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愛を育てる時間(末っ子3)  作者: 夏目 碧央
2/10

まぶしすぎる

 俺とテツヤ兄さんは、7人組のボーイズアイドルグループに所属している。デビューしてそろそろ8年になる。うちの芸能事務所では、年上の人を「兄さん」と呼ぶ慣習がある。俺はグループ内最年少なので、メンバーを○○兄さんと呼ぶ。

 二つ年上のテツヤ兄さんは、俺の想い人だ。テツヤ兄さんは人形よりも綺麗な顔をしているくせに、笑うとこの上なく可愛い。人一倍はしゃぐくせに、人一倍繊細で傷つきやすい。危なっかしくて放っておけない。だが、天然キャラでもあり、何を考えているのか全く読めない人だった。

 テツヤ兄さんが、他のメンバーに内緒でうちに泊まりに来ては俺にくっついて眠る日々が続き、一人悶々とした日々を送っていた俺。しかし、メンバーのカズキ兄さんの助言もあり、またヤキモチ作戦などが功を奏し、ようやくテツヤ兄さんが俺の事を「親友」でも「弟」でもない、特別な存在だと認めてくれた。それから数ヶ月が経ったところである。


 「おう、レイジ。幸せそうだな。」

会社へ行くと、カズキ兄さんがニヤニヤしながらそう言ってきた。

「え、そう?」

ポーカーフェイスを装おうとしても、カズキ兄さんのにやけた顔を見ていたら、ついこっちもにやけそうになる。だって、本当に幸せだからさ。

「上手くいってるのか、テツヤと。」

「うん、まあ。」

「へえ、良かったな。」

「ありがと。」

カズキ兄さんは、俺の背中をポンと強く叩いて、ニヤニヤしたまま俺から離れた。俺とテツヤ兄さんの仲を知っているのは、カズキ兄さんだけなのだ。他の兄さん達には悟られないようにしないといけない。リーダーのタケル兄さんに知られたら、絶対に怒られる。メンバーの間で恋愛などあり得ないとか、何とか言って。でも、タケル兄さんは絶対に一番年長のシン兄さんの事が好きだと思うのだ。いっそ二人が上手くいってくれたら、俺たちの事も見逃してもらえるのにな。

 今日の仕事は雑誌の撮影から始まる。もちろんそれだけでは終わらず、ダンスの練習もあって、最後にはテレビの収録もある。毎日あちこちに連れて行かれる俺たち。

 雑誌の撮影の為に、黒いピカピカした衣装を着て、メイクを施された。やってくるメンバーは皆寝ぼけ眼だったのに、ほどなくしてビシッと決まったアイドルになっていく。

「おう、今日もイケメンだな、レイジ。」

シン兄さんがそう言いながら、俺のボディにパンチをしてくる。この人は一番年長なのに、まるで中学生のように俺に絡んでくる。初めの頃はそれがとてもありがたかった。まだ子供の俺に合わせて、楽しくしてくれてるんだよなーと思っていたが、10年経っても変わらないとはどういう事だ。でも、俺も一緒になってパンチを繰り出す。

「あははは、またやってるよ。」

テツヤ兄さんがメイクを終えてやってきて、俺たちの事を見て笑った。ふと見ると、度肝を抜かれた。毎度の事だが、テツヤ兄さんは美しすぎる。ちょっとパーマのかかった髪をオイルで濡れたように輝かせ、目元にもきらきら光る白いものを塗って、この人はメイクなんかしなくても美しいけれども、とにかくきらきらしていてまぶしい。

「テツヤ、お前もやるか。かかって来い!」

シン兄さんはふざけてそんな事を言い、テツヤ兄さんの胴にチョップを連打した。テツヤ兄さんはくすぐったそうに体をくねらせて笑っている。ああ、可愛い。昨日のテツヤ兄さんも、身をよじらせて・・・おっと、今変な事を考えるのはナシだ。体が反応してしまう。

 「はい、撮影お願いしまーす!」

スタッフに言われて、俺たちは整列した。写真を撮る時、お互いの肩に腕を回したりしながら、色々なポーズを取る。テツヤ兄さんはよく、俺の隣にいて、俺の肩に手を置く。ファンの間でも、俺とテツヤ兄さんの二人がお似合いだ、という話題が出ているらしい。そういう事もあって、わざわざ俺たちが隣同士に並ばされる事も多い。

 だが、それが裏目に出るという事もあるのだ。まさか、こんな事になるとは思いもしなかった。


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