表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の力、お借りしてます  作者: もなき
第1章 
8/47

神の思惑

 神様を見送ると、ご主人は「帰ろっか」と、アイテムボックスに馬ごと荷馬車をしまった。

 馬は生き物だから入らないのではと心配したが、ご主人は「大丈夫大丈夫」と言って躊躇なくアイテムボックスに入れる。


 ……入るんだな。

 という事は、まさか私も……いやいやいや、それは考えてはいけない。


 私は頭の中に浮かんだ悪い想像を必死にかき消した。ご主人はそんな私を不思議そうな顔で見るが、「いえいえいえ、何でもありません!」と私が言うと、ふふっと笑って使い魔の私共々、家までテレポートした。



「おう、イズミ。どうした? 今日は早いな」


 椅子を限界までリクライニングした状態で、バルが私達を出迎えてくれた。とても接客の態度とは思えないが、どうやら今日はすでに店じまいらしい。


 バルは筋肉質の大男でガラも悪いが、なぜか貴族のおば様方に人気があり、いつもその日の販売分を午前の内に売り切ってしまう。

 だからといってその分他の仕事を手伝うという考えはないらしく、午後はこうしてダラダラ過ごしている。


 ご主人の方も特にそれを気にした様子はない。「本来1日かけて売る分量を、バルさんの力量によって早く売り切っただけ。その後何をしようとバルさんの自由」といった感じだ。

 確かにこの男の性格を考えると、「午前中に与えられた分の仕事が終わったら、午後は他の仕事を手伝え」なんて言ったら、きっと午前で終わる分を1日かけてダラダラ売るようになるだろう。


 ……いずれにしてもこの男の思い通りというのが、なんとも納得がいかない。



「今日は神様から空間の力を頂いたので、テレポートで帰ってきました」

「またなんかもらったのか。随分太っ腹な神だな」


 ご主人は、バルに今日あった出来事を簡潔に伝えた。


「そうか。じゃあもっと売るのが楽になるな。俺の肩の荷も下りるって訳だ」


 そもそも最初からそんなに荷が乗ってないだろ。


「そうですね。私も明日からはもっと沢山持っていけそうなので、その分もっとワインを作りますね」

「おう、頑張れよ!」


 お前もな!



 それからというもの、工場にある分のワインを全て持って行けるようになったので、売上は10倍以上になった。今まで出荷に時間をかけていたご主人も、生産に時間を割けるようになり、さらに売上が増しているようだ。


「おい、嬢ちゃん。今日は1人5本まで買えるって本当かよ?」

「ええ。沢山買って沢山飲んでくださいね」


 アイテムボックスで沢山運べるようになった事で、行列はさらに長くなった。使い魔の私も整列を手伝っている。


「お客様は何本お買い上げですか?」

「もちろん5本だよ!」

「私も5本!」

「はーい、今日のビンテージワインの販売はあと1組までですよー」

「よっしゃ! 俺も買う!」

「はい、ここで今日の分締め切りまーす」


 いまや行列は王都付近まで伸びている。王宮に勤める騎士達も噂を聞きつけ、こっそり変装して並んでいると聞く。うちのビンテージワインの評判はついに王宮にまで届く程になった。



 ちなみに、神様の思惑がどうなったかというと……。


「ご主人、お疲れ様でした」

「今日も沢山売ったね。じゃあ、帰ろっか」

「はい!」


 ご主人はアイテムボックスに荷台だけ入れると、私とせーので馬に飛び乗り、颯爽と家に帰っていった。



 行きが楽になった分、帰りも楽をしたくてたまらなくなるだろうと踏んだ神様だったが……今まで行きも帰りも馬車で行っていた分、今は重い荷物も運ばなくていいし、1回分楽になったし、馬で駆ければ30分で戻って来られるしで、何の問題もないどころか、大満足してしているご主人だった。



「くっくそ、人間めぇーーーーー!!!! 今度こそ覚えておれーーーーー!!!」




ブクマと評価ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ