32話
視点 天上 優
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???
「あのぉー、なんで僕は呼ばれたのでしょうか?」
今現在の時刻は昼の12時、ほ何故か生徒会室に呼ばれていた。
周りには生徒会の人達、そして正面にはルールリアさんのお兄さん、アドランさんがいる。
イエロードラゴンの世話はルールリアさんにすでに頼んである。
「うるせぇ、潰すぞ」
側にいた金髪の3年生の先輩、いや生徒会の人がそう言う。確かこの人は昨日の朝の人だ。
それにしても脅しが怖い!
「おいヘルガ、ユウを怖がらせるな」
「……ああ分かってるよぉ」
ヘルガと呼ばれたその男は生徒会長に言われて引いてくれた。
ああ怖い怖い。
「君を呼んだのは他でもない、君にしか頼めないことなんだ」
生徒会長は、僕の目を真っ直ぐ見てそう答えた。
……ん?
「ちょっと待ってください」
「ん? 何が?」
「普通に考えて、僕以外にも宛があるんじゃ」
「あったら君にお願いしていないよ」
「本当に僕なんかにですか」
「そう」
あ、なんか大役を務めさせられたような気がする。気のせいかもしれないけど。
「それで、何をすれば?」
「ユウはルールリアと仲良いよね」
「どうしたんですか急に、まあそうですけど」
「だからさ、ルールリアに放課後、この部屋に来るよう誘導してくれないか?」
アドランさんは僕に部屋の位置の紙を渡す。
僕はこの時疑問に思った。何故本人に直接言わないのだろうか。しかも伝えるじゃなくて誘導で。
「いやぁー実は昨日もいつも通りルールリアに口を聞いてもらえなかったからね。だから誘導なんだ。伝えても来ないから」
そんなことが……なら、
「分かりました。やります」
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「ユウ、どこに行くの?」
放課後、僕とルールリアさんは、6階の廊下を歩いていた。
「ちょっとイエロードラゴンの件でね、物を取りに行くの手伝って欲しくて」
僕はそう嘘を吐き、生徒会長に言われた部屋へと向かう。
そして部屋の前に着き、扉をガチャっと開けた。
「ここが……ッ?」
ルールリアさんは部屋の中にいた人物を見て驚く。
「ルールリア」
「……兄さん?」
僕はルールリアさんが完全に部屋に入ったのを確認すると、扉を閉めた。
「ユウには誘導役をさせてここまで連れてきてもらった。大事な話があるから」
「……大事な話?」
「……なあルールリア辛いか?」
「え?」
ルールリアさんは珍しく声を漏らす。
「お前だけ家の人からも、周りのみんなからも、迫害されて、見放されて」
「……」
「俺のせいだったんだよな。すまないと思っている」
「俺の今までの行動全部が、お前自身を傷つける理由になっていた。だから近々俺は、生徒会長を降りる」
「……」
その言葉は、何も聞こえない空間に綺麗に響き渡った。
「ちょっと、待ってください! 生徒会長、それは」
「俺の名声が落ちれば、ルールリアは周りから傷つけられずにすむ」
「……」
「それに、ルールリアはこんな兄貴嫌いだろ。俺のせいでお前がこんなことになったんだ。これでお前もスッキリするだろ」
「……」
「ルールリア?」
見てみると、ルールリアさんはさっきから口を開いていなかった。
「ルールリアさん、大丈夫?」
僕は心配になり声をかけた。すると、
「……ざけんなよ」
「え?」
「ふざけんなよ!」
鬼の形相を浮かべ、生徒会長に近づきその胸ぐらを強引に掴んだ。
「ル、ルールリア⁉︎」
「おいクソ兄貴! お前の勝手な考えで私の心を決めつけんなよ!」
いつもとは間反対の荒い口調で生徒会長を怒鳴りつけた。
「え?」
「誰がそんなことをしてくれって頼んだ⁉︎ 誰がそんなことをして喜ぶと思う⁉︎ そんなことをしたところで何も良いことなんてあるわけがない!」
ルールリアさんはそう叫ぶ。そしてその目には涙が滲んでいた。
「そんなことをして……私が悲しむって、何で分からないの?」
「ルールリア、お前……」
「私は、他の誰よりも、兄さんが凄いことをした時、嬉しかった。生徒会長になった時は、特に嬉しかった。でも、ある時私が劣ってるせいで、兄さんに迷惑がかかっていることを知った。だからあえて兄さんと距離を置いたのに」
「ルールリア……」
「これじゃ、意味が無い……」
するとルールリアさんは、生徒会長の胸ぐらを離し、部屋を出て行こうとした。
「ルールリア、待って!」
時すでに遅し。ルールリアは扉を完全に締め切った。
「……」
「……」
部屋にしばらくの間沈黙が訪れる。
「……ありがとう、今日は忙しいのに、こんなこと頼んで」
「いえ、そんな」
「今日はもういいよ。仕事頑張って」
「……失礼します」
僕は部屋の扉を開け、その場を後にした。
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「いやぁ、あのルールリアという子は使えそうだ」
夕焼けの空の下で、私はそう考えたことを呟く。
「さぁて、早速使わせてもらうとしようか。天上 優の成長に」
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