27話
視点 ???
終わりのチャイムが学校中に鳴り響く。
「よし、今日の授業はこれで終わりだ。日直、終わりの礼を」
先生が授業を終わらせるために、クラスの日直にそう言う。
「はい。起立、気をつけ、礼」
いつも通り日直は言い、私達はそれに従い、言われたことを行った。
昼休みだ。
昼休みにはある現象が起きる。
現象1、男子が食堂の席を確保するために瞬間的に教室から駆け出す。
現象2、女子達がこのクラスの中心人物(女子)の机に机をくっつけて集団で食事を始める。
現象3、その中のはぐれもの集団ははぐれもの同士で食事を始める。
これがこのクラス内で昼休みに起こる主な現象だ。
だが私はこの現象の中のどれにも当てはまらない現象を起こす。それは現象4、この教室から弁当と本を持って出て行くというものだ。
私は弁当を手に持ち、教室から退出した。
向かう先は、この学校のあまり人が立ち寄らない場所、最上階だ。
私は階段を登り、4階、5階と登って行き、最上階7階に着いた。
最上階は縦横7メートルの正方形で、そんなに広くはない。扱い的には物置に近いだろう。なのでこの部屋には空き箱やタンスや割れ物などが置かれている。だがこの部屋は無駄にこの校舎の中で1番日の光が当たるのだ。
私は壁に置いてあるタンスと空き箱の間にある隙間に座り込み、作っておいた弁当の蓋を開け、食べ始める。
10分程だった頃、弁当の中身の野菜以外を食べ終わった。
その後、私は持ってきていた分厚い本を読み始める。内容は錬金魔術、もう少しで読み終わりそうだ。
5分、私が黙々と本を読んでいると階段から足音が聞こえてきた。そして、
「確かここが最上階だったよね……あ、やっぱりそうだ」
階段から登ってきたのは、開いた木箱を持った灰色の髪をした清掃員だった。その清掃員は私の存在に気づくと、
「あ、先着いた。ちょっとこの部屋に入りたいんだけど、いいかな?」
私はコクッと頷き、その希望を承諾した。
「いい? ありがと」
清掃員は礼を言うと箱を持ったまま正面の光が入り込む窓、私からまた右側に向かい窓の側にその木箱を置いた。
「これなら温かいでしょ」
そう呟き、木箱の中を覗いていた。
「あぁーこれだとまだ寒いかな。毛布か何か必要か……あの……」
彼は私に話しかけてきた。今読書中だったので迷惑である。
私は目をその人に向けた。
「ちょっとこの子見ててもらえる?」
そう言い箱に指を指す。
この子、ということは生物なのだろうか。なんて面倒くさいことなのだろう。
私は無言のまま首を横に振った。
「そこをなんとかっ」
彼は両手の平を合わせて私に願ってくる。
そんなことをされても私の気持ちは変わる筈もない。なので私は再び首を横に振った。
「……分かったよ。読書の邪魔してごめん。それじゃあこのままにしておくかぁ」
そう言うと彼は残念がりながら階段を下っていった。
私はそんな彼を気にせずに、読書を再開した。すると、
「ピィー」
箱の中から、高い鳴き声が聞こえた。
私は少しその箱に目線を落としたが、すぐに本の文字を再び読み始める。しかし、
「ピィーピィー」
再び箱からそのような声が聞こえた。そして、
「ピィーーー」
今度はかなり長く響いた。
私はとうとう気になってしまい、本にしおりを挟め、木箱に近づいた。
「ピィーピィー」
音がする中を覗いてみると、そこにいたのは黄色い鱗を身に纏った小さな竜だった。
『イエロードラゴン』、ペット用のモンスターだ。確か前に本で見たことがある。
「ピィー」
イエロードラゴンは私に緑色の眼を向け、高い声で鳴く。
私はその竜の首元を撫でてみる。すると、目を瞑り気持ちよさそうな顔をした。
なるほど、これが気持ちいいのか。
その後も、私は竜の首を何度も何度も優しく撫で続けた。
「ヒィィ」
そう竜は声を漏らす。
何故かは分からないのだが、これをするのが少し楽しく思える。