【6】祓戸四神
祓戸大神は伊邪那岐が黄泉から戻り身漱した時に生まれた神々とされます。
大祓詞には四柱の神名が挙がるので祓戸四柱大神と呼ばれます。
しかし、速開都比売以外は記紀に見られないので比定論争があり、解釈手腕の魅せ所となります。
本居宣長の場合、直毘霊思想の根源となったとも言えるでしょう。
《此く聞こし食してば》
このように聞き入れられたならば
《罪と云ふ 罪は在らじと》
あらゆる罪が無くなるように
《科戸の風の天の八重雲を》
《吹き放つ事の如く》
神風とされる東風が吹き出雲の軍勢を蹴散らしたように
《朝の御霧夕の御霧を》
《朝風夕風の吹き拂ふ事の如く》
(伊弉諾尊が吹いた息から生まれた志那都比古神が)
朝も夕も掛かる霧霞を吹き祓ったように
《大津邊に居る大船を》
《舳解き放ち艫解き放ちて》
《大海原に押し放つ事の如く》
大きな港に停泊している大きな船を
船首も船尾も離岸させて出港させるように
《彼方の繁木が本を》
《焼鎌の敏鎌以ちて》
《打ち掃ふ事の如く》
地平の彼方まで生い繁る木々を根本から
焼きを入れて研ぎ澄まされた鋭い鎌で
刈り払うように
【科戸】
東雲など東を意味する語、信濃(科野)。
東風は越、愛知の古名からコチ、アユとも読む。
コチは春、アユは夏の季語である為、行軍に適した季節を示すと考えられる。
【科】
科布の原料となる繊維質の植物。
科の木。篠木。
【志那都比古】
記紀に登場する風神。
御霧を吹き飛ばした記述は日本書紀による。
日本書紀一書では級長戸邊命。
ヒコもトベも首長を意味する語で「シナ」が語幹となる。