90.迷宮核とボスモンスター
隠しダンジョンの奥の部屋にて。
「みんな! 良かった! 無事で、良かったぁ~……」
セシリーが仲間達に抱きつく。
思ったよりみんな傷ついていなかった。
さすが高ランク冒険者、といったところか。
「あ、あんたがやったのか、これ……?」
Sランク冒険者達が、倒れ伏す大量の魔物達を見渡す。
「し、信じられない……」
「あんな強い魔物たちを、一撃で沈めるなんて……?」
「なにかの間違いなんじゃ……?」
懐疑的なまなざしを俺に向けてくる。
「みんな失礼だろ! この御方がいなかったら我らは全滅してたんだぞ!」
「気にするな。信じられぬのももっともな話だしな」
俺は彼女たちを残し、部屋の奥へと向かう。
広いホールの最奥に台座があって、そこに人のサイズをした巨大結晶が浮いていた。
「これが……【迷宮核】か」
「ねえジーク、なぁにそれ?」
ちーちゃんに俺は説明する。
「迷宮の心臓部のようなもの、って聞いたことがある。魔力を供給したり、ダンジョン内にアイテムを配備したり」
「ふーん……よくわからない代物ね」
だが、よくわからないからこそ、これを調べれば【目標】を達成できるかもしれないのだ。
「ジーク殿、何をなさっているのだ?」
「迷宮核を持って帰ろうって思ってさ」
「も、持って帰る!?」
ぎょっ、とセシリーが驚く。
「む、無茶を言わないでくれ。これは文字通り迷宮の心臓部。取り出すことなど不可能だ」
「なんだ、迷宮突破した冒険者が持ち帰れる物だと思っていたんだが」
「無理無理! これに触れると外に強制的に転移させられるだけ。取り出す方法なんてこの世に存在しないのだ」
ちーちゃんは首をかしげる。
「そもそもジークは、こんなの持ち帰って何したいの?」
「魔力結晶を自然発生させられないかって研究だな」
そもそもなぜ冒険者になったのか。
それは、魔力結晶を自然界で生み出すメカニズムが知りたかったから。
現状、この世界で魔力結晶を作れるのは俺のみ。だが俺が死ねば供給は絶たれる。その結果、人間が魔物体内にある結晶を求めて、攻めてくる可能性は高い。俺は知りたかった。この迷宮核のように、魔力を結晶化した物を、作る方法を。迷宮はギルドが管理してて、冒険者しか入れないしな。(冒険者ギルドはどこの国にも属さない独立機関だ。それに近場だと正体がばれて大騒ぎになるしな)
「そんな凄い計画が進行中だったなんて……さすがジークね!」
「よし、じゃあこれを……」
と、そのときだった。
カッ……! と足元に、巨大な魔法陣が展開する。
「なっ!? なんだこれは!?」
ドドドドッ、と音を立てながら、魔法陣から巨大な何かが現れる。
「ギャアアァオオオオオオオオオ!!」
それは石でできた、巨大なドラゴンだった。
「が、ガーゴイル!? 迷宮主だとぉっ!?」
迷宮核は文字通り、ダンジョンの心臓だ。
心臓を守るためのガーディアンが存在する。
それが迷宮主って、ことだ。
「お、終わった……」「ガーゴイルなんて……勝てっこない」
Sランク冒険者達が、完全に戦意を失っていた。
セシリーもまた、その場にへたり込んで青ざめた顔をしている。
「ちーちゃん、セシリーを連れて下がってて」
「じ、ジーク殿……いったいなにを……?」
ちーちゃんは素早く、セシリーを肩で担ぐと、その場から距離を取る。
「ギャァオオオオオオオオオ!」
ガーゴイルは俺めがけて、拳を振る。
「あ、危ない! 避けてぇえええええええええええええええええ!」
凄まじい衝撃音とともに、周囲のものが吹き飛ぶ。
ちーちゃんは風のバリアを張っていて、Sランク達を守っていた。
「そ、そんなバカな!?」「ガーゴイルの一撃を、片手で受け止めただとぉおお!?」
俺は右手でガーゴイルの攻撃をふせいだ。
そして、理解した。
この迷宮主もまた、命なき魔物であることを。
「神の手【魔殺】」
この手は、命ある物に癒やしを、魔なる物から命を奪う。
ずぉおお……とガーゴイルの手が、腕が、体が……崩壊していく。
そしてチリも残さず、迷宮主は消えた。
―
「「「…………」」」
冒険者達は、目の前で起きたことに驚きすぎて、腰を抜かしていた。
「すごいわジーク! 今日も最強ね!」
ちーちゃんだけはぴょんぴょんと跳びはねていた。
「さて、迷宮核をもらっていくか」
俺はこの手で迷宮核に触れる。
そのまま持ち上げる。
「め、迷宮核を……切除した、だと……?」
「ま、腫瘍の摘出に比べれば楽だったな」
迷宮核は手のひらに収まるサイズへと変化した。
すると、俺たちのいた場所が、ぐにゃりと歪む。
そして気付けば……俺たちは外に放り出されていた。
「め、迷宮が消滅した……のか……?」
「みたいだな」
最初に来た入り口が完全に塞がっていた。
その周囲には、ダンジョン内にいた人たちが転がっていた。(なんかマケーヌもいたが無視した)
「「「じ、ジーク殿!」」」
助けたSランク冒険者達が、俺に殺到する。
「ど、どうした?」
「このたびは助けてくださり、誠にありがとうございました!」
「あなたの力を疑うようなマネをして、申し訳ございません!」
「ジーク殿は我々の命の恩人! そして、最強の冒険者です!」
彼らは涙を流しながら、俺の手を取って、何度も頭を下げる。
「やっぱりさすがジークね! 鼻が高いわっ!」
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