは溜息をはき、目に絶望を宿す


「僕の話はここ迄、それじゃ本題に入ろうぜ」


アラルが言い終えた瞬間死神の身体はどこまでも飛んでいく


死神は倒壊した見る影もない家にぶつかった


死神は苦渋の顔をしよろよろと立ち上がる


右腕を出し手を開く


死神鎌


(勝つ方法は一つ“シ”を斬ることだけ)


上空からアラルが墜ちてくる


アラルは綺麗に着地をしヨロヨロと起き上がる


「僕は真の神に真の神に」


足取りが覚束ずよろめいている


「真の神は只の偶像だ、もうやめよう」


アラルは悲痛の叫び声をあげ始めた


耳がキーンと耳鳴りがする


人型の形がみるみる崩れていく


(今が好機だ)


死神鎌を構え


たが、どうしても踏み出せない


(本当のシは忘れられた時、史が消えたとき)


(“史”を斬れば彼との思い出もなくなってしまう)


アラルは正気に戻った様で人型の形を既で維持し呼吸を整えていた


「何で死神鎌を使わなかったんだい?

君にかかればチャンスは幾度となくあっただろう」


「君に使う価値はない」


アラルは面食らった表情をした


「何でこの期に及んでそれを言うんだ!」


アラルは声を荒らげた


「最初に出会った時もそう言って!僕を馬鹿にしているのかい!」


アラルは悔しさに顔を歪めて叫んだ


「もう終わらそう」


腕は斑模様が大きく浮き出ている


そして腕は黒く変色し刃物の形へと変貌した


お互いが動き出す


双方がぶつかり抱き合う形でアラルの刃が死神を貫通した


「何で?武器を捨てたの?」


アラルは戸惑いが隠せず震声を発した


死神は静かに口を開く


「俺はキミを友人だと思っていた

かけがいのない価値をつけられない最高の友じん

死神鎌はキミには向かないよ」


「僕は、僕は!!」


アラルは喚いた


「ごめん、ごめん、だから死なないでくれ!」


アラルは友神を抱きかかえながら何度も謝った


「フフ...それはキミの悪い所だ、俺は死なないよ」


死神は微笑んだ


「ごめん、ごめんよ」


アラルは信じていない様子で泣き喚いている


「キミの体を見てごらんよ」


アラルの体は完全に元に戻っていた


「何で?僕は元に戻っているの!」


死神は泣きじゃくる友を見て笑う


「キミのしがらみを斬っただけ」


それでもまだ謝り続ける友を尻目に死神は虚空を見上げたのだった



あれから数日が経つ


男神は足を組みコーヒー片手に新聞を読んでいる


僕は非顕現を解除した


「邪魔するぞ」


僕は椅子の辺りまで進み


「コーヒーを貰おう」


と言った


「今日はブルーマウンテンだ」


そう応えるのは死神、死を理解する良き友神だ


─ローシンフォニー 《完》

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