表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/36

24話

視点 天上 優

 今後ろでは青葉さんとアリアさんの2人が解術の魔術を使っている。

 そして、正面にはそれを阻止しようとしている男が1人。手には剣、魔術も多分使えるだろう。恐らく総合的な実力だと僕より遥か上だろうな。


 だけど、やるしかないよね。


「貴様は始末した筈なんだが」

「始末? ってことはつまり、あの時僕にホムンクルスを送ったのは貴方か」

「そうだが、始末しきれなかったようだな。あの時確実にしていれば」


 男は剣を僕に向ける。


「このような面倒事にはならなかった」


 僕も拳を握りしめ、構える。


「お互い様。あの時貴方達に追いつきさえすれば、こんなことにはならなかった。だから、これは僕なりの罪滅ぼしでもあるんだ」

「そうか。ならば始めるぞ」


 男がいい終わった次の瞬間、男はすでに目の前にいた。


「何っ⁉︎」


 そして、


「フンッ!」


 右肩から下が消えた。


「グゥ……」


 痛みに耐えるため歯を食いしばる。


 なんて速さだ。全く反応できなかった。これがレベルの違いか。けど、


「デァァ!」


 僕は瞬時に右腕を再生し、目の前にいる男に殴りかかった。


「なんだとっ⁉︎」


 殴ろうとするのだが、僕が拳の振るう速度があまりにも遅いため、すぐに対応された。どのような対応かというと、僕が拳が通る軌道上に剣を入れたのだ。


「ンッ⁉︎」


 僕の中指と薬指の間に剣が入り込み、そこから肘まで腕を裂いたのだ。勿論とても痛い。

 しかし僕はその裂かれた部分を細胞の再生で繋ぎ合わせ、新たに拳を作った。そしてそのまま、


「ハァ!」


 男の顔面を殴った。そして能力により細胞を暴走させさらなる痛みを与える。

 肘まで到達していた剣の部分は再生ができないため、拳を突き出した時にそのまま腕をそって僕の肩まで到達した。すんごく痛い。


「グハァ⁉︎」


 真正面を殴られたため男の鼻から血が流れ出す。

 僕は肩に刺さった剣を抜き、それを捨てる。ついでに肩の傷も再生させた。

 

「天上君、70パーセントは終わったよ。あと少し」


 青葉さんは魔術を使いながらそう言う。


「分かったよ」

「クッ……なるほど、貴様も能力者か。アヴァルとは違って再生か」

「もう勝ち目なんてない、降参して」

「する訳にはいかない。勝ち目ならあるからだ」

「何?」


 そう言いながら男は立ち上がり、構えだす。今度の構えは剣ではなく、拳だ。


「これならどうだ?」


 そして、男は僕の腹部に素早い拳を叩きつけた。


「クハッ」


 これは、まさか臓器を狙っているのか。臓器が損傷、破裂する痛みは想像を絶する痛さだ。再生できても痛みが残る僕だと、臓器が破裂した痛みに耐えながら戦わなくてはいけない。気絶させるつもりか。


「どうした能力者」


 僕はその衝撃で後ろに大きく後ずさるが、その後さらなる追撃が迫る。


「クッ」


 その攻撃を右腕で受ける。


 重い。それにこの人速いし強すぎる。しのぎ入れるか?

 

「受けたか。だが」


 その後、男の左足が僕の腹を蹴る。


「ウッ」


 胸ぐらを掴み、顔面を殴る。


「ガッ」


 肩を左手で押さえ、腹部に右腕を何度も打ち込む。


「アァ」


 膝を腹部に突き上げる。


「カハッ」


 そして最後に胸ぐらを掴み、後ろに放り投げ、壁に激突する。


「ウ……ァ……」


 能力はすでに使った。ボロボロになった臓器や骨の回復も済ませた。しかし痛みは全く回復をしていない。


 よく少年漫画とかで、骨が2、3本折れただけとか言っているキャラクターがいるけど、今なら断言できる。そんなの無理だ。痛みには勝てないよ。


 意識が朦朧とする中、目の前に見えているのは、魔術を使っている2人を止めようとするあの男。


 無理だ。ここで眠った方が、何も考えずに楽かな……いや、そんな訳ない。


 歯食いしばれよ。

 立てよ。

 動けよ。

 寝ている暇があったら、人1人助けてみろよ。

 目の前の状況どうにかしてみろよ。


 "ああ、やってやる"


 その時、体が動いた。


「何っ⁉︎ 貴様まだ」


 男を背後で腕を使って拘束する。


「チッ、邪魔だ!」


 とうとう苛ついた男は肘を僕の腹部に打ちつけ始める。痛みのせいで体に力が入っている感覚は無いが、何故か腕は離れなかった。

 僕は右手の平で男の顔を掴む。そして、


「グァッ」


 能力を使う。

 もう殴る力は無くても、僕には周りの人達とは違う特典がある。この能力は、魔力の抑制に引っかかって時間がかかるが、長時間やれば、


「グ、グ、グァァァァァァ!」


 本格的な外道の技になる。顔の細胞も破壊できる。


「グァァァ、は、離せ!」


 男はさらに強く肘を打ちつける。だがそれでも離さない。離す訳にはいかない。


「グァァ、ア、ア、ァ……」


 2分後、男はあまりの痛みに気絶した。立っていた体を崩し、床に落ちる。それは、僕も一緒だった。



 そしてその時、茅野さんを囲っていた魔術陣が力を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ