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26話

視点 天上 優

 先生による尋問の後、僕は自分の宿舎に向かっていた。すると、


「あ、天上」


 後ろから声をかけられた。


「はい?」


 僕は後ろを振り向く。そこにいたのは、暗い顔をした三原君だった。


「三原君?」

「あ、その……」


 そして、三原君は頭を思いっきり深く下げ、


「すいませんでした!」


 そう大声で叫んだ。その声はこの空間に綺麗に響いた。


「……」

「天上や茅野に、あんな酷いことして、しかもこんなことをした奴を助けてまでくれた。感謝もしてるし、申し訳ないと思っている! 許してくれなんて言わない。俺はこれから全力で償っていく! 本当に、本当に」

「もういいよ。そこまでで」


 僕は頭を未だに下げ続ける三原君にそう言う。三原君は頭を恐る恐る上げる。


「で、でも」

「確かに、三原君がやったことは、決して許されることじゃない。僕だって許してる訳じゃないからね。でも、1番大事なのは、それをやった本人がしっかりとそれを間違っていたと理解することだと思うんだよ。まあ謝罪はしなきゃだけど。だから、三原君自身がしっかりと理解をしていれば、僕は他に何も望まないよ。()()だけどね、これ重要」

「そ、そんな」

「まあ無能な僕が言えることじゃないけどね。だからさ、もう頭下げなくていいよ」


 完全に許した訳じゃない。だけど三原君がその間違いに気づいてさえいれば、それでいいんだ。彼はこれから変われるって思えるから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 現在、食堂の僕達が座っているテーブルだけが、異様な雰囲気を醸し出していた。


「で、2人はどうだったの?」


 茅野さんは青葉さんとアリアさんに聞く。

 青葉さんは重々しく口を開き、


「……私達は特に何も」


 と青葉さんに伝える。


「……それで貴方は?」


 今度はアリアさんは僕に質問してくる。

 

「……バイト代……半分です……」


 僕の声が、虚しく3人に聞こえたようだ。

 今、僕達がどのような話をしているというと、3日前のあの件の処分である。

 青葉さんとアリアさんは、茅野さんを救い出したというその功績だけは認められて、特に何も言われなかったそうだ。しかし、


「……なんで……僕だけ……」


 涙が出てきそうだ。

 僕だけは何故かは分からないが処分が下された。しかもこれは僕にとっては極刑だ。


「半分だよ半分! おかしいって半分なんて! 多くても3分の1でしょ!」


 僕は3人に思いっきり愚痴を言う。


「……本当にごめん」

「いやだから茅野さんは一切悪くないよ。でも……はあ、結局ギリギリな生活をしなきゃなのかぁ……」


 ウソダドンドコドーン! ホワイトかと思ったバイトもなんだかんだでブラックで、それに加えてバイト代も半分にされて超ブラックになってるんですけど! このままだと僕の体はボトボトに!


「……ご飯どうしよ」


 半分になると、朝ごはん削るか、いやこうなったらいっそのこと朝昼夜の量を全部3分の1から2分の1くらいにするか。


 僕が頭を抱えて悩んでいると、


「……陽毬ちゃん」

「うん、私もちょうど考えてた」

「天上君」


 茅野さんが狂い始めている僕を呼び戻した。


「な、何?」

「そ、その、私達が天上君のお弁当作ってもいいかな?」

「え?」


 オ・べ・ン・ト?


「い、いいの?」

「うん、私達ので良ければ」

「いやすごい嬉しいよ! 僕なんかのためにわざわざ作ってくれるんだから! やったぁぁぁ! これでどうにか生きていけるよ!」

「そ、そんなに喜んでくれるなら、頑張らなきゃね、雫!」

「うん!」


 2人の笑顔が天使、いや女神に見えてきた。そしてその傍ら、アリアさんが僕に憐れみの目を向けていた。そして、


「貴方、これから修羅場になるかもしれませんよ」


 と意味深なセリフを吐いた。

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