1話
視点 ???
「茅野、準備終わったよ」
私は制服を着終わったので、ルームメイトに声をかける。
「ふぇ?」
ベッドで眠っていたルームメイトは力の無い声で反応し、起き上がる。
「早いねぇ青葉ちゃんは」
起こすとその肩まで伸ばしてある水色の髪はボサボサになっているのが分かる。
彼女、茅野雫は私の親友でありルームメイトだ。
「服、はだけてるよ」
「え?」
彼女は自分の胸を見る。ボタンが3つ程取れてしまい、谷間が見えてしまっている。
茅野は気がついた途端素早くそれを止める。指摘した私が思うのもなんだが、これから着替えるのにボタンを止めるのは意味があるのだろうか?
「あのー私もう日直なので行ってもよろしいでしょうか?」
「え? ちょっと待ってお弁当⁉︎」
「そう言うと思って作っておいたから、学校行く時持ってって」
「ファァ、分かったよ。うんよく分かった」
まだ寝ぼけているので学校に遅れないか心配なのだが、こちらもこちらの都合があるので、急がないといけない。
「それじゃあ、しっかり起きてね、行ってきます」
「いってらっしゃぁい」
あーあ、これ絶対寝るパターンだ。
私は肩に乗っていた黄色い髪を払い、学校への道のりを歩き始める。
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『国立騎士育成学校』
その名の通り、王国を守る騎士を育成する学校である。
この王国レグニカは、28人いる私達中学3年2組がこの世界に来てから訪れた国だ。
流石に元いた世界の服装の私達はすごく目立ったので、この国の国王に一時は捕らえられたのだが、どうやら私達は、1000年もの前の予言で言われていた救世主らしい。世界が危機に瀕した時に、異世界からの使者が現れる、そんな予言で転移させられた私達だが、問題なのはここからだ。なんと、今世界は危機に瀕していないらしい。特に他国との対立は無く、外にいるモンスターが凶暴化した訳でもない、むしろ1番平和な時期らしい。
勿論私達は反発をして帰らせてほしいと言ったのだが、帰し方が分からないといわれ、せめてもの支援として、私達を無条件無費用で学校に通わせてくれると国王は言い、仕方なく私達はこれを承諾。とある1名を除いたクラス27人が入学をした。それがその学校だ。
あれから1年、私は2年生になり、学年順位1位を取った。だが私の目標は1位ではなく、元いた世界に帰ること、これが私、青葉ひまりの最大の目標だ。
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私は家々が並んでいる日陰の多い道を進んでいると、
「おーい、ヒマリー」
私に手を振る黄緑色のツインテールの少女を発見した。
彼女の名前はアリア・プラネット。この世界に来て知り合った友人だ。私達異世界人がいる中で、唯一この世界の人で学年順位トップ5に入る程の低身長と実力の持ち主だ。その順位は3位。
「アリア、おはよう」
私は彼女に近づく。
「おはようヒマリ、今日は早いのですね」
「うん、今日は日直だからね」
「ああそうでしたね」
彼女のこの話し方は、彼女が貴族である証と言ってもいいだろう。
まず私が通う学校は、殆どが貴族が通っている。なので、学校は最新の設備が備えられてあるのだ。
そのため設備に不満を持つことはあまりない。
「シズクは?」
「多分二度寝」
「本当に朝が弱いのですね」
遅刻しないことを願う。
「そういえば、この道を使うのは私達だけなのですね」
「だよね、ここあんまりいい道じゃないし」
「ですがこちらはかなりの近道、皆さんここを使えばよろしいのに」
私達がそんな他愛のない話をしながら十字になっている道に入り込む。その時だ。
「アッ⁉︎」
右の道から飛び出してきた灰色の髪の人と私が接触しかけた。ギリギリぶつからなかったのは幸いだがその人は私達の方を見ずに、
「ごめんなさぁぁぁぁぁい!」
そう大声で謝りながらその人は左の道へと突進していく。
「待ちなさい!」
アリアが大声を出してその人を止めようとするが、その人は止まるどころかその言葉を聞きませずに走り去っていった。
「本当、しっかりと謝罪すらせずに逃げ去る人が庶民にいるのですか? 大丈夫ですかヒマリ?」
勿論当たっていないのだから怪我など無い、しかし私はそれよりも違うことに脳をフル回転させていた。
あの髪の色、あの声、まさか?
「ヒマリ?」
「……アリアごめん、先に行ってて」
「はい?」
私はその人を追うように、左の道に駆け出す。
「ヒ、ヒマリー⁉︎」
「ごめん、後で追いつく!」
そうアリアに言い残し、分け目も降らずに突っ走る。
あれは、私も一瞬目を疑ったが、間違いない、天上優だ!
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