カイコン
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神
原初の塔の最上層に存在する
神を殺せば願いが叶うと伝えられてきた
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白一色の部屋
フランス窓の正面には柱があり柱の上には頬杖をつき胡座をかく死神がいる
「ようこそ」
声の先には挑戦者
前衛には前と変わらない服装のお嬢様
髪はボサボサの我儘な女勇者
アリス
後衛にはホーバーグを着たアンデッド
マイク
全身甲冑のアンデッド
ライアン
「久しぶりね、ここであんたを殺る」
アリスの姿を見て死神は呆れたように口を開いた
ゆっくりと死神は立ち上がる
「落ちぶれたものだ」
アリスは口を歪め、聖剣を構えた
光り輝く聖剣は勇者に共鳴する
刹那、アリスの剣先は死神の神核(神の心臓)を捉える
剣は神核に届かず死神の右手を貫いた
「ふん」
死神は鼻で笑う
アリスはそれを見てニヤリと笑う
瞬間右と左から後衛のアンデッドの斬撃が死神を捉える
死神は聖剣を手放し左手の鎖鎌をアンデッドの胴体に巻き付け振り払った
アンデッドは地面に叩きつけられ破裂
アリスは背中を打ち血を吐く
「あんだどうして分かったの?」
死神は哀れんだ
「前々からキミたちの動向は鳥神の新聞を通して見ていた」
アリスは憤慨し顔に血が上っている
「嘘をつかないで!」
「鳥神は対価を払えば色々と情報を仕入れてくれる」
死神はかったるそうに答えた
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鳥神
ペストマスクをつけた情報屋〈鳥籠) 総統
鳥の旦那とも呼ばれている
鳥伝来新聞を発刊している
そして希望によっては特殊新聞も発刊しており
コーヒーを染み込ませれば情報が浮き出る新聞もあるそうだ
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「勇者は究極の生者であり死神にとっての大敵だ
仲間を死者に、究極の生者である自身に注目を浴びせることで
感知をかいくぐり闇討ちする」
死神は憐れだと見下した
「死神につまらない小細工が通用するはずがないだろう?」
「勝てない相手に小細工をして何が悪いの!」
アリスは葛藤の中この答えを出したのかもしれない
アリスは死神に剣を振るう
剣は鎖に阻まれ死神の剣はアリスを貫いた
「...死神鎌使わないのね」
無念の表情を浮かべ口にする
「君らに使う価値はない」
続けて死神は答える
「仲間を意図的にアンデッドにする
アンデッドになる覚悟もない自己保身、勇者失格だ」
「安心しろ死にはしない」
死神は穏やかに諭した
アリスは鼻で笑い澄み切った表情をした
嫌な予感がした死神は咄嗟に剣を抜きアリスは墜落する
肌は灰色に変色、髪は白く老婆のよう生気のないアンデッド
アリス
アリスの手は反射的に聖剣を手放した
死神はゆっくりと地面に降り立ち右腕を左に伸ばす
死神鎌
「それがキミの答え、希望を失ったものに安らかな死あれ」
残葬
死神鎌は向かってくるアリスの首を確実に捉えた
斬った跡は残らずにアリスは静かに倒れ込み消えていく
「原初の塔では何も残らない」
アリスがいた所を死神は見つめて悲痛な面持ちで口にした
顔に悔恨の色が表れる
「邪魔するぞ」
何処からともなくアラルが入場する
「ランキング一位をラクラク倒すなんて、期待の新星だったんだぜ?」
死神は椅子まで歩きゆったりと座った
「塔のランキングそのものには興味はない」
死神はふと思い出し口にする
「キミもランキングに乗ってた気がする」
「露台破りの件で散々挑まれたからね」
アラルは上機嫌に答えたのだった