4話 スライムとの激闘
街に入るための手続きを終えて、冒険者ギルドに向かう途中、大通りを歩いていると露店がチラホラ並んでいた。
「建物は現代の地球より進んでないけど、街のシステム的にはほとんど変わりがないもんだな。とことんファンタジーって感じがする。冒険者ギルドに実際に加入するとなると気持ちは上がってくるよなぁ」
そんなことを考えながら通りを歩いてしばらくすると広場に出た。中心には割と大きな建物が建っていた。剣や槍を装備した大柄の男達が、モンスターの素材を運ながら出入りしているところを見ると、そこが冒険者ギルドなのだろう。
「うぉっ、結構ガラ悪そうな奴多いな。まぁこれぞ冒険者って感じがしなくも無いけど……ってかちょっと待て。よくある冒険者ギルドのテンプレ入ったらまずくね?俺のステータスって…」
そう俺のステータスはほぼ全てが1なのだ。攻撃力,防御力どちらも軒並み1なのである。そこにある程度ステータスのついた冒険者の1撃なんて食らったら命に関わるのだ。
という事はこれほぼ詰んだっぽくね?まぁテンプレが起こる確証はないけど、起こったらほぼご臨終。そして滞在延長は所持金的に無理。どうすんのこれ。
「ヘルプさん、この近くに俺でも勝てる敵とか居る?」
『そうですね、ステータスがもやしですので勝てるのはスライムくらいでしょうか。恐らく街から少し離れたところで見かけるでしょう』
うん。なんとなくは予想してたよ。最弱の奴にしか勝てないんじゃないかって。でもねぇ…もうちょい何とかならないもんかなぁ。
「仕方ない、大人しくレベル上げに行くか」
10日という制限時間内に冒険者ギルドのテンプレを凌げるだけのレベルになる為のスライム狩りへと出かけるのであった。
街から出て数十分経ったころ、ついにスライムさんと邂逅した。初めてみるスライムは緑色のポヨヨンとした感じのものであった。
「なんかスライムのイメージって青だったんだけどなぁ…緑色ってなんかちょっと嫌だな。普通に気持ち悪いわ」
初めて出会ったスライムに不快感を覚えながらもインベントリにあったサディエルから貰った剣を構えた。
「それじゃまぁさっさと倒して、経験値になってもらいましょうかね。そらっ!」
走ってスライムとの距離を一気に詰め、中段に構えた剣を振り下ろした。剣はきっちりスライムに命中した。某アナウンサーも声を上げる程のど真ん中への攻撃。普通に考えれば倒せていただろう、普通であればだが。
そうスライムは普通に動いていた。ポヨヨンポヨヨンと動き続けている。そんな状況に首を傾げてしまった。
「マジかよ、STR1ってここまでか!」
あまりの衝撃についスライムから、目を離しているとスライムから体当たりを喰らってしまう。
「ボヘェェェェ」
痛恨の一撃!とエフェクトが出るような入り方をした。体感的にはHPが半分持っていかれたような感覚がする。VIT1の脅威度ハンパネェ。
「あかんあかん。攻撃もらうだけでこんなんになんの?こっちの攻撃も入ってるか微妙だし」
実際にはダメージは入ってるのだがあまりにも低いのである。スライムの体力自体は100程度しか無いのだが、いかんせん攻撃力が低すぎた。
そして攻撃と回避の繰り返しを30回くらい繰り返したころだろうか、息が切れてきた。
「はぁ、はぁ、どんだけタフなんだよ。こっちのスタミナが先に切れるとか、異世界マジでスパルタじゃねぇか」(自分のステータスが低いだけ)
それからさらに攻防の応酬は続き、50回くらい攻撃を当ててようやくスライムの動きが大きく鈍った。
「明らかに動きが鈍ったな。これで終われよ!」
渾身の一振りが入った。するとスライムに異変が起こった。ポヨポヨしていた体が形を保てなくなりドロッと溶けて無くなったのだ。
「マジで疲れたわ。スライムでこれとか先が思いやられるな…」
スライム相手に1時間もの激闘をし、その場に大の字で倒れた。しかしレベルアップした様なアイコンやエフェクトは無かった。ステータスを確認しても、転生直後と何も変わっていなかった。
それから戦闘にもなれてスライム1体相手に10分程度で済む様にはなった。それでも10分かかるとは本当に嘆かわしい限りであるが。
5体目を倒した時にレベルアップした。脳内にアナウンスが流れたのですぐにわかった。その時俺は歓喜に震えたのだった。
「ようやくこの地獄から解放された!!」
冒険者ギルドは出てきませんでした。ギルド回を楽しみにしていた方には裏切ってしまい申し訳ありませんでした。
あの流れで冒険者ギルドに入っていくとありきたりかなぁと思い急遽路線変更しました。
そしてこれからは主人公以外も出てきます。設定等を考える為投稿ペースは普段より遅くなってしまいます。1週間はかからないように頑張るつもりですので、応援の方よろしくお願いします。