81.勇者、子供にすら負ける
魔王ジークが鬼族達を連れて帰ってからしばしたった後。
勇者マケーヌは、今日も今日とて森の中で薬草を拾っていた。
「くそ……なんでこんな地味な仕事を……僕は勇者なんだぞ」
時が経とうと彼は自分が勇者であることを信じて疑わなかった。
何度無謀にモンスターに挑もうが、その都度負けようが、己の実力が劣ってしまったとなどと少しも思っていないのである。
「ん? なんだ……森の中に……学校?」
マケーヌが1人森を歩いていると、木造の建物を発見した。
窓ガラスから中をのぞき見る。
『きょーのおきゅーしょくたのしみだなー』
「おひるやすみにカードゲームしよーぜ!」
『うん、いいよー』
「ど、どうなってんだ、こりゃ……人と魔物が一緒にいるじゃないか」
まだ10にも届かない子供と、モンスターの幼体たちが、仲よさそうに教室で談笑している。
モンスターの声はマケーヌには届いていない。
だが人間の子供達はだれひとりとして、モンスターに対して警戒をしていなかった。
「くく……くかかっ! ちゃーんす!」
マケーヌは剣を手に、窓ガラスを割って入る。
「な、なんだなんだっ?」
「おじさんだれぇ!?」
子供達を無視して、マケーヌは剣を抜く。
「さすがの僕でも、モンスターの子供に負けるわけがない!」
魔物の子供だろうと、倒せば討伐数にプラス1される。
この教室にはたくさんの子供達がいた。
「こりゃあいいじゃないか! 狩り放題だぁ!」
剣を持って、近くに居たスライムの子供に近づく。
「や、やめろー!」
人間の子供が、手を広げてスライムの前に立つ。
「んだよガキ。じゃまだから消えろ」
「ぼくの友達に……手を出させないぞ!」
「友達ぃ~? はっ! バカ言ってるんじゃない。いいかガキ、モンスターは倒すべき悪なんだよ!」
「ちがうもん! ジーク先生は、ひともまものも友達だっていっていたもん!」
子供達が集まって手を広げ、モンスター達を守ろうとする。
「はっ! バカなガキどもが! 勇者の邪魔をしたんだから、ケガしても仕方ないよなぁ!」
マケーヌは子供ごと、剣で切り伏せようとした。
「おらぁ!」
「てやぁ!」
子供のひとりが、拳を握って、マケーヌのみぞおちにたたき込む。
「げほぉあ!」
がくん、とマケーヌはその場に膝をつく。
「な、なんだぁ……このパワーは?」
「みんな! 友達を守るんだ!」
「「「うん!」」」
子供達が手を前に突き出して言う。
「「「【火炎連弾】!」」」
どどどっ! と手から無数の火の玉が放出される。
「うげぇええええええええ!」
全身に炎のつぶてをくらい、マケーヌは教室の外へと吹っ飛ぶ。
「ど、どうなってる……! なんであんなガキどもが、中級魔法を使えるんだよぉ! しかも無詠唱だと!? 高位の冒険者だってできないぞ!」
子供のあまりの強さに、マケーヌは驚愕する。
「ジーク先生のおかげだ!」「友達を守れるようにって、おしえてくれたんだ!」
「ジーク……ジークジークうるせえええんだよおぉ!」
ダッ……! とマケーヌが立ち上がって、子供達に斬りかかろうとする。
その場に居た子供も、魔物も、手を合わせて魔法を使う。
「【颶風真空刃】!」
その瞬間、極大の風が巻き起こる。
「なんだぁってぇえええええええ!?」
突風にまかれて、マケーヌは空中へと吹っ飛ぶ。
ずしゃり、と森の外へと落ちる。
「きょ、極大魔法……だとぉ……!」
それは魔道の極致。
才能のある一握りの魔法使いが、生涯をかけて、ようやく放てるようになる極大魔法。
それを、人と魔物が力を合わせていたとは言え、あんな子供が使って見せたのだ。
無論威力は数段落ちるが、それでも……。
「ば、化け物だぁあああああああ!」
マケーヌは泣きわめきながら、街の冒険者ギルドへと帰る。
「どうかしましたか、マケーヌ様?」
受付嬢にくってかかる。
「い、今すぐ森へ大部隊を送るべきだ!」
「それはどうして?」
「聞いて驚け! 子供だ! 人間と魔物の子供が学校に通っていた! しかも極大魔法まで使っていた! あれは秘密裏に生物兵器を作り上げるための教育機関に違いない!」
ぽかーん……と冒険者達が目を丸くする。
ややあって、ぷっ……と笑い出した。
「ぷはははっ! そんなのあるわけないだろぉ?」
「夢でも見ていたんだじゃあないかぁ?」
冒険者達に馬鹿にされ、顔を真っ赤にしながらマケーヌが言う。
「本当なんだっ! その証拠に極大魔法を食らってよぉ!!」
「はいはい。大型モンスターの子供にでも負けた言い訳なんだろう?」
「なっ! ち、ちがう! 本当にガキどもがだなぁ!」
「うっわ、必死すぎ。哀れだねぇ」
うぐぐっ! とマケーヌは悔しそうに歯がみする。
子供に負けたことも、誰からも信用されないことも、彼の自尊心を傷つけたのだ。
「なんなんだよ、あの学校はよぉ……」
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