25話
視点 天上 優
「……ンッ」
あ、眩しっ。
太陽の光が窓を通して僕に当たっている。そうなれば誰でも眩しいと思うだろう。
僕はとりあえず起き上がる。見渡すとこの部屋が学校の医務室だとすぐに認識できた。
あれ、僕なんでここにいるんだっけ? 最後の記憶を辿ると……ッ⁉︎
思い出すと同時に、部屋のドアが開いた。
「……あ……天上君?」
そこにいたのは、見間違えるはずもない茅野さんだった。
「か、茅野さん……」
「天上君……ッ!」
茅野さんは僕に向かって走る。そして僕に抱きついた。
「プヘ!」
抱きつかれたときの僕の顔の着地点は、茅野さんの胸だった。
「天上君、本当に無事でよかった!」
泣きながら茅野さんは僕にそう言う。この場面どっかで見たことあるような気がするが、それは置いておこう。
「カ、カヤノパァン、オフィフイフェ」
(訳 か、茅野さん、落ち着いて)
しゃ、喋れない。胸がちょうどクッションのようになって声がこもる。
「あ、ごめん、つい嬉しくて」
ようやく離れてくれた。
「いや、大丈夫だよ。茅野さん、あれから何日経ったの?」
「うん、2日」
「2日か……青葉さんとアリアさんは?」
「2人とも無事だよ」
それを聞いて、僕はかなり安堵した。
2人には異常が無くてよかったぁ。
「それで、あの組織の2人は?」
「実は、あの2人にも契約魔術がかけられていて……あの後……」
茅野さんは沈黙する。それが何を意味しているのかを、僕はすぐに理解した。
「そんな……」
「それで、私が狙われていた理由は、私の不明の固有魔術なんだって」
人は生まれながらにして、火、水、風、土、雷、光、闇のどれかに長けている。しかし、ごく稀にそのどれにも当てはまらない者がいる。そのような人達は、強力な固有魔術を持っている可能性が大きいのだ。さらに茅野さんは救世主であるので、組織も目をつけたのだろう。
「起きましたか? ユウさん」
空いているドアから、ファルナ先生が現れた。
「先生……」
2日前の夜をのこの思い出す。無断かつ危険な行動をとった僕らを、一体どうするつもりなのだろうか。
僕はこの時暗い顔になった。
「30分後、相談室に来なさい。拒否権はありません」
そう僕に言い、部屋を去っていった。
「天上君?」
茅野さんは心配そうな顔で僕を見る。
「いや、いいんだよ。茅野さんを救えたんだし」
「でも……」
「大丈夫大丈夫、そんな逮捕される訳じゃないし」
僕は軽い口調でそう言った。
30分後……
コンコンと相談室と書かれた扉をノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
僕はそう扉の前で言い、ドアノブに手をかけ開く。中に入ると、そこには1個の横に長いテーブルがあり、前後5つの椅子で囲まれていた。
「座ってください」
その奥の中心にファルナ先生は座っていた。僕は手前に5つあったうちの真ん中に言われた通りに座る。
「さて、今回の件についてですが」
「はい」
この雰囲気、まるで刑事ドラマの尋問みたいだ。
「貴方自身は、今回の行動についてどう思っていますか?」
「……軽率かつ、身勝手な行動だと思っています」
「もしこの行動で、ヒマリさん、アリアさんの誰か1人でも命の危機、或いは亡くなった場合、貴方は責任が取れたのですか?」
「……後のことなんて全く考えていませんでした。ですが、その場合は一生償っていたと思います。そんなことで、2人が帰ってくる筈はないですが」
「次です……」
非常に重い空気の中、僕は質問されたことに偽りなく正直に答え続けた。そして、質問の6つ目が終わった。
「ハァ……今回は、本当に運が良かっただけです。貴方のその自分勝手な行動が、人の命を奪うことを理解してください」
「……はい」
「処分は後日連絡します。退室をお願いします」
「はい」
僕は二つ返事で答え、椅子から立ち上がって部屋の扉に手をかけた。
「先生、言い忘れていました」
僕は扉を開けると、振り返り、そう先生に言う。
「なんでしょう」
「確かに、今回の僕の行動は間違っていたのかもしれません。ですが、僕は後悔をしていません」
「……」
「あのままだったら、手遅れでした。茅野さんを救えず、僕達は絶望していた筈です。なので、僕達がやったことは後悔ができるようなことではないです、決して」
「……」
ファルナ先生は、黙って聞いていた。
「失礼します」
僕は部屋から出て、扉を閉めた。
「皆さん、同じことを言うのですね」
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