89.隠しダンジョンも余裕で突破
俺は取り残されたSランク冒険者を救出するべく、隠しダンジョンへと訪れていた。
「うそ……そんな……前来たときと違う部屋だ……ここは……」
冒険者セシリーは周囲を見渡して、呆然とつぶやく。
「どうやらこの迷宮内部は常に配置を換えているらしいな」
「そんなこと……どうしてわかるのだ?」
俺は右手を前に出す。
魔法陣が展開し、光魔法で作った、立体的な地図が表示される。
「こ、これは……!?」
「魔法で作った地図だ。さっきこの迷宮に触れて、内部構造を読み取った」
「そんなこと……可能なのか。す、すごい……!」
医療鑑定の応用だ。
手で触れて魔力を流し、波のように周囲に伝わらせ、構造をスキャンする。
体内の腫瘍を見つけるときに使う。
「地図によると通路が常に動いたり、入り口が封鎖されているようだな」
「探知スキルを使ったわ。複数人の生命反応があるのはこの部屋ね」
ちーちゃんが地図の一点を指さす。
最下層に近かった。
「す、すごい! これなら最短ルートがわかる! あ、けど内部構造が変動するなら、地図も意味が……」
「大丈夫だ。【麻痺】」
俺は迷宮の床に手をついてスキルを発動させる。
バシッ……! と電流が走った後、うごめいていた迷宮の壁が、ピタリと止まった。
「よし。行こうか」
「いやいやいや! な、何なのだ今は!?」
「迷宮を対象にスキルを行使しただけだが?」
「そ、そんなことが……可能なのか。聞いたことないぞ……」
セシリーが驚愕する一方で、ちーちゃんは誇らしそうに胸を張る。
「ジークの前では大抵の不可能は意味をなさないのよ。さすがジーク!」
俺たちは地図を頼りに、最短距離を進んでいく。
「! デュ、首無し騎士だ!」
セシリーが正面から現れた首無し騎士に、剣を抜く。
「まあ落ち着け」
「しかし……!」
俺はセシリーの肩を叩き、前に進んでいく。
騎士は俺が近づくと、ガタガタガタ……と震えだした。
「すごい……Aランクモンスターが、完全に怯えている……だと!?」
「安心しろ。別におまえを殺すつもりはない。……ふむ、全部の迷宮モンスターが、命無き魔物ってわけじゃないのか」
俺は神の手を発動させ、始祖の呪いを解く。
首無し騎士は俺の前に膝をつく。
「仲間になりたいそうだ。同行してもいいか?」
「すごいわジーク! こんな強そうな魔物も従えるなんて!」
ぽかーんとしているセシリーの肩を叩き、迷宮を進んでいく。
生き物っぽいモンスターは作り物だったが、こうして無生物っぽいモンスターは命ある魔物だった。
「なんだか、トンデモない数になったわね……」
「そうか?」
ミミックや動く剣など、自分の意思のある魔物は、全部仲間に引き入れていた。
おかげで俺たちの背後には、ぞろぞろとモンスター達がついてきてる状態である。
進んでいったそのときだ。
カチリ……とセシリーの足下で音がした。
「え……きゃあぁああああああ!」
突如セシリーの足下に大穴が開く。
彼女が落ちていく。
「セシリーさん!」
俺は躊躇なく穴の中へ飛び込み、彼女を空中でキャッチ。
壁を蹴って三角飛びの要領で、地上へと戻ってきた。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
セシリーは潤んだ目で俺を見上げる。
俺はよいしょと地面に下ろす。
「…………」
「……ジークはアタシのだから」
ぼそっ、とちーちゃんがセシリーに何事かをつぶやく。
「しかしトラップか厄介だな」
「ああ、私たちもだいぶ苦労させられた。シーフや斥候がいれば楽なのだが」
「問題ないよ」
俺は地面に触れて、【神の手】を発動。
地面が光ると、開いていた大穴が塞がっていく。
「よし」
「え、えっと……ジーク、殿。なにを……?」
「治癒魔法を応用し、迷宮に設置されていた罠を全部撤去した」
壊れた細胞を元の状態に戻す治癒。
それを応用し、迷宮を罠のなかった元の状態に治しただけだ。
「す、すごすぎる……ジーク殿は、いったい何者なのか?」
「まあ、基本は医師をやってるつもりだ」
「医師にそのようなことができるなんて聞いたことがない。すごいのだな、ジーク殿は!」
すごいキラキラとした目を、セシリーが俺に向けてくる。
「……あんた、あとで、屋上こい」
ぼそっとちーちゃんが低い声でセシリーに何かを言っていた。
そんなふうに出てくる敵は仲間にしながら、サクサクと迷宮を進んでいった。
ややあって。
「ここか」
俺の前には行き止まりの壁がある。
「この壁の向こうに人が居るわね」
「そ、そんな……! 道がないのに、どうやって……」
壁をこんこん、とノックする。
「これくらいなら、殴れば壊せそうか」
「ば、馬鹿なことを言わないでくれ。迷宮の壁は極大魔法の直撃を受けても無事なほど、この世で最も固いと言われているのだぞ。それを素手でなんか」
振りかぶった拳を、壁に思い切りたたきつける。
凄まじい衝撃とともに、壁に亀裂が走る。
激しい音を立てながら、壁は粉々になった。
「嘘……でしょ……」
ぺたん、としゃがみ込むセシリー。
そこには複数の冒険者達と、膨大な数の魔物達がいた。
「きゅ、救援か!? しかし2人だけじゃ……」
「【麻痺】【眠り】」
取り囲んでいた大量の魔物達が、その場でいっせい倒れる。
「し、信じられない……あの強力な魔物たちを、一瞬で無力化するなんて……」
「さっすがジーク! 隠しダンジョンも楽勝ね!」
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