B→F a ブレンド
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時空テラス静粛
真は無音の空間なり
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戯れ終えた死神は地面へと着地した
そこへ何処からともなく男が入場する
革靴に全身小格子柄のスーツ、ヘビ柄のネクタイ
後れ毛金髪ショートにタレ目美形
好奇心旺盛な男
アラル
「近頃輩が多いね?」
死神は愛鳥に合図を送った
「困ったものだ」
愛鳥は新聞についているリングを口に挟み持ってくる
「コーヒーを貰おう」
アラルは腰を据えて話したいらしい
「今日はマンデリンだ」
─
アラルはコーヒーを飲んだ
口に合わないようで酷く苦々しい顔をした
死神は足を組みコーヒー片手に新聞を読んでいる
「何用で訪れた?」
新聞を読む手が一瞬止まった
アラルはもう一度コーヒーを飲み一息つく
ソーサーにカップを置いた
音は響かず静かである
「この時空テラスは閑静で心地いい」
アラルは数秒間の沈黙のあと口を開いた
「昨今付近で王道入神である八堂が露台(テラスの意)破りを敢行している」
死神はコーヒーカップを前後に振り故意に新聞紙にコーヒーをこぼす
「そのようだ」
アラルは言葉が出ないようで数秒放心していた
「君は真の神に昇進したくないの?」
「ふん」
死神は鼻で笑いつまらなそうに新聞を読み進めている
アラルは頬を掻く
「僕は帰還するよ」
アラルは立ち上がり入場扉へと向かう
扉の真ん前まで迫ったところで佇立した
「考えといてくれよ」
そう言い残して静かに退場した