ギフト
「あら?トモくん!!この前は野草積みありがとね!」
「ほんと助かったぞ!坊主!!」
「おう!いつでも頼ってくれよな!」
今声をかけてくれたのは宿屋兼道具屋の老夫婦。ウィンリィさんとカドックさんだ。この前、高齢の二人の代わりに野草積みや薬に役立つ素材集めを行った。
「食ってくか!トモ!今ならちょっとだけ増量してやるぞ!」
「そこはタダにしてくれよな、おっちゃん。」
この人は村に一つしかない料理屋の亭主のドルさん。この前お店の修繕を手伝ってからやたら飯を食べさせようとしてくれる気前のいいおっちゃんだ。ただ、いかんせん味が大味なんだよな。量が多いからそこは若者にはうれしいんだけどね。
「小僧、俺が作ってやった籠手はどうだ?壊してねーだろな?あ?おい?」
「ガーフさん、そんなに凄んではトモくんも怖かってしまいますよ。」
最初に声をかけてきた強面の坊主手拭いおじさんがガーフさん。この村の鍛冶屋で武具屋でもある。モンスターと戦うための武具を作ってくれている村にとっては欠かせない人物だ。顔が怖いのだけが難点なんだよな。
そして、ガーフを諌めてる七三が似合う男性がアースさんだ。この村の市役所的なところで村での問題に当たってるやり手の村長の息子さん。やり手とは言ったが村の平均年齢が高い分ちょっとしたことで呼び出されたり、一時間以上グチに付き合わされたりとかなりの苦労人。
「籠手は大丈夫だ!あれめっちゃ軽くて使いやすいよ!ほんと天才だなおやじは!」
「おうおう!わかってきたじゃねぇーか!格安でお前には作ってやるからな!ガハハハハ!」
「ガーフさん、そんなこと言ってまた後が大変ですよ、全く。」
ガーフちょろい、ドルさんよりちょろくて扱いやすいぜ。でもほんとにガーフの作ってくれた籠手のおかげで身体能力をフルに使えるから助かっている。これがないとスライム殴れないからな。
「トモさん、本当にいつも村の問題ごとを解決してくれて助かります。モンスターの討伐などは王都にも頼んでいるのですがなかなか辺境のこの村までは手が届かないらしく。」
「いいっていいって!ちゃんと報酬も出るんだから!またなんかあったら何でも言ってくれ!」
アースさんのだけでは手に負えない依頼もくるらしく、そういった依頼を解決していくうちに村の人と接することが増えて、みんなと打ち解けることができたのでむしろ感謝したいぐらいだ。
家に向かう道中、村の人達から今朝、鶏が産んだ卵や果物などたくさんのお裾分けをもらい帰路に着く。
村の人達いいひとすぎだろ!?この暖かさなに?日本のばあちゃん家おもいだすんだけど!!日常でこれって異世界最高すぎんか!!
「おーい!」
この透き通った声、脳に響き渡る
うーんんん麗しのアリーシャ!!
「帰り一緒になれたね!へへへ」
可愛い!かわいい!がわいいいぃい!!
ぐ!くそ!チェンソーの人みたいになってしまった!
「あ!たくさんもらったんだね!トモはみんなから好かれてるよ!最初は村のみんなと仲良くなれるか心配だったけどほんとによかったよ!」
「村のみんながいい人達だったからだよ!それにアリーシャ達家族がいるから、誰かに嫌われたってへっちゃらよ!」
たとえ村のみんなに嫌われたってこの人達がいてくれれば俺は大丈夫だ。あのクソ生意気なカイウスはちょっと癪に触るが大切な家族だから俺はこの人たちを絶対守るし共に生きていきたい。
まあ村の人達いい人すぎてそんな心配も杞憂だったがな。
「トモが頑張って働いてくれてるおかげで私たちは前よりたくさん美味しいものたべれるようになったよ!ありがとね!」
「こちらこそ!アリーシャの作るシチューは最高だからな!今日の夕飯も楽しみだ!」
「任して!今日も美味しい更新しちゃうんだからね!あ!ギフトの調子はどう?」
「ぐっ!?」
俺がここにきてから1ヶ月たった。
あの日、魔法石で自分が魔法を使えないと知って死にたくなったが魔力が高ければ高いほど身体能力が比例して強くなる。なぜなら魔力は生命力。生命力が高い俺は常人よりもスピード、パワーが桁違いらしい。転生者への神からのプレゼントなのかもしれない。そしてギフトこれについて説明するとしよう。時は遡る______
俺が転生してから数日後_____
俺は今、虫に追われていた。
そう、ドデカイ虫に。
「キモいいい!!なんだこの虫は!アリーシャ助けて!!」
「がんばれ!トモ!!」
うわあああああ!!アリーシャひどい!!
たしかに俺が村の外に出てみたい!モンスター倒したいって言ったけどさ!!こいつらはキモすぎる!!リアルモンハンのラン◯スタだよぉ!リアルだとほんとにキモい!!足やばい!羽がきもい!
「トモ〜、その子達は動きがすごく遅いから簡単に倒せるんだよ!」
とは言うが!こいつキモくて触りたくないんだよ!
でも仕方ない!ぶん殴る!右ストレートでぶっ飛ばす!
「うおおお!くらえ!!」
バゴンッッ!?右ストレートはランゴスタもどきの体を軽く貫通し鈍い音と共に体液を撒き散らす。
「うおっ!?」
確かに本気で殴ったけど、こんなに軽く体を貫くとは。それに殴ったときの音じゃないだろこれ、鉄を貫く時の音だよこれ。
「おおお!!トモすごいよ!!普通蟲タイプのモンスターは硬いから関節を攻撃するんだけど甲羅ごと貫いちゃうなんて!!」
「ありがと‥‥でもどうしよう‥体ベトベトで辛いよぉ‥‥泣きそう」
「うん!普通は武器で攻撃するからね!」
「それ!村出る時に言ってよおお」
臭いし!なんかねばねばしてて嫌だ!!しかもちょっとピクピクまだこいつ動いてるよキモいよお!
左手で掴みアリーシャのいない方に投げ飛ばす。ビクビク手足が痙攣していたがやがて動かなくなり絶命した。
「お疲れ様!はい!」
アリーシャが駆け寄ってきて笑顔でハンカチを渡してくれる。
こんな汚れた俺にハンカチを差し向けてくれる天使、いや女神結婚しよう。
「武器絶対買うよ、村帰ったら絶対買う」
「それならいい武具屋があるから紹介するね!でもトモにもギフトがあればいいのにね!」
ぎふと?‥‥‥ギフト!?
そうだ神がなんか特別な限定ギフトをあげるって言ってたよ!!それだ!絶対チート能力の奴だ!
「アリーシャ!ギフト教えて!!」
「いいよ!ギフトっていうのはね!この世界の神様が私達人類にくれた贈り物!そうギフトだよ!」
「ギフトは一人一人違う能力があってね!持ってる人と持ってない人がいるんだよ!でも持ってなくても寝て起きたら突然ギフトを貰っていて特殊な能力に目覚めたりするの!」
「なるほど、でも能力ってどんな感じのやつなの?」
「見せてあげる!トモこっちきて!はい!」
近づいた俺の手を握り、力を込め始める。
可愛い、手やわらかい、ずっと握っていたい、でもお別れの時、離れる右手、いまサヨナラのときとふざけてる場合じゃないな。アリーシャの話を聞かないと。
「アリーシャどういうことなの?」
「ふふふ!手あったかくない?」
ドヤ顔で胸をはるアリーシャはある意味凶暴すぎてずっとみてたい。
「あったかいけど‥‥あれ?」
ずっとあったかい、離れて時間経つのにカイロ持ってるみたいにあったかいぞこれ。
「そう!私のギフトは【キープ】!何かを保持したりする力だよ!私の温もりを保持したの!」
すご!魔法とは全然違う力なんだなギフトは。というか光属性でギフト持ちとかこの子主人公すぎない??でも、この温もりずっと続くの?‥‥やばいよからぬ事しか考えつかんよ
「解除。結構つかれるんだよねこれ。」
オーマイガ、、オーマイガ!!
「じゃあやってみようか!トモ!」
おし、アリーシャにやり方聞いても絶対根性論しか出ないからなんとかするしかないな。魔力の扱い方もままならないが自分の中で魔力とは違う何かが流れているのに最近気づいた。きっとこれを使うのだろう、だが今までなにもだせなかった。
きっとこの力は何かに向けて使うタイプなんだと思う、そしてここにはちょうどよくモンスターがいる。出てこいランゴスタもどき!
ガサガサっとちょうどよく茂みが騒がしくなる!
来る!!茂みから飛び出したのはなんと!!
ウサギ!!かわ!かわいい!きゃわいい!ニンジンあげたい!!
「あ!ウサモンだ!!」
可愛いけど仕方ない!君が俺のチートギフトの最初の体験者だ!!感謝したまえ!!うおおおお!
体の底から溢れ出す鼓動!全てを壊す黒い衝動!現れしは終末の訪れ!
「くらえええ!!」
ウサモンから溢れ出す光、その光が俺の方に近付き、体に取り込まれる。
「え?‥‥うん?‥終わり?」
なんかちょっと体の疲れが取れた気がする?え?なにこれ?エナジードリンク飲んだの俺?まさか?俺のギフトって?
「吸収??」
頭の中にあの神の声が突然響く
ギフト【吸収】を授ける。がんばって生き残るんだよ!期待してるね!
え?まって?吸収?エナジードリンク一本分ぐらいしか吸収できてないんだけど?弱すぎん?俺のチートギフトは‥‥
「やっぱ俺YOEEEEEEEEE系かよおおおおおおおお!!!!???」