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29話

視点 天上 優

「あー眠い」


 僕はイエロードラゴンが入っている木箱の横で青葉さんにそう呟く。

 昼休みの食堂はいつも通り活気に満ち溢れている。僕を除いたらの話だが。


「大丈夫?」


 青葉さんが心配してそう聞いてくる。


「大丈夫……な訳ないよ」


 ツライ。とにかくツライ。でも辞めたらもう行き場無くなる。辞められない。


「何か私達にサポートできることは?」

「サポートか、そういえば1人サポーターは付いたんだよ」

「そうなの?」

「うん、ルールリアっていう不思議な子でさ」


 僕が彼女の名前を出すと、青葉さんは目を丸くした。


「え? ルールリア……」

「どうしたの?」

「今ルールリアって言ったよね」

「そ、そうだけど、なんかあった?」

「いや、ルールリアさんと仲良くしているのが意外で」


 意外? 人と仲良くするのは、友達になるのがそんなに意外なのだろうかそんなに意外なのだろうか? 友達なのかは分からないが。


「なんか、そんなに凄い人なの? ルールリアさんって」

「そういえば、天上君は知らなかったね。フルネーム、ルールリア・アルス・テルラーは、今国外にいる現生徒会長の妹にあたる人で」

「え? あの子生徒会長の妹さんだったの?」

「うん、それでルールリアさんは周りから」


 そう青葉さんが言おうとした時、


「ユウ」


 僕は声をかけられた。


「ん?」


 その方に振り向くと、そこにはルールリアさんが立っていた。


「竜の世話」


 また片言でそう言いながら座っている僕の腕を引っ張ってくる。


「ああ分かったよ。それじゃあ青葉さん、この話また今度」

「え、あ、うん」


 僕は青葉さんにそう言って引かれるがままに木箱を持ってその場を後にした。


 その後、僕とルールリアさんは最上階に行きイエロードラゴンの世話をした。

 ルールリアさんは昨日以上にイエロードラゴンの世話に力を入れており、不思議と意思疎通的なことをし始めていた。

 その疎通の仕方は犬とほぼ同じでおり、ルールリアさんがお手をすると頭を乗せたり、回れと言うと回ったりと、原理は元の世界と大差が無かった。


 一体昨日僕が見ていない間にどれだけ仲良くなったんだ? しかもお手とかもできるとかどれだけ仲が良いんだ。まあ喜ばしいことだけど。


 そして、


「あ」


 授業前のチャイムが鳴り響いた。


「ルールリアさん時間だよ。あとは僕がやっておくから」

「……分かった」


 しゃがみながらドラゴンを見ながらそう答える。


「ルールリアさん、気持ちは分かるけどさ」

「分かってる」


 そう言うとルールリアさんは立ち上がる。


「また明日」

「うん、来ていいよ」


 確認をするといつも通り顔の表情を変えずに階段を降っていった。


「さて、僕も動くか」


 そう呟くと、イエロードラゴンを木箱の中に入れ、階段を下っていく。

 階段を下っていき、4階に差し掛かると、


「ねぇ、謝ってよ!」

「……ぶつかってきたのはそっち」


 そのような大きい声と小さい声の言い合いが聞こえてきた。周りには人が殆どいないのでとでも響いていた。それとその中にはルールリアさんの声も含まれていた。

 僕はその階の声が聞こえた道に進む。角を曲がるとそこには複数人の女子に囲まれたルールリアさんがいた。


「ルールリアさん?」


 僕はルールリアさんが心配になり声をかけた。


「ユウ」


 すると、


「何? 貴方はこの子の知り合いか何か?」


 女子の中のリーダー格のような人がそう言ってきた。


「まあそうだけど」

「ふーん、ああ誰かと思ったら無能の救世主ね」


 あ、この子僕のこと知ってんだ。まあ確かにこの学校に僕と同年代人を兄弟に持つ人くらいいるよね。


「救世主?」

「うん」

「ふふふ、お似合いの知り合いよルールリア。似たもの同士だものね」

「似たもの同士? 僕とルールリアさんが?」

「あら知らないの? その子のこと」

「え?」


 ルールリアさんに、何かあるのか? それに生徒会長の妹なのに、こんなこと。


「まあいいわ、とりあえず土下座」

「最初にぶつかってきたのはそっち。私に謝る義理は無い。むしろ貴方が土下座」

「へぇ、そんな減らず口言えるなら。『ソウルリリース』」


 すると彼女の手に剣が現れる。


 まさか、決闘⁉︎


「ちょ、ちょっと待って!」


 僕はその人の前に立ち塞がる。


「邪魔なんだけど」

「こんな決闘、認められないよ」

「ああ、そう。だから? どうしてもどかないのなら、斬るわよ」

「どかない」


 僕は彼女の目を真っ直ぐに見てそう言う。


「ユウ、どいて」

「まあいいや。無能なら多少斬っても」


 その時、


「何をしているのですか?」


 声が響いた。

 周りにいる人は一斉にその方向、僕から見た目の前の奥に視線を向けた。

 そこにいたのは、


「ア、アリアさん」

「ア、アリア・プラネット先輩⁉︎」


 ものすごい怖い目線までこちらを見ていたアリアさんだった。


「今、決闘をしようとしていましたよね」

「いえ、今のは、その、ちょっとした遊びですよ」


 周りの人達は頷く。だが、


「そうですか。ならさっきまで響いていた声は何ですか?」

「そ、それは」


 今の一言で、彼女は口を動かせなくなった。


「しかも私の知り合いに剣を向けるとは。もしこれを先生方に言ったら」

「……お、覚えてなさいよ」


 そのようなよく聞く悪役の言葉を言い、女子軍団達は去っていった。


 


 

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