鉄は熱いうちに叩けと言う話。
男は女性に声をかけた。
それが短い物語の始まりだった。
バーで酒を飲む女に、男が声をかけることはよくある話だ。
口説き方が良かったのか、女は良いわよと返事をした。
その返事を聞いた男は会計を済ませ、女を連れて出る。
鉄は熱いうちに叩けと言うではないか。
早速の行動にまんざらでもなさそうな女はついて行く。
ホテルの一室からは女性と男性の声が聞こえてきた。
ホテルマンをしているものが聞きつけ、耳を澄ます。
すると女性のうめき声が聞こえる。
断続的に何かを叩き付けるような音も聞こえる。
こればまずいのではと考え、ホテルマンは上司へ相談、警察を呼ぶことになった。
警察は現場を確認後、応援を呼んだ。
迅速な対応にホテルのオーナーは感謝したが、警察は当然ですと答えた。
鉄は熱いうちに叩けと言うわけだ。
ホテルのオーナーがマスターキーと緊張感を握りしめ、金属のドアを叩く。
大丈夫ですか?の質問に対し怪訝そうに生返事で回答する男性。
女性の声は聞こえない。逆らえないのだろうか。
部屋の中を確認する旨を伝えると一応了承が出た。
マスターキーで鍵を解除した瞬間、なだれ込む警察。
男性は腕を取られ床に叩き伏せられる。
女性はシーツを羽織り保護された。
この一連の流れは、なんと、新聞に掲載されたのだ。
警察の誤認逮捕?
ホテル側の対応不備?
いや、政治家の不倫としてだった。
新聞社はまるで知っていたかのように対応を早めた。
鉄は熱いうちに叩くに限る。
人々は新聞を購入し、記事に目を通す。
政治家の信頼は失墜し、役職を辞任するに至った。
政党の迅速な判断は国民にどう映ったのだろうか。
結局、鉄は熱いうちに叩かなければいけないのだが。
男が一人、女を呼び出していた。
すらりと伸びた足に整ったスタイルの女だ。
面倒くさそうに登場した女に怒号が走る。
男はご立腹の様子。
一通り話を聞いた女はようやく口を開く。
「冷めた鉄を叩いても形は変わらない物よ。さようなら。」
女は背を向け、歩き去った。
他にも書いてるので、お暇でしたらよろしくお願いしますー。