4話
視点 天上 優
「ふぅ、店長、今帰りましたー」
僕は店主に仕事の終了を伝える。
「おお、そうか、それじゃあ最後にこれ、終わったら帰っていいぞ」
店主はカウンターの上に包みを置く。そこまで大きくはない、多分かなり楽だろう。
「それで場所は」
「国立騎士育成学校」
「あーはい分かりました……はい?」
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あー嫌だもう嫌だ最悪だー。僕自身も会いたくない元クラスメートと顔を合わせるかもしれないのが嫌だー。でも給料貰った以上断るわけにはいかないし、急いで入って急いで帰ろう。そうだ、すぐに帰れば元クラスメートに会うことなんてない。なのに、
「あー広ーい」
目の前には学校の校舎へと続く数百メートル程ある道、その道の脇にはまた色々な建物が建てられている。
あ、まずい、そばのグラウンドのようなところでなんか授業やってる。体育かな? そんなこと考えてる暇はない、ダッシュだ!
もう目なんてパッチリ覚め切っている、急げぇぇぇぇ!
僕は数百メートルもの道を全力疾走する。そしてどうにか校舎についた。
「ハァハァハァ、よし見られてない」
完璧だ。
僕は自己満足をしながら校舎の茶色いドアを開けようとする。
しかし、開かない。
これはまさか、
「その扉、魔力が一定量無ければ開きませんよ」
「やっぱりそうですよね、いやー前にそんなことを聞いたことがあると思ったら……え?」
気がついたら、背後に若い女性がいた。少し驚いた僕は警戒をしてしまったが、すぐにその人が誰か分かった。
「……ファルナさんですか?」
「はい、そうです」
やっぱりそうだ。この荷物の差出人の名前もファルナと書かれていたからだ。
「あ、お届け物です」
「はい、ありがとうございます」
包みを渡す。ファルナさんはそれを貰うと、
「君、救世主ですよね、隠さなくても分かりますよ」
そんなことを言い出した。
「貴方の話はかなり前に耳にしたことがあったので」
「あ、そうですか……あのぉ、僕関連の人には……」
「分かっています、言いません」
「ありがとうございます」
ファルナさんは包みを持ったまま建物の中に入っていく。
「授業中に貴方が全力疾走で駆け抜けたのは、私以外に見ていません、大丈夫ですよ。見かけたので急いで取りに来て、また急いで授業に戻らないといけませんね」
「授業を抜け出させて申し訳ありません」
「いえ、大丈夫ですよ」
そう言うと、ファルナさんは扉を完全に閉め切った。
て、天使だ、僕にこんな対応をしてくれるなんて。
「よし、また全力疾走かな」
僕は再び元片道をダッシュする。そして、走っていると、
「グォォォォォォォ!」
恐ろしい雄叫びが学校中に響いた。
「ッ⁉︎」
踏みとどまる。
な、なんだ? 今の声、体育の授業の練習で実践でもしているかな?
そう思っていると、進行方向から複数人もの生徒が走ってくる。
げっ、か、隠れられない。なんか言われるかな?
しかし彼らの行動は、僕の予想の斜め上をいった。彼らは僕のことは眼中に無く、僕を通り越して校舎に向かっていく。その時、
「ワ、ワイバーンだ!」
「誰が相手にしてるんだ⁉︎」
「青葉さんよ!」
その一瞬でそのような会話にならない会話が聞こえてきた。
青葉さんが……ワイバーンを……普通なら逃げてる、でも。
「ま、待ってください、貴方!」
そのような声が聞こえたが、何故かは知らないが僕の足は彼らとは反対方向に進んだ。
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