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98.ジークフリートへの依頼



 ある日の冒険者ギルドにて。

 俺こと仮面の冒険者ジークフリートに、名指しの依頼があった。


 ギルドマスターの部屋にて。

 俺の目の前には、帝国の財務卿マーゴンが座っている。


「ということで、貴様には魔王討伐という名誉ある仕事を依頼したい!」


「はぁ……」


 この男は、目の前にいるSランク冒険者が、実は素性を隠した魔王であることを知らない。


「すでに他国の腕利き冒険者は用意した。あとは貴様を加えれば魔王討伐軍は盤石だろう。よろこべ、人類を救った英雄にしてやる」


「お断りします」


「そうか! 断るか……って、なにぃいいいい!? こ、断るだとぉ!? なぜだ!」


 魔王本人だから、とは言わない。

 この部屋には俺たち以外に、マーゴンが集めてきた腕利き冒険者たちが結構な数居る。


 正体をこんな大人数の前でさらすのは愚策だ。


「話を聞けば、別に魔王が帝国に何か危害を加えたわけではないのでしょう? なぜ魔王を討つ必要があるのです」


「魔王は帝国の代表であるわしを脅迫した! これは帝国に対する明確な敵対行為であぁるうぅ!」


 ああ、無様をさらした腹いせに、俺を倒そうって腹なのか。


「でも別に殴られたとかそういう話ではないのでしょう? 帝国に対して無礼を働いたわけでもないのであれば、魔王を倒す大義名分はない」


「だまれ! このわしに意見するとはいったい何様のつもりだぁ!」


 魔王様本人ですとは言わない。


「なにをごちゃごちゃと屁理屈を述べている! 貴様ら冒険者は金さえもらえば何でもする卑しいやつらなのだろ!?」


「……それは大間違いだ。冒険者は自由だ。俺の意思で、魔王を討伐しないと決めた」


 俺は仮面ごしに、マーゴンをにらみつける。 


「な、なんだ貴様ぁ! わしに逆らうというのか! わしは帝国の財務卿マーゴンさまだぞ!」


「誰であろうと、今回の件に俺は参加する気は毛頭ない。帰ってくれ」


「ふん! 腑抜けが。ようするに魔王に怖気づいたのだろう? あーあ、うわさの仮面の冒険者も大したことなかったのだなぁ」


「そう思われても結構。じゃあな」


 俺はきびすを返して、部屋から出て行こうとする。


「おい、おまえら。こいつを少し痛めつけてやれ」


 マーゴンは、集めた腕利き達とやらに命令する。

 強壮な見た目だが、柄の悪そうな雰囲気を出している。


「わりぃな、おれらマーゴンの旦那に後ろ盾になってもらうことになってるんだわ」


 なるほど、腕はあっても、素行が悪いせいで、ランクが低い連中ってことか。


「くくく、ジークフリートよ。この腕利き大人数を前に、よもやたった一人で勝てるとは思わんよなぁ?」


 部屋を埋めつくすほどの腕利きたちを前にしても、俺は動じない。


「やめとけ。ひどい目に遭うぞ」


 俺は彼らと、そしてマーゴンに言う。


「警告だ、マーゴン。ここで俺に敵意を向けたら、もう魔王(おれ)は容赦せん」


「はっ! 意味の分からないことを! やれ貴様ら! こいつを殺せぇ!」


 冒険者たちが一斉に襲い掛かって来る。


「【麻痺(パラライズ)】」


 周囲に電流が走り、冒険者たちが一斉に硬直する。


「な、なんだぁ!?」「か、体がうごかねえ……!」

「悪く思うなよ。【眠り(スリープ)】」


 マーゴンは倒れ伏す冒険者たちを見て、目をむいて叫ぶ。


「ば、バカな! こいつらは素行は悪いとはいえ腕利きの冒険者たちだぞ! それを一瞬で無力化するなんて……!」


 腰を抜かすマーゴンの前に、俺は向かう。


「さ、さすがうわさの最強冒険者! いやぁ見事な腕だ!」


 急にへりくだりだしたぞこいつ。


「ぜひともま、魔王討伐に参加してくれ! 望む額の報酬をやろう」


 俺は一歩、マーゴンに近づく。


「お、おまえ貴族位に興味はないか! わ、わしの口添えがあれば爵位をもらえるぞぉ!」


 また一歩、マーゴンに近づく。


「わ、わしに手をあげたら帝国に歯向かったことになるぞぉ! いいのかぁ!」


「知らん。俺はお前が気に食わない」


 俺は拳をにぎりしめ、マーゴンの頬を、思い切り殴り飛ばす。


「ぶぎゃぁあああああああああああ!」


 部屋の壁をぶち抜いて、勢いよく、マーゴンは吹っ飛んでいく。

 良くはねるボールのように、彼は大空へと吹っ飛んでいった。


「やれやれ」


 この場にいる人間はみんな眠っている。

 俺は仮面を取って、はぁとため息をついた。


「これは、マーゴンの皇帝(ボス)に、魔王(おれ)が直接文句を言いに行かなきゃ、根本的な解決にはならないかな」


 また突っかかってこられても厄介だしな。

 きっちり、皇帝陛下に愚かな部下をさばいてもらおう。

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新作の短編、書きました!

時間がある方はぜひ読んでみてくださいー!

よろしくお願いします!


※タイトル

「宮廷鍛冶師がいなくなって後悔しても今更もう遅い~「王家に伝わる伝説の武器に手入れなど不要」と無知な王子に追放され自由を得たので、念願だった最強の魔剣づくりに専念する。引く手あまたなので帰る気は毛頭ない」


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★1巻11/15発売★



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『ギルドマスターの部屋で話し合い』 ギルドマスターもいるのか?(いたら麻痺&睡眠の被害)
[一言] 皇帝ってより皇女じゃなかったっけ? しかも見てた感じ 割と好印象に思えた黒い部分もありそうだけど人となりはいいんじゃないかな?
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