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コメントとか残してください。
一定の数のコメント過ぎたら続き書くと思います…。
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起きたのは朝十時半。平日にしては遅い時間だと思った。シーツを床に押しのけてドアを蹴り開ける。昨日の酔いはまだ醒めていない。酒が入ると乱暴になるのは俺の悪いクセだ。リビングに顔を出してみたが誰もいなかった。
妻は出かけているらしい。子供は、学校か。俺は溜息をついてソファーに腰を下ろした。さりげなくリモコンをスクリーンに向け電源を入れる。最近はなんでも便利になったものだ。俺が若かった頃の苦労を近頃の若者共に少しでも味わって欲しい。
チャンネルはニュース番組に合わせてあった。食卓に座り朝飯を食べながら家族が見る番組だからだ。ニュースキャスターは木本綾といった。聞いたことのない名前だ。新しく入った者だろうか。
放送中のニュースはバスジャックが起きたとの事だ。容疑者は藤田次郎とすでに特定済みだった。
冷蔵庫からコーラ瓶とチョコレートの板を取り出した。瞼の重い朝は糖分がベストだ。少なくとも、俺はそう思ってる。
リビングルームに戻ると、バスジャックの話は終わっていた。代わりに身に覚えのある写真が右上に映し出された。
これは、俺はじゃないか。
写りの悪い写真だ。いや、それどころではなく、何故、俺がニュース番組で放送されているのだろうか。
駄目だ、相当酒がまわっているな。これが現実ならどうして俺はマスコミに騒がれているのだ。
音量を上げた。キャスターの木本綾は書類を手に続けた。
「神奈川県出身、現在東京都目黒区にお住まいの今井和希さん(43)は昨日、殺人事件の容疑者として正式に警察から発表を受けたとの事です」
俺は飛び上がった。ソファーの角につま先をぶつけてしまったが、痛みは伝わってこない。
「どういうことだ」
思わず叫んでしまっや。
木本綾がページをめくり次の情報を喋ろうとしたとき、方耳にだけつけているイヤホンに手を当てて眉を顰めた。
「すいません。先ほどの情報に少し誤りがあった模様です。警察が特定している容疑者三人のなかの一人が今井和希さんだという発表でした」
「三人とは、どういうことですか?」
喋ったのは隣に座っていた中年辺りの男だ。
「動機があって殺害が可能な人物が寄寓にも三人、というのが捜査の結果です。事件のことはあまり情報が入ってません」
俺はただ、唖然として目を画面に向けていた。何をいっているんだコイツは。
すると中年男が、深く頷いた。
「僕も人を殺したことはあるけど、三人に絞られちゃあたまんないね。消去法を取られる」
「最近の警察は科学捜査が発達していますから証拠など集めるのが早いですからね」
後ろで物音がした。風で窓が開いた音だ。
その風は、小さな机に置かれた紙を地面に落とした。
「書置き 不倫相手に会いにいきます。遅くなるから晩御飯は子供達と外食にしてください 知美」
何かが、おかしい。