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愛を育てる時間(末っ子3)  作者: 夏目 碧央
7/10

納得出来ない(テツヤ目線)

 レイジは目の前にいるのに、いつだって俺の事を見守っていてくれるのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるのだろう。さっき、もうちょっとでレイジの所へたどり着く所だったのに、ドアが開いて、兄さん達がレイジの上に乗っかって、俺はカズキに引っ張られた。腕がちぎれそうに痛かったけれど、それ以上に胸が痛かった。

 今まで、当たり前のようにレイジにくっついていた。レイジも嫌がらなかったし、誰もそれを咎めなかった。仲の良い友達、もしくは兄弟のように、人前でもどこでも、俺はレイジに寄りかかったり抱きついたりしていた。おんぶしたり、されたり。それがどうして急にダメな事になったのだろう。そりゃあ、アイドルに恋愛は御法度で、隠さなきゃならないのは分かってる。でも、今まで何年もしてきた事と、同じ事をしてはいけないなんて、納得出来ない。

 けど、ダメなんだよな。ファンの子達がそれを嫌がるならば。ファンの子達、嫌がっているのか?

 俺は今まで、あまりネットの評判を気にしないようにしていた。動画なども、うちのグループ関連の物は観ないようにしていた。この間うっかり観てしまったら、俺の顔に淫らな体がくっつけてあって、ショックを受けてしまった。やっぱり観ない方がよかったと思った。だが、もう一度改めて、色々と観てみる事にした。たくさんあるという、俺とレイジの熱愛動画を。

「うわぁ、すごいな。」

家で独り、動画を観た。俺とレイジの動画を見始めたら、次から次へとお勧め動画が出て来た。多少ねつ造もあったが、ほとんどが本物の俺たちの写真をつなげたもので、本物の俺たちの映像だった。それなのに、何だか美しい映画でも見せられているようで、思わず照れた。確かにちょっと、これだけ集められると認めざるを得ない。俺たちは恋人同士のように見える、かもしれない。

 だが、否定的な動画はほとんどなかった。SNSでも検索してみたけれど、どちらかと言うとファンの子達は、俺たちを祝福してくれていた。二人が幸せでいて欲しいとか、そういう言葉が大半だった。外国語のものも含めて。

 じゃあ、何の為に俺は我慢しているのだろう。カミングアウトがまずいなら、友達同士だって言い張るから、今まで通りにさせて欲しい。

 と言うわけで、俺はマネージャーさんにそれとなく言ってみた。マネージャーさんは何人かいて、イッセイさんではなく、もう少し下の人に話した。でも、それじゃあ埒が明かないらしい。イッセイさんに話すように言われた。

「イッセイさん、お話があります。」

「ん?どうしたテツヤ。」

「俺とレイジが、その、離れていないといけない理由が分かりません。」

俺がそう言うと、イッセイさんはちょっと黙って俺を見た。そして、フーッと短く溜息をついた。

「そうだな。あまり、理屈では説明できないな。」

「え?」

「悪い事をしているわけでもない。ファンを裏切るような事をしているわけでもない。二人の噂でグループの人気が下がるわけでもない。」

イッセイさんは腕組みをして、そう言った。俺には何を言われているのかさっぱり分からない。

「えっと、じゃあ、どうして離れていないといけないんですか?俺がレイジの家に行ってはいけない理由は何ですか?」

俺が言うと、イッセイさんはお手上げとばかりに両手を挙げて首を振った。

「何だかな。とにかく火消し中なんだよ。もうちょっとしたら世間様も落ち着くだろうから、そうしたらまた、今まで通りに戻っていいから。」

「もうちょっとって、どのくらいですか?」

俺は尚も食い下がる。

「それは誰にも分からない。」

イッセイさんはそう言うと、どこかへ言ってしまった。ずるい。

 レイジを目で探す。いた。カズキやシン兄さんと仲良く話している。ああ、あいつはどんどん遠くへ行ってしまう。もっと近くに行きたい。二人きりになりたい。そして・・・また、イイコトしたい。俺はどうかしてしまった。あの夜の事をいつも思い出してしまう。あのまま、二度と泊まりに行かれないなんて思いもしなかった。すぐにまた、あんな事やこんな事もしてもらえると思っていたのに。アイドルなんて辞めてしまいたい。好きな人と、ほんの少し触れあう事さえ許されないなんて。


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