シンクロローニシティ
死神は一人読書を嗜んでいた
“言葉にせずとも通じ合う”
(懐古の記憶だと言うのに忘れられない)
一節を見て思い耽っていると乱入者が現れた
全身灰色の斑模様の人型
顔の辺りには螺旋模様
強い意志を持った無定形の神
アモルファス
(昨今の騒動で無秩序になった無定形がここに入り込んだ)
(無定形に只の攻撃は効かない)
死神は掴むように手を開くと純黒の大鎌が現れた
口金部には白字で“死”と描かれた歯車がついている
死神鎌
(面倒だお帰り願おう)
峰打ち
死神は鎌を峰側に振るい空を斬った
事象(死の恐怖)を増幅させる
アモルファスは何事もなく居座っている
(怖気づきもしねぇ)
無定形の神は右腕を伸ばした
刹那分離した右腕が飛んでくる
頬を掠め取る
左
右
上
続々と飛来してくる腕をギリギリで避ける
死神は死ある場所の把握に長けるのだ
(君をそこまで駆り立てるのは何なんだ?)
(荒手段だが“シ”を斬ろう)
死神の目にある物が映る
死神は切先を向け鎌を振るった
─
「邪魔するぞ」
「何...居るんだ?」
アラルは噛みそうになった
死神はアモルファスの首元にチラと覗かせたロケットペンダントを見た
「言葉にせずとも通じ合う」
「へ?どういう意味だい?」
肩を揺さぶりしつこく聞いてくる
「使命を斬ったんだ、あとシンクロローニシティ」
死神は気乗りせずにそう答えた