表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/36

27話

視点 ???

 終わりのチャイムが学校中に鳴り響く。


「よし、今日の授業はこれで終わりだ。日直、終わりの礼を」


 先生が授業を終わらせるために、クラスの日直にそう言う。


「はい。起立、気をつけ、礼」


 いつも通り日直は言い、私達はそれに従い、言われたことを行った。

 昼休みだ。

 昼休みにはある現象が起きる。

 現象1、男子が食堂の席を確保するために瞬間的に教室から駆け出す。

 現象2、女子達がこのクラスの中心人物(女子)の机に机をくっつけて集団で食事を始める。

 現象3、その中のはぐれもの集団ははぐれもの同士で食事を始める。

 これがこのクラス内で昼休みに起こる主な現象だ。

 だが私はこの現象の中のどれにも当てはまらない現象を起こす。それは現象4、この教室から弁当と本を持って出て行くというものだ。

 私は弁当を手に持ち、教室から退出した。

 向かう先は、この学校のあまり人が立ち寄らない場所、最上階だ。

 私は階段を登り、4階、5階と登って行き、最上階7階に着いた。

 最上階は縦横7メートルの正方形で、そんなに広くはない。扱い的には物置に近いだろう。なのでこの部屋には空き箱やタンスや割れ物などが置かれている。だがこの部屋は無駄にこの校舎の中で1番日の光が当たるのだ。

 私は壁に置いてあるタンスと空き箱の間にある隙間に座り込み、作っておいた弁当の蓋を開け、食べ始める。

 10分程だった頃、弁当の中身の野菜以外を食べ終わった。

 その後、私は持ってきていた分厚い本を読み始める。内容は錬金魔術、もう少しで読み終わりそうだ。

 5分、私が黙々と本を読んでいると階段から足音が聞こえてきた。そして、


「確かここが最上階だったよね……あ、やっぱりそうだ」


 階段から登ってきたのは、開いた木箱を持った灰色の髪をした清掃員だった。その清掃員は私の存在に気づくと、


「あ、先着(せんちゃく)いた。ちょっとこの部屋に入りたいんだけど、いいかな?」


 私はコクッと頷き、その希望を承諾した。


「いい? ありがと」


 清掃員は礼を言うと箱を持ったまま正面の光が入り込む窓、私からまた右側に向かい窓の側にその木箱を置いた。


「これなら温かいでしょ」


 そう呟き、木箱の中を覗いていた。


「あぁーこれだとまだ寒いかな。毛布か何か必要か……あの……」


 彼は私に話しかけてきた。今読書中だったので迷惑である。

 私は目をその人に向けた。


「ちょっとこの子見ててもらえる?」


 そう言い箱に指を指す。

 この子、ということは生物なのだろうか。なんて面倒くさいことなのだろう。

 私は無言のまま首を横に振った。


「そこをなんとかっ」


 彼は両手の平を合わせて私に願ってくる。

 そんなことをされても私の気持ちは変わる筈もない。なので私は再び首を横に振った。


「……分かったよ。読書の邪魔してごめん。それじゃあこのままにしておくかぁ」


 そう言うと彼は残念がりながら階段を下っていった。

 私はそんな彼を気にせずに、読書を再開した。すると、


「ピィー」


 箱の中から、高い鳴き声が聞こえた。

 私は少しその箱に目線を落としたが、すぐに本の文字を再び読み始める。しかし、


「ピィーピィー」


 再び箱からそのような声が聞こえた。そして、


「ピィーーー」


 今度はかなり長く響いた。

 私はとうとう気になってしまい、本にしおりを挟め、木箱に近づいた。


「ピィーピィー」


 音がする中を覗いてみると、そこにいたのは黄色い鱗を身に纏った小さな竜だった。

 『イエロードラゴン』、ペット用のモンスターだ。確か前に本で見たことがある。


「ピィー」


 イエロードラゴンは私に緑色の眼を向け、高い声で鳴く。

 私はその竜の首元を撫でてみる。すると、目を瞑り気持ちよさそうな顔をした。


 なるほど、これが気持ちいいのか。


 その後も、私は竜の首を何度も何度も優しく撫で続けた。


「ヒィィ」


 そう竜は声を漏らす。

 何故かは分からないのだが、これをするのが少し楽しく思える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ