13話
視点 天上 優
「雫! 大丈夫⁉︎」
「あ、陽毬ちゃん」
駆けつけた青葉さんは、茅野さんに思いっきり抱きついた。
「大丈夫⁉︎」
「うん、大丈夫だよ。天上君が助けてくれたから」
目に涙を流している青葉さんの目は、僕に向けられる。
「天上君……ありがとう、雫を助けてくれて」
「いや、いいよ。こっちも茅野さんを助けられてよかったから」
青葉さんはそれでも涙を止めなかった。
そして、
「おい、こんなことをして、済むと思うな!」
三原君は僕達にそう叫ぶ。
「三原 春樹含め2名は今より退学処分、そして学校で事情聴取を行います」
取り押さえられている三原君に、ファルナ先生はそう告げる。
三原君達は悔しそうな顔をする。しかし何故だろう、この顔は、恐怖も混じっている。
何かを恐れている、一体何を。
その時だった。
「グァッ、クァァ」
「何⁉︎」
突如として取り押さえられている三原君は口から血を吐き出し、苦しみ出した。
「皆さん、離れてください!」
ファルナ先生が取り押さえている先生にそう言う。
取り押さえていた先生方はファルナ先生の声でその場から離れる。
三原君は叫びながらお腹を抱えだし、さらに苦しみだす。顔は赤くなり、血管が浮き出る。
そして、
「グァァァァァァァァァァ!」
抱えていたお腹が爆発した。
血は半径4、5メートル程飛び散り、臓器も吹き飛んだ。
「ッ⁉︎ 2人とも、見ちゃ駄目だ!」
青葉さんと茅野さんにそう言い、目を覆わせる。本当は僕もなのだが、生憎僕はこういうグロテスクな場面には慣れている。けど今回は耐性が無い人には刺激が強すぎる。
「クッ」
僕は目から血を流して白目を向いてしまっている。
「天上さん? 一体何を⁉︎」
ファルナ先生は不思議そうに焦りながらそう聞いてきた。
「まだ脳は生きているかもしれません! なので再生をします!」
そう答えながら、僕は中が見えていない三原君のお腹を触り、能力を使った。
僕の能力は、その再生させる部分が近ければ近いほど効果を増す、だからこうするしかないのだ。
だがしかし、
「なんで……こんなに時間がかかるんだ?」
時間がかかりすぎる。
流石に僕と三原君の魔力差は大きい。だとしても、この遅さは異常だ。
いや、でも……まさか。
「ファルナ先生、これは契約魔術ですか⁉︎」
「契約魔術、ですがこの起動方法は……まさか、口止めの」
契約魔術、何でしたのかは知らないけど、恐らく任務に失敗したら口封じのために殺す契約をしたのだろう。だとしたら、
「この契約魔術の魔力で、さらに抑制されているのか?」
だとしたら、ことは一刻を争う。
「誰か、保健室、いや医務室の先生を呼んでください! 急いで!」
僕の声に周りが動き出す。
せめてもの救いは、三原君だけだということ。他の2人も同じことになったら対応はできない。
ということは2人は契約をしていない。
そして約五分後、
「天上さん! 来ました!」
白衣を羽織った3人が来た。
ナイスタイミングだ。
「お願いします!」
そして三原君は、その3人に運ばれていった。
「僕もついていきます。再生で手助けができるかもしれないので」
「はい、分かりました」
僕はその3人について行こうとする。
「あ、天上君?」
「茅野さん、あとは先生達に従って。僕は三原君のところに行くから」
茅野さんにあんなことをした人を助けようとするのは、間違っているとは思うけど、彼とは一応元クラスメートだ。放っておけない。
「……うん、分かったよ。頑張って」
茅野さんは少し考えたが、はっきりと言った。
「頑張るよ」
僕は茅野さんにそう言ったあと、校舎の方に向かった。