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97.マーゴン、皇帝から失望される



 魔王ジークが、皇帝からの使いであるマーゴンを追い払った、その数日後。


 マデューカス帝国の、謁見の間にて。


 財務卿マーゴンは、ことの顛末を、皇帝に報告した。


 マーゴンが跪く目の前には、天女と見まがう、美しい女性がいた。


 長く美しい銀髪。

 愁いを帯びた表情。

 すらりと長い手足に、抱けば折れてしまいそうなほど細いボディライン。


 彼女は皇帝【サーシャ・フォン・デューカス】。

 17歳にして、この帝国を切り盛りする女帝である。


「……そう、失敗したのね」


 ふぅ、と小さくため息をつく。

 その目にはマーゴンに対する失望の色が浮かんでいた。


「……お使いひとつできないなんて、駄目な子」

「も、申し訳ございません……」


 目の前に居るのは、マーゴンより遙かに年の離れた小娘だ。


 だがしかし、彼女が放つ異様なプレッシャーは、皇帝の証と言えた。


 幼くとも彼女は、この大帝国のトップなのである。


「……しかも兵士達を置いて自分だけ逃げるなんて。貴族以前に、人間としてどうかと思うわ」


「め、面目次第もございません……し、しかし!」


「……言い訳は結構。はぁ……こんなに使えない子だったなんてね」


 ギリッ……! とマーゴンは歯がみする。


「恐れながら皇帝陛下! あんなチンケな国となぜ友好関係を築こうとするのですか! 歴史なんてない、弱小国ではありませんか!」


「…………」


「ひっ……!」


 サーシャに静かににらまれて、マーゴンは動けなくなる。


「……もう良い。あなたを財務卿から外す」


「なっ!? ど、どうしてですか!?」


「……あなたは、自分の犯したミスの重大さを理解してない。それが致命的。そんな間抜けに国の財政は任せられないわ」


「ま、間抜け……このわたくしが、間抜けですと……!?」


 プライドを傷つけられ、マーゴンは憤怒の表情を浮かべる。


 皇帝がなぜここまで、魔王国にこだわっているのか、理解できなかった。


 そこまでして、人工魔力結晶が欲しいのだろうか……。


「陛下、もう一度、チャンスをください! 必ずや、あなた様から与えられし命令、成し遂げて見せます!」


「……もう良い、消えなさい。あなたには無理」


「いえ! できます! 必ずやあなた様のご要望に、今度こそ応えて見せます!」


 しつこく食らいついた結果、皇帝はため息をつく。


「……わかった。これが最後のチャンス。しくじったら本当に財務卿から降りてもらう」


「はっ! かしこまりました! 必ずや、あの魔王の国から人工魔力結晶を勝ち取ってきます!」


「……? 本当に、あなたわかっているの? 私が望んでいることを」


「もちろん! では!」


 マーゴンは頭を下げると、きびすを返して部屋を出る。


「くそ魔王が! 覚えておけよ!」


 皇帝が欲しいのは、人工魔力結晶【だけ】だ。


 だが魔王は決して譲らないという。


「力尽くでも、魔王からあるだけの人工魔力結晶とその製造方法を手に入れてやる! そうすれば皇帝陛下の信頼も回復するはず!」


 ……マーゴンは1ミリたりとも、サーシャ皇帝の思いを理解していなかった。


 言うまでも無く、彼女が本当に欲しいのは魔王ジークとの友好関係だ。


 人工魔力結晶ももちろん、手に入れておきたい。

 が、それ以上に魔王国との繋がりを、彼女は重視していた。


「魔王め! よくも恥をかかせてくれたな……! 復讐だ! 目に物見せてやる……!」


 マーゴンを突き動かしているのは私怨だ。


 無論皇帝への信頼回復も大事だが、プライドを傷つけたジークに対する報復もまた、彼にとっては最優先事項だった。


 魔王を討ち、人工魔力結晶のすべてを手に入れる。

 そうすれば、万事解決だと……勘違いしていた。


「しかしヤツはかなりの強さ……倒せる者など、そうは居ないだろう。……おお! そうだ! ひとり居るではないか!」


 にやり……とマーゴンは邪悪に笑う。


「最近ちまたでは、とても強いと評判の冒険者がいるではないか! なんでも冒険者登録初日に隠しダンジョンを突破した英雄だという……彼に頼もう」


 よし、とマーゴンは強くうなずく。

 さっそく彼は執務室に戻り、部下にその冒険者の名前を調べさせた。


「なになに、Sランク冒険者【ジークフリート】。……なるほど、強そうだ。この者に魔王討伐を依頼しよう! くくく……覚えておれよ、魔王ジーク……!」


 マーゴンは、仮面の冒険者ジークフリートの正体を、無論知らなかったのだった。

【※読者の皆さまへ とても大切なお願い】


「面白い!」

「続きが気になる!」

「はやくマーゴン『ざまぁ』されろ!」


と思っていただけたら下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に変えて、作品への応援おねがいいたします!


面白かったら星5つ、

つまらなかったら星1つ、素直に感じた気持ちで全然かまいません!


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★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
[一言] マーゴンからハーゴンへの変異進化を開始します 失敗しました スライムへし…退化しました ってな感じでジークさんやっちゃってください
[一言] ここでヒロイン追加ですか?
[一言] 女帝...あんた『三顧の礼』って知ってるか? いきなり変な家臣で攻めずに書簡かなんかでやんわりと友好関係を築けよ。
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