34話
視点 天上 優
「え? ルールリアさんが僕を?」
「ああ、放課後らしくて」
またなんか生徒会室に呼び出されたら今回はそういうことか。
「なんなんでしょうか」
「そこまで機嫌が悪いような声じゃなかったから、多分大丈夫だとは思うよ」
「本当に大丈夫ならいいんですけど」
「まあ、そういうことで、悪いね、また時間削って」
「いえいえ大丈夫ですよ」
僕はそう言い、生徒会室を退室した。
今日はイエロードラゴンの世話を青葉さん、茅野さん、アリアさんに頼んでいる。理由は、今日は何故か世話にルールリアさんが来なかったからだ。
なんの連絡もせずに来ないので心配していたのだが、
「ッ?」
廊下を歩いていると、喧嘩の声らしきものが聞こえてきた。
僕はその聞こえてくる場所に向かうと、そこにいたのは前絡んできた女子集団と、ルールリアさんだぅた。この時初めて彼女を視認した。
「私達の前横切るわけ?」
「うわっ、何こいつ顔はタトゥーなんかつけてるよ」
「えっ、キモっ」
ルールリアさんはそんなことを言われながら周りを囲まれていた。
止めなきゃ。
僕はそう思い、止めるためにあの中に割り込もうとするが、
「下等生物が」
ルールリアさんが小声でそう言った次の瞬間、
「ッ⁉︎」
謎の衝撃波のようなものが周りの集団、そして僕に向けて発せられた。
「なっ」
周りの女子達は冷や汗を出しながら、動きを固める。無論それは僕も同じで、動けなくなった。
「あ……」
するとまるで金縛りのように声も出せなくなった。
ルールリアさんはそんな周りの人達を気にもせずに廊下の奥に歩いていく。すると歩いていく途中で立ち止まり、振り向いた。
「ッ⁉︎」
不気味な笑みを浮かべ、僕を見ている。
なんだ、この威圧感。逃げ出したくなるようなこの感覚は、一体……。
「……楽しみだ」
「ッ⁉︎」
いつもよりもトーンを下げながら、彼女はそう言いながら、去っていった。
「な、なんなのよアレ」
「い、い行こう。なんか」
「うん」
ルールリアさんに絡んでいた女子集団は、そう怯えながら言うと、この場から逃げるように去っていった。
「ルールリアさん、一体、何が」
しかし僕はこの時、何故かは知らないが、一歩を踏み出せなくなっていた。
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「お、来てくれたか」
僕は放課後、生徒会長に言われた通り、屋内実技場に足を運んだ。
「はい……」
暗い顔をしながら返事をする。
「どうした? そんな顔をして」
「いえ、なんでも」
あんなことがあった後の僕の体調はよろしくなく、正直今頭が痛い。
「あの、ルールリアさんは?」
「まだ来ていない。まあでももうすぐ来るだろう」
もうすぐ来る、この言葉は、今の僕には恐怖しか与えない。
待つこと数分、すると、
「お、来た」
生徒会長はそう言いながら指を刺す。
僕もその方向に体を向ける。
「ッ⁉︎」
「なっ!」
そこにいたのは、ルールリアさんだった。しかし、その片目は赤く光っており、その手には、巨大なハンマーが握られていた。
「ル、ルールリア?」
生徒会長の問いに、ルールリアさんは、あの時のような不気味な笑顔で返し、
「フフフ、ハハハハハハ!」
笑い出した。そして狂気じみた笑いを上げながら、僕達に襲いかかってきた。