77.国王、死者の世界で先祖達から非難される
ジークによって、悪魔王と化した国王は打ち倒された。
『ここは……一体どこなのだ……?』
見渡す限りの荒野が広がっている。
足下には白い砂。
仰ぎ見ると、虹色がかった不思議な空。
『わしは……どうなった。死んだのか?』
【その通り】
『だ、誰だ!?』
どこからか笑い声が聞こえてきた。
男のものとも、女のものとも思えない、不思議な声。
【おまえには私を受肉させた恩があるから。特別に教えてあげよう。ここは現世で罪を犯したものが送られる、死後の世界】
『死後の世界……だと……?』
【おまえはこれから、現世での罪に応じた罰が与えられる。特に重い罰が長く長く与えられることだろう】
さぁ……と国王は青ざめた顔で叫ぶ。
『こ、ここから出せ!』
声の主はしかし応じない。
【さらば宿主よ。なに案ずるな、おまえのカタキはこの私、悪魔王メフィスト・フェレスが取ってやる】
『カタキなどいらん! 出せ! ここから出せぇえええええええ!』
だが声はフェードアウトしていき、聞こえなくなってしまった。
『……罪、だと。ふざけるな!』
ギリギリと歯ぎしりし、国王は憤怒の表情で言う。
『国を良き方向へと導いてきた、わしのどこに罪があるというのだ!』
と、そのときだった。
『【グォーダ】。グォーダよ』
いずこより、聞き覚えのある声がした。
懐かしい声に、国王は戸惑う。
『だ、だれだ……わしの名前を呼ぶ輩は……?』
『余を忘れたとは言わせぬぞ?』
国王が振り返った先に居たのは……死んだはずの父だった。
『ち、父上ぇえええええ!』
死別したはずの父との再会に、国王は涙を流しながら喜ぶ。
『父上! 父上ぇ!』
父に抱きつこうとしたそのときだ。
父親は憤怒の表情を浮かべると、握りこぶしを作り、国王を殴った。
『ち、父上……な、なにを……?』
『この、愚かものがぁあああああ!』
顔を真っ赤にして、父親が叫ぶ。
その目には際限なき怒りの炎が浮かんでいる。
相手が我が子だというのに、まるで仇敵のようににらんでいた。
『な、何をなさるのですかっ?』
『うるさい馬鹿者が! 貴様、よくも余たちが築き上げてきた王国を、滅ぼしたなぁああああああ!』
彼の父は先代の国王。
グォーダほどの愚王っぷりではなかったものの、国を治めて来た男。
『見ておったぞ! 歴史ある我らが祖国を、貴様の愚かな行いで潰しよって! このクズ! 間抜け!』
げしげし、と国王は父親から蹴り飛ばされる。
『ご、ごめんなさい……父上、ごめんなさい……!』
『許されるものか! 我々は貴様のあまりの愚かな振る舞いに心底あきれ果てておる!』
『我々……?』
父の背後にぼんやりと現れたのは、祖父、曾祖父など。
歴代国王達だった。
『カスが。こんなのが自分の末裔であることが、恥ずかしくてしょうがない!』
『我らが苦労して築いてきた物を、バカな理由で壊しよって! この痴れ者がぁ!』
歴代の国王達から罵倒され、国王は泣きたくなった。
尊敬している父や祖先達からの糾弾は、彼の精神をえぐる。
『わ、わしは悪くない! すべてはあのジークが悪いのだ! わしは悪くない! 悪くないぃ!』
国王は耳を塞いで、その場にしゃがみ込む。
だが実体のないため、耳を塞いでも、その声は聞こえてくる。
先祖達の怨嗟の声が、延々と聞こえてくる。
誰もが皆自分を非難する。
自分の無能をあげつらう。
『ほんと、おまえを作ったのは間違いだった……』
『ち、父上ぇー……』
グォーダ国王は、亡き父を尊敬していた。
母を早くに失い、男手1つで育ててくれた。
父のような立派な国王になることを夢見ていたのに……。
『貴様は王になるべきではなかった。貴様に余の血が流れてると考えると、おぞましくて仕方が無い』
『ああ……あぁああ……あぁああああああああああああああ!!!!!』
国王はうずくまって首を振る。
『これは悪夢だ! さっさと目覚めろ! 目覚めてくれぇえええええ!』
だが、彼が悪夢から覚めることはない。
父を含めた歴代国王から、罵倒され、非難され続ける。
だがこんなもので、彼の犯した罪が濯がれるわけがない。
彼への罰は、始まったばかりだった。
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