11話
視点 茅野 雫
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天上 優
私は授業後、魔術棟の使われていない1つで三原君を含めた3人といる。
何故この3人といるのか、理由は1つ、私をとあることに誘うためだ。
この建物の中にはかなりの本があり、棚の数は十数個ほどある。
その本棚の裏で私達は話していてる。
「なあ茅野、そろそろボスのところへ行く気になったのか?」
三原君笑みを浮かべながら私にそう聞く。
私は三原君の顔を真っ直ぐに見る。
「い、行かない、私は貴方達の方には行かない」
「じゃあなんで茅野から俺達を呼んだんだ?」
「も、もう私を誘わないで。お願いだから、もう何度も誘ってきて、もう諦めてって貴方達の言っているボスに伝えてきて」
私がそう彼らに言うと、三原君の顔から笑みが消えた。
そして、
「ボスに逆らうだと? ふざけるな!」
瞬間、三原君の手には曲刀が現れる。
『ソウル・リリース』だ、来る!
曲刀を三原君は振り上げた。
私はすぐに反応し、自分も『ソウル・リリース』を使う。
槍状のその武器で攻撃を受ける。
「ウッ」
「よく今のを受け止めたな。ボスの言うことを聞かないのなら」
三原君は剣を華麗に扱い、私の持っている槍を吹き飛ばした。
「キャッ⁉︎」
その勢いで私は床に倒される。
『ソウル・リリース』は私の手から離れるとその形状を保てなくなり粒子と化して消滅した。
「無理矢理連れて行く、行くぞ」
彼は私の腕を強引に掴み、連れて行こうとする。
「や、やめて」
「もう遅い、ボスに逆らった罰だ!」
「い、いや」
ゴトッ
何かが落ちた物音がした。
周りの目線がその物が落ちた場所に向かう。
本棚の側面から、落ちたと思われるそれは、デッキブラシだった。
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茅野さん達をつけてきてしまった。
今僕は本棚に隠れてその会話を聞いているのだが……な、なんなんだこの会話? ボス?
何の話なのかが全く分からないが、どうやら茅野さんは断ったようだな。
なら大丈夫、と思っていたその時、部屋に金属音が鳴り響いた。
う、打ち合い⁉︎
な、なんで、一応通報だ。
僕は懐から『通報石』を取り出す。
この石に思念を送れば、その思念学校にいく。
そして通報石に僕は思念を送り込んだ。
これは魔力を使わないので誰でも使えるので、当然僕も使える。
すると石は淡い赤の光を少し放ち、やがては消えたいった。
よし、でも、今無理矢理連れて行くって言ったよね。
「てっ待っ」
あ、まずい、手を滑らせたデッキブラシを、
ゴトッ
落としちゃった。
こ、これはまずいな。
「おい、そこにいる奴出てこい」
出ないほうがいいかな、でもこのままだと茅野さんが、
「名前を言った方がいいか? なあ天上」
あ、バレた。
僕は言われた通りに本棚の裏から姿を見せた。
「ハッ、いつも通り汚い清掃服だな」
「三原君、今茅野さんを無理矢理って」
「ん? ああそうだな、で、お前はこれを聞いてどうするつもりだ?」
僕は両手に拳を作り、構える。
「もう通報した。先生達が来るまで、僕は足止めをする」
決して倒すじゃない、足止めだ。これなら僕にだってできる。
「……天上君、逃げて」
茅野さんが半泣きになりながらそう言う。
けど……でも、
「逃げられるわけがないよ、まず僕が逃げたくないんだから。待ってて、今助けるから」
「フフフ、ハハハハハ」
三原君は顔に手を当てながら笑う。
そして、
「調子に乗るな雑魚が!」
3人同時に手に武器を作り出し、握る。
「いいぜ、ならここに来たこと、生まれてきたことを後悔させてやる!」
僕と彼らは、お互いに狭い建物の中で、ぶつかり合おうとしていた。