【3-1】天罪國罪
罪状分類の整合性を重視した註釈を心掛けました。
《國中に成り出でむ天の益人等が過ち犯しけむ種種の罪事は》
国内の威勢ある人達が犯した色々な罪は
《天つ罪と》
《畔放 溝埋 樋放 頻播》
天岩戸事件の原因となった須佐之男命の乱行。
田畑を損壊する行為。
《串刺 生剥 逆剥 屎戸》
同じく天岩戸事件の原因となった須佐之男命の蛮行。
馬の生皮を剥いで機織屋に放り込み、神殿に汚物を撒き散らす等。
家畜への危害、生産施設や礼拝施設を汚損する行為。
《許許太久の罪を天津罪と宣り別けて》
これだけの罪と区別して
《国津罪と》
《生膚断 死膚断 白人 胡久美》
致傷罪、致死罪、暴行罪、強盗罪
《己が母犯せる罪 己が子犯せる罪
母と子と犯せる罪 子と母と犯せる罪 畜犯せる罪》
近親相姦罪、異種交姦罪
仲哀記に詳しい。
《昆虫の災 高津神の災 高津鳥の災》
罪でなく災いである点に注意。
災害の誘引や対策の放置に対する罪と考えられる。
《畜仆し蠱物為る罪》
私的な呪術や呪詛の罪。
《許許太久の罪出でむ》
これだけの罪が発生した
【串刺】
他人の土地に串を立て自分の土地であると主張したする説。
皮剥ぎの前に行った、馬への虐待説。
機織女の強殺隠喩説などがある。
【膚断】
皮膚が断たれ流血する事態。
【白人】
雅楽用語の調べに同じ。
人を打つ、弾く等して音を上げさせる行為。
【胡久美】
扱身、扱実。
扱き下ろして身包みを剥ぐ行為。
追い剥ぎの事。
【昆虫】
蛇や百足などの毒虫や田畑を荒らす害虫。
煙で燻す虫追いなどの対策行事が各地に見られる。
勿体ないお化けや妖怪垢舐めのような、虫の集る不衛生を忌む教義を含んだ逸話も見られる。
【高津神 高津鳥】
落雷や鳥の運ぶ伝染病(七草粥歌)と考えられている。
鷹が飛ぶと害虫を駆除する益鳥が逃げてしまうとも(小鳥遊)
白人胡久美は一般に身体障碍者や病気の事と解釈されている。
「ホツマツタヱ」では事件に関係した人名とされている。
「告白、独白」のように「申す」の意味があり「納言」役職を無視した越権行為(越訴など)の事である可能性もある。
白丁との関連については言及を差し控える。
天岩戸や仲哀記のように、他の中臣史書からの出典で補強していきたいところです。