23話
視点 天上 優
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青葉 陽毬
「腕は縛りました」
アリアさんは腕を何分もかけて再生すると、気絶しているアヴァルの腕を魔術を使って拘束した。
「本当に魔術って便利だね」
「この魔術は基本ですけどね」
「えっ、そうなの?」
「そういう話題は帰ってからでも? それでヒマリから連絡は?」
僕はポケットから通報石を取り出し確認する。
「……1階の正面左から3番目の部屋」
「1階ですか。かなり無視して来ましたね」
「まあ確かに相手の出方を探りながらだったからね」
「とにかく急ぎましょう。ヒマリが心配です」
「うん。分かった」
僕達は急いでこの建物の1階の部屋に向かった。
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「ハァ!」
剣が交差する。交わる度に火花が散り、うす暗い部屋に小さな光を生み出す。
そしてこの相手、かなりやる。剣の技量では私より上だ。加護で足りない面を補っている私だが、この相手は技術で私と渡り合っている。
「このジェストの剣に対応するか」
「ロクに授業を受けている訳じゃないから……ハァァ!」
剣先を相手に向かって突き刺す。それは剣で簡単に弾かれたが、私はその隙を見計らって回し蹴りをくらわせる。
「チッ、"ブライム''」
奴はそれを剣を持っている腕で受けると、私に手の平をかざし、黒炎を吐き出した。私はそれを後ろステップで避ける。
「剣技、フレイム・ノヴァ!」
避け終わると、踏ん張った足をバネにして相手に突っ込みながら剣技を放つ。炎を纏った剣は、相手に叩き込まれる。
「甘い!」
相手はそれを剣で受ける。
「素晴らしい剣技だ」
「貴方に褒められても嬉しくない」
「それは残念だ」
私達は距離を取る。
私は雫を取り囲んでいる魔術陣に目を向ける。さっき見た時よりも陣の赤色がさらに光を増している気がする。このままだと陣が作動してしまう。急がなければいけない。
「何をよそ見している」
あっ、しまった。いつの間に⁉︎
「よそ見をするなどとは、それでも騎士か?」
相手は剣を横に払う。私はそれを何とか剣で受け止めたものの、あまりの強さに床に倒れてしまった。
「ウアッ⁉︎」
剣先を男は私に向ける。
「勝負あったようだな」
ま、負けた? いや、まだだ。まだ立ち上がれる。
「させると思うか? 終わらせる」
「クッ」
その時……バンッ!
「ッ⁉︎ 青葉さん!」
扉が開く音とともに、聞き覚えのある声が私の耳に入った。その聞こえた方向に顔を向けると、そこには必死な顔の天上君がいた。
「何っ、貴様は⁉︎」
「クッ」
天上君は男に向かって走り出した。男は急いで防御姿勢に切り替えようとしたが、時すでに遅し、強烈な右ブローが男の顔面にくらわされた。
「ハァァァァ!」
「グァッ⁉︎」
殴られた男は後ろの壁に吹き飛び、叩きつけられた。
「はぁ、はぁ」
「天上君……」
すると開いた扉から焦っているアリアが出てきた。
「ヒマリ、あの陣に2人がかりで解術の魔術を、急いでください! もう時間がありません。時間稼ぎはあの人がします!」
「青葉さん急いで!」
「わ、分かった」
私は2人の指示に従い、円状の魔術陣の前に立ち、手をかざす。そして私達は、解術の魔術を使った。
「「マジックキャンセル」」
私とアリアの手の平から、白い光が現れ、赤い光に干渉する。
2人がかりの解術魔術だ。これで完了する時間が半減する。だがしかし、この陣はこれでもかという程完成度が高い。なので2人でも時間かかるだろう。
急がないと!