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08.使い魔強化



「獣人国ってこっからどれくらいかかるの?」


 ハーピィ治療後の、草原にて。

 従者のミントに尋ねる。


「馬車で10日です。地竜の足なら5日で着くでしょうか」

「なるほど、じゃあちーちゃんに二人乗りして行くか」


 地竜のちーちゃんの背中に乗っている荷物をどけて、ふたり座れるようにする。


『ぴゅいぴゅいっ、じーく、じーくー♡』


 ハーピィが、俺の体に抱き着いている。

 手足は鳥のそれだが、それ以外のパーツは、比類なき美少女だった。


 青い髪に幼い顔つき。

 それに相反する成熟した、豊満なボディ。


『じーく好きっ。好き好き好き~♡』

「なんだか好かれちまったなぁ」


 魔獣を手なずけるには年単位の時間がかかったはず。

 それが、ものの数分でこの好かれっぷり。


「進化した力、ねえ……」


 ミント曰く、神獣と契約した扱いになっているらしく、パワーアップしたとのこと。


 魔獣を手なずけたり、声が聞こえるようになったのも、進化した俺の力ってことか。


 獣ノ医師でそんなことできた人がいたなんて、前代未聞だよ。


「まあ、なったもんはしかたねえ。よし、準備完了。さ、ミント乗ってくれ」


 俺はちーちゃんに乗っかる。

 ハーピィは飛んでついてくるらしい。


「はい、失礼いたします」


 俺の後ろに彼女がのっかり、腰に手を回す。


『むむっ! むむむむー!』

「ミント、何か言ったか?」

「いえ、別に」


 気のせいか。

 俺は気を取り直して、ちーちゃんの手綱を握る。


「じゃあ出発するか。ミント、振り落とされないように、もっとしっかり捕まってな」


「わかりました。ハク様、落ちないよう魔法の紐で固定しますので、こちらに」


 ミントが作業を終えて、むぎゅーっと抱き着いてくる。

 け、結構胸があるな……。


「ちーちゃん、よろしく」


 だが地竜は動こうとしなかった。


「どうした?」

『ジークの……』


「え?」

『ジークの、ばかー!』


 だんっ! とちーちゃんが地面を強くける。

 ぐんっ! と体が引っ張られる。


『わー! すっごーい! おにいちゃんのちりゅー、めっちゃはやーい!』


 ちーちゃんは、普段の何十倍もの速さで走っていた。


「さすがはジーク様が手懐けた地竜、見事な走力です」


「いやいやあんな速くなかったよ!?」

「進化したあなた様のお力なのではないでしょうか?」


 魔獣を手懐ける力が強化していたのだから、魔獣自体の力も強化されたってことかっ?


『ジークのばかばかっ。アタシというものがありながら、他の女の子にデレデレしちゃって! きー!』


 めっちゃ饒舌だった。

 そ、そういえば彼女も魔獣だったな。


 高ぶった感情を発散するかの如く、彼女は大地を恐ろしい速さで走っている。


「ご、ごめんな。別にデレデレしてないよ」

『ふーんだ! うそばーっか! 後ろに乗せてる獣人女のおっぱいに見とれてたくせにっ! 哺乳類じゃないとダメなの!?』


「いやそんなことないってば……」


 ちーちゃんをなだめながら、俺は実に新鮮な気持ちになった。

 初めて彼女とこうして言葉を交わすはずなのに、ずっと前からの親友と話している気がする。


 長い説得の末に、俺はこういった。


「ちーちゃんが一番だよ」


 ぴたっ、と地竜が足を止める。


 くるっ、とちーちゃんが長首を動かして、俺の頬をベロっとなめる。


『えへへっ、アタシもジークが大大だぁいすきっ♡』


 ベロベロと彼女がなめてくる。

 良かった機嫌を直してくれたみたい。


「さすがですジーク様。ご覧ください。もう獣人国へ到着いたしましたっ」


 気づくと俺たちは、大森林のなかにいた。

 門番のような兵士の獣人が立ってる。


「え? う、うそだろ……? 国を出発して数時間しかたってないぞ?」

「ジーク様のお力で地竜様の走力を強化なさったのです」


 数日かかる距離を数時間で走れるようになるなんて……。


『おにーちゃんすっごーい!』

『当たり前よっ、ジークは昔からすごいんだから!』

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★1巻11/15発売★



https://26847.mitemin.net/i778881/
― 新着の感想 ―
[一言] ツンデレ吐くほど嫌いなんですが、地竜が言ってると思うと許せるから不思議。
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